ダムよりも堤防補強こそ急務 利根川堤防を視察
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利根川上流河川事務所(左)から説明を受ける村岡県議、塩川衆院議員ら |
利根川上流に計画されている八ッ場ダム(群馬県長野原町)をめぐって、国や関係都県はダム建設推進の理由の一つに、利根川下流の堤防で発生する漏水(水もれ)の問題をあげています。
「八ッ場ダムを考える1都5県議の会」は4月22日、漏水の発生した場所をはじめ利根川堤防を調査する現地見学会と学習会を開きました。利根川流域市民委員会との共催です。日本共産党埼玉県議団からは村岡正嗣県議が参加しました。現地見学会には日本共産党の塩川鉄也衆院議員も参加しました。
「堤防強化」に2700億円 付近の家屋立ち退き対象戸数は八ッ場ダム以上
見学したのは加須市内の3カ所で、いずれも利根川の右岸(下流に向かって右側)側です。現地では国交省利根川上流河川事務所の担当者から説明を受けました。
2001年9月の台風の際に漏水が起こった場所(加須市大越、河口から139キロ地点)では、既存堤防に盛り土をし、堤防の幅を広げる工事が始まっていました(「首都圏氾濫区域堤防強化対策事業」)。
堤防下にあった家屋は立ち退きを求められ、すでに取り壊されて土台だけになった家屋がいくつもありました。立ち退き対象は1226戸にのぼり、八ッ場ダム建設による立ち退き戸数を大幅に上回ります。事業対象は延長約70キロ、総事業費は約2700億円という巨大プロジェクトです。
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堤防用地として立ち退き、取り壊された家屋。堤防にそっていくつもありました |
続いて、堤防が決壊したら被害が最大になると想定される地点(加須市弥兵衛、河口から136キロ地点)を見学しました。ここは堤防がしっかりしていて、現実に堤防決壊の恐れがある場所ではないとのことでした。
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防災ステーションにある石碑 |
「点」でしか整備されていないスーパー堤防
最後に訪れたのが、1947年の「カスリン台風」の時に堤防が決壊した地点(加須市新川通、河口から134キロ地点)です。現在は「スーパー堤防」が完成し、河川防災ステーションが置かれています。
スーパー堤防は1メートル整備するのに約5000万円かかると言われるほどお金がかかるため、現実には「点」でしか整備されていません。
安価で効果的な堤防強化策の検討・導入が必要
午後の学習会では、利根川流域市民委員会から利根川の堤防に関する問題点が指摘されました。
特に強調されたのは、台風などで利根川の水位が上昇すると堤防が壊れかねない箇所が6割を超えており、堤防強化こそ急いで進めるべきだということでした。八ッ場ダムで洪水時の流量を減らせる効果は限られており、仮に八ッ場ダムをつくっても堤防がもろければ下流域での被害を結局防げないというのです。
一方、現在進められている「スーパー堤防」や「首都圏氾濫区域堤防強化対策事業」では多額の予算が必要なうえ、ダム建設以上の立ち退きが発生するなどの問題点を指摘。外国や国内の一部で使われている工法の事例を示しながら、安価で治水効果が出る堤防強化策の検討・導入が必要だと強調しました。
また、昔の川の跡など水を通しやすい場所は調べれば分かることであり、そういう危険な場所を集中的に効果的な対策をとるべきであり、十分な調査なしに一律に堤防を強化するやり方は「虫歯1本治療するのに総入れ歯にするようなものだ」と批判しました。
水害対策について改めて考える機会となりました。
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