地域のかけがえのない足ーコミュニティバス守れと要請

 

5月14日、伊藤岳参議院議員、塩川鉄也衆議院議員、梅村さえ子元衆議院議員と、伊藤はつみ県議はじめ埼玉県の市町村議員、衆議院議員小選挙区候補が、参議院会館で国土交通省に22議員団の「コミュニティバスを存続させ、地域公共交通の充実発展を図り利用者の交通権を保障するための要請書」と同趣旨の署名888筆を提出しました

高齢化や若者の免許取得者の減少の中で、路線バスやコミュニティバス、デマンド交通など地域公共交通機関を充実してほしいという要求が、極めて高くなっています。埼玉県内の市町村は、市民の要求や運動にこたえて、国の特別交付税や補助金を受けながら拡充の努力をしています。しかし、地域公共交通の活性化・再生を保障する国の予算は、2011年度導入時は305億円が計上されていましたが、22年度は207億円に減らされています。

さらに、バス・タクシー運転手の不足が深刻化し、路線バスの減便・廃止に加え、東武バスウエストや国際興業バスをはじめとした事業者のコミュニティバスからの撤退表明や相談が大規模に広がっています。このままでは地域公共交通機関の崩壊を招き、地域のくらしを守ることができません。

交通政策基本法は、交通権を盛り込んでいませんが、法制定時の答弁からは交通権の精神が盛り込まれたものだと解釈できます。憲法の主旨からも、交通権の保障は国と地方自治体の責務です。

以上などから、要望書は以下の4点を国に対しもとめています。

①国として運転手確保にあらゆる施策を講じること。バスやタクシー運転手の賃金引上げが実施されるよう指導援助すること。

②地域公共交通維持確保改善事業をはじめ国の負担を大幅に拡充すること。

③東武バスウエストや国際興業バスなど、大規模な撤退を計画している大手バス事業者に対して、計画見直しを求めること。

④交通政策基本法は、国及び自治体の責務として財政の確立や労働環境の改善を明記し、交通権を保障するよう改正すること。

 

国土交通省からは

①に対しては、この間運転手賃上げのためにバス会社の運賃引き上げを認めた

②厳しさはよく認識しており、支援をしている。またmaasなどDX推進補助を行っている

③経営判断によるもの。国交省としては助言、協力していく

④平成25年の交通基本法策定の際に、審議会からは「時期尚早」と答申され、現在もこの立場は変わらない

このような要旨の回答がありました。

これに対し、伊藤岳参議院議員は、国交省に質問し、以下の内容がおおむね明らかとなりました。

「22年から23年の1年間で、バス路線の廃止は、全国で1597キロ(廃止線路距離)、首都圏で303キロメートルに及ぶこと。都市部での撤退が顕著だ」ということ

「運転手不足に対して、運転手の処遇改善が不可欠だが、国交省としては運賃改定により運転手の賃上げを図る仕組みをとっている。この3月に運賃改定を認めたが、これが運転手賃金引き上げに資するのは2年、3年先になる」

「市町村のコミュニティバスなど地域公共交通への国補助は、赤字分の2分の1となっているが2分の1も補助されていない。実際は、予算額が毎年200億円とされており、これを全国に配分するしくみであること」

 

このようなやりとりから参加者からは、以下のような意見・質問があり、国交省が回答しました(いずれも要旨)。

新座市議団 「東武バスウエストが市に対して令和7年度に撤退を通告してきた。毎年30人から50人の退職者がでるにもかかわらず、採用ができない。党市議団は市長に要望書を提出し、東武バスウエストに継続運航を働きかけるよう申し入れた。同時に、今回の署名をとりくんできた。署名は配ったところから『書いたからすぐに取りに来て』と言われる状況。『バスがとまったら病院に行くことができない』」と切実な声を紹介しました

さいたま市議団 「市のコミバスは10区中6区しか実施せず、1時間に1本で、土日祝は運行しない。30分に1本の運行を目指したい。市では特別委員会もひらきデマンド交通などの実証実験もはじめている。市の独自財源では限界がある。政令市に国の補助がないのはどうしてなのか?」 と質問。国交省は「原則的には財政規模の大きい政令市に補助はないが、一定の要件を満たした計画を策定すれば補助対象になりうる」と答えました。

狭山市の猪俣義直衆議院議員候補は、「西武池袋線の武蔵藤沢駅、飯能駅間の駅員の無人化方針について、乗降客数2万人の駅すら無人化する、安全を守れるのか」「国として指導すべき」だと発言。国交省は、「事業者の責任であり指導はできない、安全のためのガイドラインを示す」のみだと答えました。

伊藤初美県議 「埼玉県鳩山町に視察に行った。同町には鉄道がない。市はデマンド交通の充実に努力している。年4000万円の事業費で、収益をひくと3200万円。この赤字分の2分の1を国が補助するべきなのに、実際は200万円しか補助はない。鳩山町は「昔はもっと補助がきていた」と言っている。補助額はどのように算定しているのか、明確にしてほしい。」これに対し国交省は、「予算が200億円程度で、年々分母が増えているため、町の補助は減っている」と回答しました。

塩川鉄也衆議院議員は、「西武池袋線の武蔵藤沢のように利用者の多い駅も職員が無人となるのは問題。地域公共交通の補助が年200億円程度というのは少なすぎる。きちんと概算要求しているのか?大規模インフラにばかり予算をつぎ込むのではなく、地域の足に予算を使うべきだ。」などと発言しました。

 

要請に対して国交省の回答は極めて不十分なものであり、参加者が驚きの声を上げる場面が多々ありました。その後、交流会では各地のとりくみなどが発言されました。伊藤岳参議院議員は今後の取り組みとして

①移動・交通の権利は憲法に基づく人権である。これを基本法に明記させる

②今回提出した署名をさらに上積みし、また提出式をしよう

③自治体に対しても要求をつよめ、それぞれの計画をよく調べて、6月9月議会で取り上げてまた交流しよう

と、呼びかけました。