知っておきたい核兵器の現実
原子爆弾の犠牲になったヒバクシャに思いを馳せ、核兵器のことを学び考えるのは、世界唯一の戦争被爆国である日本に暮らす私たちにとって、忘れてはならない夏の追悼行事となっております。
広島市に原子爆弾が投下されてから、今年で72年。その間の開発競争により、広島に投下された原子爆弾の破壊力15キロトンから、1970年代に旧ソビエト連邦が開発した5万キロトンまで進化しました。1945年には2発だった核爆弾は、1986年には64,099発まで増え、冷戦の終結とともに2014年には9,920発まで減少したものの、保有国は力を誇示するため保有し続けています。広島では原爆投下後、1945年の年末までに、約14万人が亡くなったことを思うと、史上最大の核兵器の威力は強力すぎて現実の戦争では使用できないレベルです。
「核兵器禁止条約」ってなに?
7月7日、国連会議で歴史的な核兵器禁止条約が122カ国の賛成で採択されました。核保有5か国以外への核拡散を抑止する現在の核拡散防止条約から、更に一歩を踏み出し、全ての締約国に核兵器の完全な廃絶を求めた内容になっています。
また、広島・長崎の被爆者や核実験の被害者の希望により「ヒバクシャ」という言葉が使われ、核爆発の被害者に対する医療や経済支援・環境の回復にも言及されています。メディアではそのポイントは以下のようにまとめられています。
1、広島、長崎の被爆者や核実験の被害者を含む「ヒバクシャ」の苦しみに心寄せる
2、核兵器使用がもたらす人的被害を深く懸念し、どのような状況下でも核兵器が二度と使用されないようすべての努力をすることを目的とする
3、核兵器の「開発、実験、生産、保有、使用、使用の威嚇など」を禁止する
4、ヒバクシャに対する医療、経済支援、核爆発の被害を受けた土地の環境回復を盛り込む
核兵器の根絶のために是非締結されてほしい条約ではありますが、米英仏露など核兵器保有国や、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や約40カ国は禁止条約に反対し、交渉会議への参加を拒否しています。世界情勢が不穏な動きを見せる中、米国の「核の傘」の下にある日本も、残念ながら交渉には参加していません。
72年前の悲劇を再び起こさないために
悲劇を二度と繰り返さないために、日本と世界の反核平和運動の願いを正面から受け止めた核兵器禁止条約が採択されたことは、画期的な意義のあることです。
一報でアメリカやイギリスなど約40か国がこの条約の制定に向けた交渉開始の決議に反対しています。大変な困難が予想されますが、唯一の被爆国の国民として、歴史と現状を正しく学び、核廃絶に向けた署名など出来ることから行っていくことが大切です。