現在、子供の6人に1人が貧困状況にあるといわれています。貧困の連鎖を断ち切るため、「家庭の状況にかかわらず、全ての意志ある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会をつくる」として、2010年に高校授業料無償化制度が始まりました。
2014年の制度改正を経て、現在の埼玉県の低所得家庭への高校就学支援はどのようになっているのでしょうか。
<国公立高校に進学した場合>
・高等学校等就学支援金制度 … 授業料と同額を補助(年収目安約910万円の家庭まで)
・入学料及び授業料の減免制度 … 保護者等の死亡などにより家計が急変した場合及び住民税が非課税世帯には入学料及び授業料と同額を補助
・国公立高等学校等奨学のための給付金制度 … 教科書や学用品等の教育費に充てるため、生活保護世帯は年32,300円、市民税非課税世帯は最大129,700円補助
<私立高校に進学した場合>
・高等学校等就学支援金制度 … 授業料として年間最大297,000円補助(年収目安約910万円の家庭まで)
・父母負担軽減事業補助 … 授業料として年間最大131,200円補助(年収目安609万円まで)
・施設費等として年間最大200,000円(年収目安500万円まで)
・入学金として最大100,000円補助(年収目安609万円まで)
私立高等学校等奨学のための給付金制度…教科書や学用品等の教育費に充てるため、生活保護世帯は年32,300円、市民税非課税世帯は最大129,700円補助
2014年の制度改正を受け、公立私立ともに補助が受けられるようになりました。
学習支援事業(アスポート事業)により、埼玉県の生活保護世帯の高校進学率は上昇し、平成21年に86.9%だったものが、平成27年には98.3%にまで上昇しています。しかし生活困窮とそれに伴う学力不振から、生活保護世帯の高校中退率は5.7%と、まだまだ一般家庭の中退率2.95%よりも高い状況にあります。県では、奨学のための給付金として、学用品などの授業料以外の教育費の補助も行っていますが、まだまだ少額です。高校進学後は、アルバイト等で生活費を確保する必要があります。生活苦からアルバイト漬けになり、高校生活がおろそかになることのないよう、さらなる経済的な支援の拡充が必要です。
埼玉県高等学校等奨学金制度
埼玉県では、授業料以外の教育費等に充てるため、高校生のための奨学金があります。
経済的に就学が困難でも、世帯年収830万円以下の家庭であれば、公立の場合毎月最大25,000円・私立の場合毎月最大40,000円、そのほか入学一時金として最大250,000円のの奨学金を無利子で借りられます。ですがこの奨学金は貸与型となっており、高等学校等卒業後4年6か月経過後から毎月返済しなければなりません。
真の「教育を受ける権利を保障するために」
高校卒業後の給与での返済は重くのしかかります。高校卒業後、大学に進学したくても、大学でも奨学金を借りた場合にはダブルで返済をしなければなりません。奨学金返済のために自己破産するケースもあり、貸与型の奨学金制度のままでは貧困の連鎖を断ち切ることができません。
平成27年には公立、私立合わせて5,644人が奨学金を利用しており年々利用者が増えています。憲法で保障された教育を受ける権利を保障するために、高校からの給付型の奨学金制度の設立が必要です。
低所得家庭への高校就学支援の現在