12月22日「荒川の治水・防災問題学習会を東京と埼玉の自治体問題研究所と共催で行い、柳下県議、村岡県議、秋山文和県議、前原県議、守屋県議、秋山もえ県議が参加しました。
最初に東京自治体問題研究所の伊藤氏から主催者報告として問題提起が行われました。
伊藤氏は近年、降雨の激甚化・集中化により治水施設の能力を大きく超えて洪水が多発している。昨年の台風第19号では全国で142か所の河川が決壊し、約3万5千haが浸水。そうしたことを受けて国土交通省の「防災・減災・国土強靭化のための5ヵ年計画」が加速している。
12月8日には「2021年度予算編成の基本方針」を閣議決定。その中に「激甚化する風水害や巨大地震等への対策、予防保全に向けた老朽化対策の加速、デジタル化等の推進にかかる対策を柱とする。特に加速化・深化させるべき施策のために追加的に必要となる事業規模は15兆円程度を目指すこととし、初年度については、令和2年度第3次補正予算において措置する」とあり、5兆円規模の軍事予算と比較しても大規模であり、今後どう進んでいくのか注目されると報告しました。
続いて中央大学理工学研究所、前橋工科大学名誉教授の土屋氏が「激甚化・広域化する豪雨災害―首都圏の水害から命を守るために―」と題して講演しました。
土屋氏は昨年の台風第19号での河川の決壊を分析。決壊した河川の状況を見ると想定した10年から200年に一度の降水量をこえる雨量が降ったことで決壊をしている。しかし荒川水系の越辺川、都幾川で200年に1度の想定の76%で決壊している。その原因として、河川敷に樹木があると、水位が上がるという研究結果があり、越辺川と都幾川の合流点でも樹木が生い茂っていることが影響したのではないかと話しました。
続いて「荒川下流部堤防の質的強化について―洪水・高潮・地震に対する危険性及び対処法を考える―」と題して、旧・建設省土木研究所次長の石崎氏が講演しました。
石崎氏は荒川にかかる京成本線鉄橋は周辺の堤防より約3.7m低く、水量が増すとそこに圧力がかかり、決壊する恐れがあること、しかし堤防をかさ上げしようとすれば鉄道会社も絡んで莫大な費用がかかる。そこで堤防の低いところの決壊を防ぐため、裏のりを耐越水化(フロンティア堤防)にすることを提案しました。また本来地盤に密着しているはずの堤防が圧密沈下によって空洞ができる。その空洞調査を重要防水箇所のランクに応じて精密度をあげて行うべきと発言しました。
続いて「水源開発問題全国連絡会共同代表」の嶋津氏が「荒川の治水対策として荒川第二・第三調節池は必要か」と題して講演しました。
嶋津氏は荒川下流部の延べ 52kmで計画されている高規格堤防(スーパー堤防)のほとんどは実現性が全くない。1:30の勾配になったところはたったの910mであり、全体の1.8%にすぎない。事業開始から20年経過して、整備率が1.8%だとすれば完成するのに約1100年必要になってしまう。スーパー堤防が進まない理由は人々が住んでいるのをどかしてそこに堤防をつくるという手法そのものに無理がある。また費用があまりにも巨額。約50㎞の未整備区間を整備する費用は1.95兆円にもなると話しました。
続いて荒川第2、第3調節池について。荒川第2、第3調節池は堤防の中に囲ぎょう堤をつくるというもの。(以下荒川第2、第3調節池について)
荒川中流部は広大な河川敷や横堤もあり、かなりの洪水調節効果がある。総事業費1670億円という巨額をつぎ込んでやる必要があるのか。それよりも橋梁付近で堤防高が極端に低くなっているところがある。そうしたところの嵩上げ工事こそすみやかに進めるべき、と話ました。