5月26日、日本共産党埼玉県委員会新型コロナ対策本部は、埼玉県に対して「新型コロナ対策にかかる医療機関に対する支援強化を求める要望書」を提出しました。
党県議団の村岡正嗣、秋山文和、守屋裕子県議が同席しました。
荻原初男党埼玉県委員会委員長は、医療機関の経営危機について、「6月には4,5月の報酬が入ってくるが、これが大幅に減少し、病院によっては資金ショートしかねない。このままではもたないという声もある。第2波に備えるために、国への要望はもちろん、県として支援をお願いしたい。また、PCR検査の拡大も必要だ。」と語りました。
村岡党県議団幹事長は、感染症病床のある医療機関はもちろん、感染症にかかわっているいないに関係なく、医療機関全体が危機的だと、一般社団法人日本病院会など3団体の緊急調査結果も示し、特定警戒8都道府県の医療機関平均利益率12.6%減だと語りました。「県自らが感染症病床を作ってくれと要請した。しかし私たちが訪問したある病院は、6床の感染症病床を確保するために、同じフロア70床を閉鎖しなければならなくなった。減収は16%にものぼるという。コロナで協力すればするほど経営危機に陥るという状況がある」
応対した砂川浩紀県副知事は、「1番の医療機関の声を聴くというのは、まさにその通り。感染症病床確保で、多くの病床が閉鎖というのもその通り。報酬などの制度改正を国に求めている」と語りました。一方で、県の財政では難しいと、地方への国の交付金の大幅増額を要望していること。17日にも共産党も含む県関係国会議員へ要望したと語りました。
党県議団からは「知事就任から1年、大変な年だったと思うが、県民の率直な声は、国のお金まちという言葉が多いというもの。埼玉県としてどうするということを打ち出してほしい」「県の取り組みがわからないという声が多いので、もっとアピールを」など指摘しました。
また、さいたま市立病院の旧病棟を活用し、感染症専門病棟整備をという要望については、「貴重な医療資源だと思っている。しかし、ネックになるのは医療人材」だとして、検討しているとの回答でした。
また、公立・公的病院の再編統合計画の撤回を国に求めよという要望について副知事は、「再編統合先にありきという立場ではない。しかし病床機能見直しなど建設的な議論をしていきたい」と答えました。
要望の全文は以下の通り。
2020年5月26日
埼玉県知事
大野 元裕 様
日本共産党埼玉県委員会
新型コロナ対策本部
本部長 荻原 初男
新型コロナ対策にかかる医療機関に対する支援強化を求める要望書
政府は25日、本県を含む首都圏4都県と北海道で継続している緊急事態宣言の全面解除を決定しました。感染拡大防止のために今日まで日夜奮闘されてこられた知事並びに県職員、医療関係者のご努力、ご尽力に改めて感謝と敬意を表するものです。
緊急事態宣言が解除されましたが、解除イコール収束でないことは言うまでもありません。また、第2波の感染拡大も予想され、長期戦を見据えた対策が求められています。
ところが、感染拡大の防止と感染患者の治療を担ってきた医療機関がいま深刻な経営危機に陥っています。全国の病院でつくる全日本病院協会、日本病院会、日本医療法人会の3団体は5月18日、記者会見を開き、病院対象の経営状態に関する調査結果を公表しました。そこでは、新型コロナウイルス感染症の影響で、どの病院でも大幅な赤字となり経営の悪化が深刻になっている実態が示され、3団体は国の助成強化を強く求めています。
こうした事態を受けて当委員会コロナ対策本部も先日、国会議員と県議会議員を中心に、県内の医療機関を訪れ院長や事務長らから聞き取り調査を行いました。県の要請を受けて新型コロナ感染症患者の入院を受け入れた県東部のある病院では、疑い患者4床分を含め6床のベッドを確保するために1フロアー2病棟70床を閉鎖したというお話でした。患者の受診抑制や、不急の検査・入院・手術の延期、健康診断の休止などで大幅な減収となっているところへ、70床の病床を閉鎖したことで、経営悪化が急速にすすんでいる実態が明らかになりました。また、やはり感染症患者を受け入れている県南のある病院では、4月の決算で前年同月比1億5千万円(約16%)の減収になり、5月はさらに大きな減収が避けられないというなかで、「病院がつぶれたら地域の救急医療も崩壊してしまう」という危機感が語られました。
よって、県におかれましては、医療機関の経営危機を打開し、「医療の崩壊」という事態を回避するとともに、感染の第2波の感染拡大に備えるために、以下の対策を講じられるよう強く要望します。
1.県として、緊急に県内の医療機関の経営実態調査を行うと同時に、現場の声を聴取し、今後の対策に生かすこと。
2.令和2年度県一般会計補正予算では新型コロナウイルス対策として疑い患者の入院先の確保や、人工呼吸器の設備整備、入院患者受入れに対する協力金など81億2400万円を計上しましたが、これではあまりに不十分です。さらなる補正予算を組んで、抜本的に医療機関への補償を行うべきです。
特に空床補償は、6床を確保するために70床を閉鎖しなければならない場合には閉鎖した病床すべてに支払うよう拡充すること。
3.上記の補正予算は、新型コロナ感染症に直接対応する予算措置がほとんどです。感染症患者の受け入れで、外来や入院患者が減少している実態に即した医療機関への財政支援を講じること。
4.保険請求に対する支払いは2ケ月後であることから、この6月及び7月での資金ショートを起こす懸念が現実化しています。国に対して緊急対策を求めるとともに、金融支援をはじめ県独自の支援策を講じること。
5.ECMO(体外式膜型人工肺)の操作には専門的な知識が必要です。ECMOの機材購入に対する助成予算を増額するとともに、県の責任においてスタッフの養成を行うこと。
6.医療用マスク、フェイスシールド、防護具等がまだまだ不足しているため、関連予算を大幅に増額すること。
7.今後、コロナ感染の長期化が予想され、第2波の流行も指摘されています。そこで、さいたま市民病院の旧病棟を、中等症の患者を受け入れる感染症専門病棟として活用できるようさいたま市との協議をすすめること。
8.公立・公的病院感染症患者の受け入れ体制をさらに強化すること。また、厚生労働省が進めようとしている公立・公的病院の再編整備計画についてはいったん計画を撤回するよう国に求めること。
9.重症者の診療報酬が2倍になったとはいえ、これでは減収のごく一部の補填にしかなりません。国の第二次補正予算の編成にあたっては、昨年比での減収すべてを補填して医療機関の経営を支える観点を貫くよう国に要望すること。
以上