本格的な夏がやってきました。
子供達だけでなく、普段は中々休みの取れない大人にとっても、夏休みは待ち遠しいもの。普段はできないレジャーを楽しもうという人も多いのではないでしょうか。
昨年から始まった国民の祝日「山の日」も手伝って、登山・ハイキングの人気が高まっています。都道府県別の「登山・ハイキング」の行動者率では、埼玉県は全国第3位の11.3%と、高い人気が伺えます。関東では登山・ハイキングを行った人の割合が、20 歳代から30 歳で 10%を超えており,50歳代以降や、75歳を超えても続けるなど、世代や性別を問わず多くの人が登山・ハイキングを楽しんでいます。
年齢を重ねても長く続けられる登山・ハイキングですが、その人気が高まる一方で、遭難事故の件数も増えています。平成19年には年間1,484件だった遭難発生件数が、平成28年にはおよそ1.7倍の2,495件に増加しています。しかもその全遭難者のうち、60歳以上が50.6%を占めています。
出典:警察庁『平成28年中における山岳遭難の概況』
埼玉県議会では、自民党県議団が提出した、防災ヘリに関する条例の改正案が3月に可決され、来年1月から施行されようとしています。県内の山で遭難し、県の防災ヘリに救助された登山者などから、燃料実費で1時間5万円程度の「手数料」を徴収するという内容です。「有料化で登山者がより一層周到な準備をし、慎重な行動をとることが期待できる」ものとして成立した法案でしたが、果たして本当にそれで遭難者を減らせるのでしょうか?
2,000m、3,000m級の山岳地帯を抱える長野県や富山県などと異なり、埼玉県での山岳遭難は「道迷い」が非常に多く、遭難を減らすためにまず必要なのは、案内板や標識の設置、山道の整備です。
また、現実的な遭難防止策として、
などが挙げられます。
防災ヘリの有償化されても、登山者が慎重な行動をとることには必ずしもつながりません。
遭難の場所によっては、埼玉県からの通報でも他県で受信することもあります。
どこで自己を起こし、どちらで救助したかによって有償か無償かが変わるようでは、救助の現場は混乱してしまいます。また、登山客の減少で重要な観光資源に悪影響を与えかねません。
行政側は、近隣都県や関係者との連携強化、登山道の整備、気象や山の情報提供、安全教育などの環境整備によって、遭難者を本質的に減らしていく努力が必要です。