埼玉県議会9月定例会の最終日の15日、柳下礼子県議が知事提出の議案に対する反対討論を行いました。
以下討論の全文
日本共産党の柳下礼子です。私は日本共産党埼玉県議団を代表して知事提出議案第91号議案、第93号議案乃至(ないし)第96号議案、及び第98号議案に対する反対討論を行います。
ハローワーク特区推進事業は職業紹介事業の民間委託がねらい
はじめに第91号議案「平成24年度埼玉県一般会計補正予算」についてです。党県議団は環境保全推進費や農業関連予算、警察関連予算等に反対するものではありませんがハローワーク特区推進事業費に反対いたします。
本事業は、ハローワーク浦和が本県に移管されているのと実質的に同じ状況をつくる「ハローワーク特区」を、武蔵浦和ラムザタワーに開設しようとするものです。この事業にはまず特区を皮切りに、ハローワークの地方移管後、さらに民間委託へと進む狙いがあると指摘します。現在ハローワーク職員は、職業紹介事業と一体に、企業への労働条件改善指導を行っていますが、これを民間に任せることはできません。さらに民間委託によって労働行政が保有する高度で膨大な個人情報に民間事業者がアクセスする可能性が生まれることは重大です。よって職業紹介事業を、営利目的の民間人材ビジネスへ委ねることに道を開く、ハローワーク特区推進事業は容認できません。
今早急に求められていることは職業紹介事業の権限の所在の議論ではなく、県民に安定した雇用を保障するために、労働行政間の連携をより拡充させることであると強く申し上げます。
平和資料館の指定管理導入と奥武蔵あじさい館
続いて第93号議案埼玉県平和資料館条例の一部を改正する条例は、平和資料館の管理の一部に指定管理者制度を導入するための条例改定です。平和資料館の目的は「県民に戦争の悲惨さ及び平和の尊さを伝えることにより、県民の平和に対する意識の高揚を図り、もって平和な社会の発展に寄与する」という極めて公益的なものです。よって県が直営として責任をもって運営すべきだと考えるからです。
平和資料館には、ご案内のように毎年戦争を知らない子どもたちがたくさん訪れます。暗い防空壕の中に入り警戒警報を体験し、検閲で黒く塗られた葉書も目で見て、最後の感想文では「戦争は2度と起こしてはならないと思いました」と平和への決意を書いてくれます。このような教育啓発活動は、日本の平和な未来を保障する公益的な性格をもっています。来館者数の減少が問題になっていますが、この改善は県として知事部局と教育部局が深く連携を図り知恵を絞るべきであり、民間事業者に委ねるべきではありません。
保管されている日記や写真などの貴重な資料は、いずれも個人情報であり公務員による公的な管理が行われるという信頼をもとに県民より託(たく)されたものばかりです。民間事業者委託は県民のこの信頼に背(そむ)くものです。
また、県は県民の意見を聞く場である平和資料館運営協議会に一切諮らずに、本条例案を議会に提出しました。これまで館の運営に協力してこられた県民の意見を無視するやり方は問題です。よって同条例案に反対するものです。
続いて、第94号議案埼玉県奥武蔵あじさい館条例を廃止する条例ですが、以下反対理由について述べます。第1にあじさい館は条例第1条にあるとおり高齢者、障害者、母子家庭に対する福祉的施設であって、公的に運営すべきと考えるからです。これらの方たちのために宿泊料減免も行ってきましたが、本条例によってその制度は廃止されます。高齢者母子・障害者など利用者にたいへん喜ばれてきた施設を、周辺にも低料金の宿泊施設ができたなどの理由で民間に譲渡することは許されません。
反対理由の第2は設立から一貫して県に協力してきた地元飯能市民をはじめ利用者が廃止に納得していないからです。飯能市はあじさい館建設の際には8億円以上の財政的負担も含めて積極的に協力しており、県の運営存続を繰り返し要望してきました。現在あじさい館では59人の飯能市民が雇用されていますが、地元説明会で県はこの人たちの継続雇用を明言しませんでした。現在従業員のみなさんは大変な不安を与えています。これでは地元の納得は得られません。
奥武蔵あじさい館は県民と市民の多額の税金を投入して1996年に建設されました。それを16年後に民間に譲渡するやり方にも大変な問題があると指摘いたします。
次に第95号議案「医療法施行条例」と第96号議案「埼玉県専用水道に係る水道技術管理者の資格を定める条例」は関連しておりますので一括して討論いたします。両議案は昨年成立した地域主権改革一括法により、これまで国の政省令で定められてきた基準を条例で定めるものです。憲法25条には国民には健康で文化的な最低限度の生活が保障されるとあり、その責任は国にあります。党県議団は、病院等の設置基準や水道技術管理者の資格基準など、国民の医療・衛生に係わる基準等は、国によってナショナルミニマムが保障されるべきと考えます。地域主権改革は地方の自由度拡大の名の下にこれを否定するものであり、認めるわけにはいきません。従って両条例案には反対するものです。
特別支援学校の小中学部を4階以上に
第98号議案「埼玉県建築基準法施行条例の一部を改正する条例」ですが、特別支援学校の小・中学部の教室について、現在は認められていない4階以上への設置を許すものです。 本来子どもの安全を真剣に考慮するなら、障害のあるなしにかかわらず小中学校の校舎はより低層で建築すべきです。ましてやこの条例改定は、避難のより困難な障害児の特別支援学校を、高層階に設置することに道を開くものであり、絶対に認められません。
以上で反対討論を終わります。ご静聴ありがとうございました。
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