「野球やサッカーがもっとうまくなりたい」「大会で優勝を目指す」「吹奏楽にうちこみたい」
そんな、スポーツや文化活動に情熱をかたむけ、夢を目指す小・中学生の想いを受け止め、陰で支える存在が・・・小・中学校の部活動で顧問の方々です。しかし、この部活動が教員の大きな負担となりつつあります。
2017年4月、文部科学省は約10年ぶりに、小・中学校教員の勤務時間について調査を行ったことを報告しました。
全国の教員約2万人を対象に調査した結果、小・中学校共に前回調査時より勤務時間は増加し、特に中学校については、「部活動」の時間が増えたことで、土日の勤務時間が大幅に増加していることが明らかになりました。
上のグラフは、文科省が報告した、10年前の調査時と今回の「土日における教員1日当たりの学内勤務時間」を比較したものです。
小・中学校共に、10年前より大幅に増加していることが一目瞭然です。
特に、中学校教諭・講師については、「週休日」という勤務日に指定された日ではない日の出勤も増えており、休めていない状況がうかがえます。
また、上のグラフは、今回調査における中学校教員の「部活動状況別の1日当たりの勤務時間」を示したものです。
部活動の顧問をしている方と、顧問を受け持ち、かつ週7日活動をしている部活の顧問である方では、平日1時間5分、土日4時間24分も、勤務時間に差があります。
また、部活動の内容によっても差があり、運動部の顧問の方が勤務時間が長いことがわかります。
さらに、上のグラフは、小・中学校教員の「1週間の学内総勤務時間」の割合を示したものです。
1週間当たりの正規の勤務時間は「38時間45分」であるのに対し、週60時間以上の勤務、厚労省が「過労死ライン」としている月80時間以上の残業をしている方の割合が、実に小学校で約3割、中学校で約6割にものぼっています。
文科省はこの結果を「深刻な結果」として、早急な業務改善に取り組む必要があるとしています。
埼玉県教育委員会では、中学校の部活動時間の増加が教員の負担になっていることを受け、昨年3月に、少なくとも土曜日か日曜日のどちらかは「休養日」として休めるよう、各中学校に対し通知を出していますが、県内148校で依然として休養日が決められていません。
文科省では「中学校の休養日は週当たり2日が望ましい」としているため、週1日の休養でも不十分ですが、まずは各学校で休養日が設定され、現状が少しでも良い方向に改善されることを願うばかりです。
戸田市にある笹目中学校では、18ある部活動のうち、運動部には原則2名の顧問を置くことで、教員の長時間労働の負担を減らす取り組みを行っています。
特に野球部などでは、週の活動時間が10時間を超えることもあり、週末の試合も多いため、2名交代で出勤することで、負担が分散され、部活動にも授業の準備にも時間が割けて良い環境となっているそうです。
先に図で示した通り、顧問を受け持つ方とそうでない方では、勤務時間に大きな差があります。
「休養日設定を!」と求めても、運動部の顧問を受け持つ教員が1名しかいないと、休んだ日は誰が受け持つのかなどの問題から、休みたくても休めず、現状を変えるのは困難です。
一人の教員にだけ負担させるような状況から、笹目中学校の例を参考に、学校全体で変えていく取り組みを推進し、熱意ある優秀な教員の方々を、「過労」で失わない社会にしていきたいものですね。