いつ犯罪に巻きこまれるかわからない。一歩先ゆく明石市の犯罪被害者支援条例を調べてみた

犯罪が被害者に与える苦しみは、ずっと続く…。
世界を見渡してみれば、治安の良い日本に暮らしていることは、大変幸せなことに感じます。しかし、治安の良い日本にあっても、事件・事故が後を絶ちません。
事件に巻き込まれて、重傷で寝たきりになってしまっても、長期入院できず、病気でないので、介護保険の適用はありません。住宅ローンの返済が済んでいなくても、引っ越しを余儀なくされる場合もあるでしょう。
マスコミからは容赦ない取材攻勢をかけられ、周囲から心無い噂をばらまかれることもあります。事件が原因で仕事を失ってしまうこともあるでしょう。犯罪の内容は千差万別でも、ひとたび巻き込まれてしまえば、苦しみはずっと続きます。

一人で悩み続けなくても良いように
被害者の方は、被害直後の混乱した時期から、様々な困難に直面します。
そのため、各都道府県には、「犯罪被害者支援センター」があり、被害者の方の相談や手続きの手伝いを行っています。
警察や検察庁の他、医療機関・弁護士会・法テラスなどが連携し、相談に乗ってくれます。各自治体では、総合的な窓口の設置や、被害者支援条例の設定、見舞金制度などを設けていますが、十分とはいえません。犯罪被害に遭った場合には、精神的にも、物理的にも、経済的にもいっそうのサポートが必要です。

犯罪被害者をだれ一人見捨てない
自治体の中で、特に犯罪被害者支援に先進的なのは兵庫県明石市です。
明石市では、殺人事件などの加害者が裁判などで確定した損害賠償金を被害者に支払わない場合、300万円を上限に市が立替をする「市犯罪被害者支援条例」が制定されています。
裁判で賠償額が確定しても、加害者側の財力の問題などから支払いが滞ることがありますが、この条例により被害者が賠償金の請求にまで苦しむことなく生活再建に取り組むことができます。また、転居費用の補助や家事や介護、保育への支援など、犯罪被害者遺族などの要望に応えたきめ細かな支援策を実施しています。

突然の犯罪被害に遭うのは本当につらく悲しいことで、心も体もすぐに対応できません。
しかし誰もが、犯罪に巻き込まれてしまうかもしれません。被害にあった方が、一刻も早く、安心した生活を取り戻せるように、きめ細やかに支援を続けなければなりません。埼玉県内の自治体でも、明石市のようなサポートが広がることを期待します。