9月18日、日本共産党埼玉県委員会主催の水道料金引き上げシンポジウムが開かれ、伊藤はつみ県議がコーディネーターとして、城下のり子県議がパネリストとして参加しました。
会場には約40名、オンラインで約60名が参加し、質疑や意見などが積極的に交換されました。
城下のり子県議は
「埼玉県企業局は2026年度より県水道料金を1㎥あたり76円約23%の引き上げとする方針を6月定例会に示しました。料金引き上げの理由は、水需要の低下と電気代高騰など維持管理運営費の増大とのことです。
埼玉県は12月定例会でこの引き上げ案を提出する意向で、すでに市町村への説明は終了しています。県は来年度2025年度に引き上げの意向でしたが、市町村からの強い反発で1年延ばし2026年度からの実施としました。」と経過を説明。
以下は、城下県議がシンポジウムで公表した資料です。
そのうえで城下県議は
「電気代、ガス代、ガソリン代、米や小麦をはじめとした食料品などの物価高騰で県民の生活が極度に困窮しています。
地方公営企業法は第3条で『地方公営企業は常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するよう運営されなければならない』とあります。公共の福祉の増進こそが、『本来の目的』だとしているのです。
今回のような急激な電気料金の高騰の場合には、一般会計で支え引き上げを食い止めるべきです」と提案しました。また、県公営企業の内部留保は年々増加しているとして、この取り崩しも提案しました。
また城下県議は、国の責任について
「高度浄水処理事業や老朽対策など浄水場整備や、水道管の老朽・耐震化など必要な整備に対して、国の補助が少なすぎます。例えば大久保浄水場の高度処理事業に対して、約617億円でしたが国の補助は約40億円しかありませんでした。補助対象が狭すぎます。補助対象を広げ、補助割合4分の1も増やすべきです。」
「国の『水資源開発事業』=八ツ場ダムの総事業費は総事業費約5315億円で埼玉県は約1095億円負担させられました。これで、埼玉県は安定水利権=取水する権利をえましたが、水需要は節水機器の普及で、年々減っています。水利権量のどのくらい取水をしたのかという実績を県にきいたところ、企業局の答えは約7割でした。その前年もその前も約7割です。得た権利の3割は必要なかったということになります。
この時の県負担が、現在の水道会計を圧迫しているのです。八ツ場ダムの減価償却がはじまってから、水道事業の損益収支は悪化しています。
過大な水需要を前提とした国と県の見込み違いによる、水道会計の赤字責任を受益者に転嫁すべきではないと考えます。」と発言しました。
続いて、埼玉県職員組合より代表が発言
「江戸時代、町民はコレラや赤痢で死んでいきました。横浜で初めて水道が引かれたときは塩素で浄化しました。水道は公衆衛生です。受益者負担原則がおかしい」と力強く発言しました。
次に埼玉自治体問題研究所福理事長の林敏夫氏は
「水道事業が環境省・厚労省から、国土交通省に移った。より「アセットマネジメント=資産管理」の側面が強調されています。
朝日新聞は1面で、『水道値上げ過去10年で最多』『財政難にあえぐ水道』と特集しながら『独立採算の原則』で広域化・民営化しかないと報道しています」と指摘
林氏は
「しかし、水道法第1条は『この法律は・・・・清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することを目的とする』としています。」と清浄・豊富・低廉の3原則を強調。地方自治体もこの立場で水道事業を実施すべきだと発言しました。
また憲法25条の2項「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。をあげ、水道は憲法に由来する事業であるとかたりました。
林氏は、今回の料金改定で、検証されるべき点は「原因者責任」だと指摘しました。
「水需要予測は適切だったのか、県民世論を聞かずにダム建設で水利権を確保し、その後水が売れないからと高い水を買えというのは勝手ではないか?『夏の渇水時の水の確保ができなくなります。』といったのは川口市選出の新藤義孝衆議院議員。
また、高度浄水処理を料金値上げで負担するのが妥当なのか?」などと問題提起しました。
そして「諸物価高騰の中でせめて公共料金は抑制すべきだ。独立採算制の壁を破れれば」と提起しました。
林氏は、市町村と県水道の関係も問題提起しました。
「埼玉県と市町村の受水協定を確認する必要がある。地下水活用の可能性を検証すべきです。地下水は地盤沈下が指摘された時期もあるが、現在は安定化してきています。きちんと測定しながら活用すべきではないか。また現在も井戸を掘る能力のある大企業は地下水を大量に取水している場合もある。このような取水に一定の課税はできないものか」など、市町村水道料金の引き下げにも言及しました。
最後に梅村さえこ元衆議院議員は、
国の水資源開発事業=ダム建設を批判。「受益者負担のもと、自民党の大型公共事業ありきのつけを国民に転嫁してきた」と語りました。
また、水道施設の耐震化や老朽化対策、高度浄水化などへの国の方針は「従来の施設には補助はしない」新しい施設に補助するという方針だとして、
「なぜ、耐震化などへの補助が少ないのか、ここを考えたい」と提案
2018年の水道法では、下水道にはすでに官民連携型が導入済みでしたが、水道にも「官民連携コンセッション型」を容認したこと、国が上下水道でPPP、PFIの導入を計画していることを指摘しました。
4月には環境省や厚労省の書簡であった水道を、国交省へ移管し、
21世紀は水の時代として、世界の水事業者が参入できる方向を打ち出しています。
しかし、世界では先行的に進めてきた自治体が、民間委託のデメリットから直営に戻す例が広がっています。しかし、ベルリン市では民間委託を中止しようとしましたが、事業者がなったくせず直営とできずにいるとして、いったん民営化すると簡単には後戻りできない実態が語られました。また行政内部での技術の継承ができなくなる問題も指摘されています。
このように、梅村氏は、上下水道事業を民間企業の収益の場とする国の方針を強く批判しました。
その後、加川義光党県委員会自治体部長より、「埼玉県水道料金引き上げの撤回を求める署名」の提案が行われました。署名:埼玉県水道料金の引き上げ撤回を求める
続いて、会場やZOOM参加者から質疑応答がありました。
「各市町村の水道料金に格差があるのはなぜか?」「県水転換率が高い自治体が値上げの影響を受けると考えてよいか」「県水転換率が市町村ごとちがうのは?」など質問が寄せられ、パネリストが回答。
飯能市より
飯能市は河川水を自己水として調達できるが、県水押しつけを受け入れてきた。住民は自己水比を高くすることを要求している。
蓮田市より
市は2017年に老朽管の更新工事のためと称して値上げを行い、県内でも給水単価が高い方になってしまった。その結果現金はどんどんたまり、2023年度には1億円も投資を行いました。未処理利益剰余金は資本金に組み入れている。・・・
戸田市より
戸田市は、平成8年度の改定以来、28年間、値上げを行なっておらず、県内1安い料金となっていました。実態としては、包括委託の導入や有収率の向上など経費節減と経営効率化、人口の増加が著しく、水道メーターの新設に係る分担金等収入が確保され、料金回収率の不足分を補うための原資となってきたことと、県水受水費等の事業経費の上昇が抑制されてきた事により、実現されてきたと述べています。これまで、上下水道経営審議会において、県水の値上げがあれば、値上げを検討するという方針が示されていたところです。(83%も県水を受水している)
令和6年6月に上下水道事業経営審議会より提出された「水道事業における適正な水道料金の設定について」 の答申に基づき、「委託料等事業費の増加」、「分担金等収入の減少」、「県水受水単価の改定」などにより、現行の料金水準では赤字額の急激な増加が予測されるとして、本9月議会に、水道料金等の改定を行うための条例改正案が提案されています。
改訂内容は、
【水道料金】平均改定率 33.87%
※一般家庭(2人)で使用の水道口径(20mm・水量30m³/2ヶ月)算出: 3,234円→4,301円(改定率32.99%)、2ヶ月で約1100円の値上げ、
【分担金等】すべての口径で引き上げ
※水道メーター新設分(口径20mm):176千円→253千円に、
(改定43.75%)77,000円の引き上げです。
独立採算の原則からすると本来、60.%、の値上げが必要だが、市民生活を考慮して3年間の激変緩和措置を講じて、33.7%とした。との説明です。
施行日 令和7年4月1日
今回の値上げを、市議団の後援会ニュースや宣伝等で知った、市民は大変怒っています。こうした声は、値上げに賛成の会派にも届いているようで、市長会派の一人は、市民の理解を得られるよう周知を求める質問や、条例改正が付託された常任委員会からは料金値上げの条例への委員会からの付帯決議が最終日に提案されることになっています。中身は、利用者への周知・説明を廷内に行ない、改定の理解を得られるように努めること、令和10年以降の料金改定においては緩やかな改定率となるよう財源の確保を図ること、等となっています。
川口市の方は
川口市が水道料金の25%引きあげを実施した。これに対して1万筆の署名をあつめ、10回にわたって市に提出してきた。市長は1度も会おうとしない。これからも勉強会など取り組んでいきたい。
県水道料金引き上げ議案は12月定例会に提出見込みです。
署名など、県民の運動を広げていきましょう。