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患者家族の手紙を紹介し知事をただす柳下県議 |
日本共産党の柳下礼子県議は16日の県議会予算特別委員会締めくくり総括質疑で、引き続き県立小児医療センターの移転問題をとりあげました。
柳下県議の質疑と上田清司知事の答弁(概要)を紹介します。
(日本共産党埼玉県議団の責任でまとめたものであり、公式記録ではありません)
新都心は難病の子どもたちにふさわしい療育環境とは思えない
柳下議員 日本共産党の柳下礼子です。質問させていただきます。
県立小児医療センターについてお聞きします。
昨日、この県庁に、患者家族の会と周辺自治体の「存続を求める会」の皆さんが署名提出に来られましたが、持ち寄った署名は3万8400筆、前回分と合わせて5万3402人となりました。移転先である、さいたま新都心という場所は決して静かな環境とは言えません。私は本日、患者家族の方のお手紙を紹介します。
「県立小児医療センターの移転は反対です。
私の甥は20年前に、小学校6年の時脳腫瘍になり余命6ヶ月といわれました。手術はしたものの脳幹に腫瘍があり、手をつけることができませんでした。あの当時は県立でありながらMRIがなくがんセンターまで子どもたちは検査に行ったのです。甥は白血球が下がっていたので検査することができませんでした。
個人病院でもMRIがあるのに、県立でMRIがないという現実にびっくりして、姉夫婦と署名運動をした結果、数万人の署名をいただき県に提出し、MRIの設置をすることになりました。病院からは感謝の言葉をいただきましたが、そのときには甥はもういませんでした。
あの病院の、余命を感じながら静かに笑顔を見せる子どもたち、聞いたこともない病気の子どもたちが今でも浮かんできます。静かなところで大切な時間を過ごす権利が子どもたちにはあると思います。
新都心はアリーナや商業施設で若者や家族が楽しく過ごす場所です。新都心に移転しようという動きをする人たちは、あの病院の中で苦しんでいる子どもたちの姿をみてほしい。
重症の子どもたちは静かに過ごしたいのです。緑の見える安らぐ場所で。苦しみに耐えている子どもたちをビルの中へなんてとんでもない。静かに大切な時間を過ごしてほしいと心から願っています」。
こういったお手紙でした。
そこで伺います。このような小児病棟の子どもたちは長期の病に立ち向かい、大変なストレスを抱えながら過ごしています。新都心という地域は難病の子どもたちにとってふさわしい療育環境とは思えないのですが、いかがでしょうか。知事よりお答えください。
上田知事 今柳下議員は「難病」と言われましたが、一般的に言うと重度だという言い方でさせてもらってよろしいでしょうか。(柳下議員「はい」)
小児医療センターの開院当初は軽症患者が多いことから、建物の外でも散策をしたり楽しんでいただけたことが多かったのですが、しかし現在では重症の、重度の患者が多くなったことから、感染の恐れなどを考慮して建物から出ることが認められておらないのですね。もともと高度専門医療機関であります小児医療センターでは重症の患者が多いため、治療や療養そのものは室内でおこなっております。たとえば免疫力が低下している小児患者への感染を防止するために、入院患者のきょうだいですらも面会を禁止したりする場合もあります。また、先天性心疾患の手術で人工呼吸器をつけた患者や小児白血病の患者などは、厳密な環境管理をした室内での療養を余儀なくされています。さらに、入院患者が隣接する特別支援学校へ通学するためにも、外部の環境と隔てられた専用の渡り廊下を通って、外気と接触しないような構造にしているくらいです。また、病室から出ることのできない入院患者については支援学校の教員が病棟に出向いてベッドサイドで授業を教えたりしております。
こうした外出が困難なお子様のために、さいたま新都心に建設する新病院では建物内のテラス、デッキ、中庭などに緑を配して心地のよい空間を作ろうと。また、子どもが楽しく過ごせるプレイルームや、年齢や性別を考えた病室デザインにより患者のアメニティを向上させようと、こういう企画もございます。このような取り組みによってお子さんの心身の安定や療養、生育環境への対応ができると私は考えております。
人工の自然と、緑に囲まれた病院という環境は違う
柳下議員 今知事の答弁の中で、重度の患者のお子さんたちは感染症の恐れがあるということで外に出られないから、ビルの中なんだからいいんだ、ということでしたけれども。
私が言っているのは、小児医療センターに以前うかがった時に、当時の院長先生は城先生でしたけれども、「ぜひ見ていってください」と言われたんですね。で、中庭に案内してくれたんです。そこには何があったかというと、子どもたちに見せたくて蛍を飼っているのですね。そういう院長先生の笑顔が、本当に子どもたちがどういう療養環境の中で育つのかということを非常に感じたのです。
そういう面では私は、外に出るとか出ないとかではなくて、窓から見た時にですね、きのう来た方も窓から見たところの田んぼだとか、非常に緑が多いということがやっぱり子どもにとって大事なんだというふうにお話ししておりました。そういう面で静かなところ、あるいはこの余命がないという子どもたちにとって、私はそういう環境のおよぼす自然治癒力を高めることも含めて言っているのです。
知事は静かな所よりもビルの中のほうがふさわしいというふうにおっしゃるのですか。外に出ないのだから構わないというふうにとるのですか。
上田知事 決してそのようなことを言ったつもりはございません。
柳下議員 ビルの中にいろいろとアメニティとか人工の自然を用意するのと、緑に囲まれた中の病院というのでは、やっぱり違うというふうに思うんですね。そこのところで私は、お手紙を紹介したように子どもたちを静かな環境の中で療養を送らせたいということをお伝えしたわけなのですけど、これについてはいかがですかという質問なんですね。
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上田知事(後ろ向き)の答弁を聞く柳下県議 |
上田知事 総合的に考えて新都心を選択しているんです。
たとえば日赤でお母さんが赤ちゃんを産むとき、生まれながらにいろんな先天的な問題が起きているとき、そのまま小児病院で特別な部屋に入って処理ができるんです。いろんな意味での処置ができるんです。しかし、そこから蓮田のほうまで運ぶことのほうが、より生命の危険度は高いんです。そういう医療の連携ということも、いろんな形で考えて、われわれは総合的に考えてものを申し上げております。
緑もあってそれもあって何もあって、というのが一番理想かもしれませんが、聖路加病院だって屋上庭園で最終の、いわゆる余命のないがん患者が、やはり屋上の庭園でゆったりと気持ちをなごませておられます。だからといって、じゃあ聖路加病院を緑豊かなところに移して多くの患者を受け止めることができるかどうかといったら別問題になるかと思います。いろんな議論がありますが、総合的な判断で私たちはそういうことを申し上げているということにご理解を賜りたいと思います。
柳下議員 2問目の質問ですけれども、知事は患者のために一部機能を残すと言いますけれども、一人ひとりの患者と面接し希望に応じる考えなのでしょうか。
(委員長が質疑時間の終了を宣告したため、答弁なし)
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