【柳下礼子県議の一般質問・答弁全文】

6月26日、埼玉県議会本会議において日本共産党の柳下礼子県議が行った一般質問と各部局の答弁要旨を紹介します。(文責・県議団事務局)

日本共産党 柳下礼子県議 6月定例会一般質問(質疑・答弁要旨)

〔2018年6月26日〕

1、知事の知事会長就任について

①オスプレイの横田基地配備は撤回を

【柳下県議】

日本共産党の柳下礼子です。

はじめに、先週の大阪北部地震で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災者のみなさまには心よりお見舞いを申し上げます。

県としては、被災地支援に全面的に協力するとともに、ブロック塀の安全性の再点検など、しっかりと教訓を導きだしていただきたいと思います。

それでは質問に入ります。

この4月、上田知事は全国知事会会長に就任されました。今後、国に対していうべきことははっきりと発言することを強く望みます。

まず、米軍横田基地へのCV22オスプレイの配備についてです。2019年とされていたCV22オスプレイの配備が突如、今年夏に前倒しされました。このオスプレイについては、4月普天間からのMV22が奄美空港に緊急着陸、6月横田基地から飛んだCV22が奄美空港に緊急着陸と、トラブルが毎月のように報道されております

この点で、埼玉県基地対策協議会は、情報提供や安全確保の徹底を防衛省に申し入れたとのこと。国の回答は「得られた情報は適切に地元に説明したい」というものでした。

ところが5月29日にCV22は横田基地に飛来していたのですが、この情報を防衛省は事前に把握していたにも関わらず、自治体に提供しませんでした。防衛省は「米軍から秘密にしてくれといわれたから」と説明しています。

6月23日にも午後2時ごろ埼玉県上空を飛んで、CV22が横田基地に着陸しておりますが、関係自治体に情報提供されたのは、埼玉上空を通過した後の4時半過ぎでした。MVと異なりCV22は特殊作戦用の輸送機です。作戦そのものが軍事機密とされるCV22の発着情報が、今後、自治体にその都度提供されるとは私は考えがたいのですが、知事の見解を伺います。

私は、危険な欠陥機であり、特殊作戦用輸送機CV22オスプレイの横田基地配備は撤回しかない、撤回を要求すべきと考えますが、知事いかがでしょうか?

なお、昨年、知事は、基地負担に関する研究会の座長に就任しました。この中で埼玉県の基地負担軽減についても積極的に発言していただきたいと考えますが、研究会の報告を求めます。

 

【知事】 柳下礼子議員の御質問にお答えを申し上げます。

まず、「知事の全国知事会会長にあたって」のお尋ねのうち、米軍横田基地に配備されるCV-22オスプレイの発着情報が自治体に提供されるとは考え難いことについてでございます。

米軍機の運用に際しては、住民生活への最大限の配慮が必要であると考えております。そのため、県と基地関連14市町で構成する埼玉県基地対策協議会では、CV-22の配備前倒しが発表された4月3日に、安全確保や騒音への配慮、地元への十分な説明について直ちに北関東防衛局に口頭で要請しました。

さらに、5月10日には防衛大臣に対し文書で要請を行っております。CV-22に関する情報提供について改めて国に確認したところ、今後、米国側から情報が得られた場合には速やかに地元に説明するとの見解が示されています。本来ならば主権国家として日本政府は米国側に事前通知を求めるべきだと私は考えます。

県としては県民の不安を解消するため、県基地対策協議会の構成市町と共に、引き続き国に対し十分な説明を求めてまいります。

次に、CV-22の配備撤回を要求することについてでございます。

国は横田基地へのCV-22の配備について、日米同盟の抑止力・対処力を向上させ、我が国の防衛とアジア太平洋地域の安定に資するものと評価をしています。安全保障に関することは国の専管事項であり、現時点で県から配備撤回を求める考えはございません。御理解ください。

次に、全国知事会の米軍基地負担に関する研究会についてでございます。

研究会では「沖縄県における米軍基地の現状」を中心に、本県にも関わりのある「日米地位協定」などのテーマについて、学識経験者や国の担当者などから話を聞き、意見交換を行ってまいりました。6月6日に開催された第6回をもって研究会の開催は終了し、来月予定されている夏の全国知事会議で正式に活動報告を行います。

 

【柳下県議再質問要旨】

特殊作戦機であるCV-22の飛来についてはすべて事後報告であり、見逃せないことである。全国知事会会長に就任したことや沖縄などで飛行機の落下問題が起きていることを踏まえ、一層改めて決意を聞かせてほしい。

 

【知事】

柳下礼子議員の再質問にお答えします。

まず、CV-22の配備の件でございますが、そもそも一般論で言えば、日本は主権国家として、日本政府としても米国側に様々な点で事前通知の要求を遠慮しているというきらいがある、このように私は認識しております。

そういう意味で、こうした日米同盟という大きな枠組みがあるにしても、ドイツやイタリアの例を見ても、同じ敗戦国でも基本的には国家の意思として自分の国の都合の中でアメリカのいわば行動を抑制するという仕掛けになっていますが、日本では必ずしもそうはなっていない。

こうしたことについて、安全保障に関しては国の専管事項であるため、私たち地方自治体は住民の安全や生活を守るという観点から、事前通知について強く要望をこれからもしていきたいと考えております。

 

②知事会における改憲案提案は中止を

【柳下県議】

全国知事会の特別委員会が5月30日、改憲案作成に向け会合を開いたと報道がありました。「自治体の権利を憲法で保障する必要があるとして、独自に課税できることを明確化する条文を追加」とのこと。

現憲法には地方自治が明確に規定され、そのもとで地方分権一括法が存在しております。現憲法では、地方財源の保障が不可能だと考えるのか、知事の見解をお示しください。

私は、憲法に今の自衛隊を書き込み第9条2項を死文化させ、戦争できる国へと安倍政権が突き進む最中に、改憲を提案することは、安倍政権の改憲策動を助長する役割にしかならないと考えます。知事会の名のもとに、改憲案作成など直ちに中止すべきと考えますが、知事の見解を求めます。

 

【知事】

次に、現憲法では地方財源の保障が不可能だと考えているのかについてと、改憲案作成などを直ちに中止すべきについては、相互に関連していますので一括してお答えを申し上げます。現在、全国知事会の総合戦略・政権評価特別委員会では、憲法における地方自治の在り方について検討を行っております。

議員御指摘の地方財源の保障については、主要な論点である「地方自治の本旨の明確化」の中で議論されています。現行規定では地方自治について抽象的で理念的な定めしかありませんが、地方の在り方や国と地方との役割分担を明確化し、地方の自主性・自立性を充実させることを目指しています。

その検討を進める中で、地方の財源保障や課税自主権など自らの財政権についても、憲法にはっきりとうたった方が良いとの意見があり、全国知事会の改正草案に盛り込まれたものでございます。地方の財源保障については財政権の明記がない現行の憲法の下でも、地方交付税制度により一定程度保障される仕組みにはなっております。また、課税自主権についても、制度上は認められています。

しかしながら、神奈川県の臨時特例企業税条例をめぐる裁判では、課税自主権そのものが大きなハードルになりました。このような課題をクリアするためには、憲法に地方の財政権を明記することが一つの有効な手段であります。

「自立自尊」の地方自治を実現するために、このような財政権の強化も含めた憲法における「地方自治の本旨の明確化」について提起していくことは、意義のあることだと考えております。

 

2、東海第二原発再稼動を許すな

【柳下県議】

次に「東海第二原発を再稼働させないことこそ『真の助け合い』」についてです。

東海第二原発は東日本大震災の際、津波で外部電源を失い非常用発電機1台が止まり、残り2台で、ようやく原子炉を冷温停止状態にして重大事故を免れました。東海村の村上元村長は語っています。「津波があと70㎝高かったら大惨事だった。首都圏も被災地となったはず。考えただけで背筋がぞっとした」と。その東海第二原発は今年11月で法定運転40年を迎えます。

ところが、日本原子力発電はこの全国一老朽化した原発を、さらに20年運転延長させようと再稼働申請を国へ提出、その認否判断はこの夏にも下されるとの報道です。専門家からは、防潮堤が未完成、電気ケーブルの劣化が激しい、フィルター付きベント装置も未整備で、到底、稼働させる状況にないとの指摘です。

わが党は繰り返し、東海第二原発に事故あれば本県自体も被災地になり得る、と指摘してきました。埼玉県作成の地域防災計画でも、「本県は東海第二原発から80km強に位置している」と明記しています。

知事に伺います。東海第二原発で重大事故となれば、関東一円が被災地となり、その被害は深刻かつ甚大なものとなります。その認識はありますか、お答えください。

先の定例会では広域避難計画にかかわり、東海第二原発事故での避難者96万人の内、本県には水戸市民約4万人が避難するとの答弁でした。しかし、実際に4万人もの避難者の受け入れに現実性はありません。当の水戸市が19日、市議会において東海第2原発の再稼働を認めないことを求める意見書を可決したことは重い意味があります。これまで、茨城からの避難対応については「助け合いの精神でがんばる」とのご答弁でした。

しかし、東海第二原発については、避難せざるを得ない原因をつくらない、それは再稼働させないことです。そのために本県として声をあげる、それこそが「真の助け合い」ではないでしょうか。知事、お答え下さい。

次に、改定エネルギー基本計画についてです。政府の骨子案では原発を「ベースロード電源」とし、2030年度の電力に占める原子力発電の割合を20~22%とする。これは原発30基分にあたります。青森県六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場は稼働の目途は立っていません。にもかかわらず、安倍政権は原発にしがみついています。

知事、原発の推進を前提にしたエネルギー基本計画は、時代に逆行するのではありませんか。再生可能エネルギーの推進こそ計画の柱とすべきではありませんか。ご所見を伺います。

 

【知事】

次に、「東海第二原発を再稼働させないことこそ『真の助け合い』について」のお尋ねのうち、東海第二原発で重大事故となれば、その被害は深刻かつ甚大なものになるがその認識についてでございます。

本県と東海第二原子力発電所までの距離は地域防災計画に記載しているとおり、約80キロメートルでございます。東京電力福島第一原子力発電所までの距離は本県の最も近いところで約180キロメートルでございます。福島第一原発レベルの事故の例を考えれば、本県にも相当な被害が及ぶことが想定されます。

ただし、その影響範囲や被害の程度は事故の態様、いわゆる中身によります。また、気象条件などによって大きく異なりますので、一概に予測を立てることは困難でございます。

次に、東海第二原発については再稼働させないことが「真の助け合い」ではないかについてでございます。

私は電力供給に関していえば、新しい技術を含め再生可能エネルギーなど最大限活用することで、供給量を確保していくことを目指さなければならないものと考えております。原発の再稼働はできるだけ慎重に行うべきだと考えております。東海第二原発の安全性については、原子力規制委員会が新基準への適合性を審査しているところでございます。

また、再稼働には地元自治体の同意が必要であることから、現在、茨城県でも「茨城県原子力安全対策委員会」において、安全性や防災対策などに関し検討を行っております。再稼働の是非というこの重い課題に地元県として取り組んでおられる時に、隣接県の知事が軽々にものを言うのはいかがなものかと考えています。御理解ください。

次に、再生可能エネルギーの推進こそ計画の柱とすべきではないかについてでございます。

再生可能エネルギーの推進については、私もそのとおりだと思います。原子力発電については、将来の廃炉を見据えた技術維持の観点から、安全を最大限確保した上で、極めて限られた安全なところの再稼働はやむを得ないものだと考えております。以前にも答弁したことがございます。しかし、最終的にはできるだけ早くゼロにすることが望ましいと考えております。

国の次期エネルギー基本計画の案では、脱原発依存に向けた再生可能エネルギーの活用はまだまだスピード感が足りないと考えております。基本計画では再生可能エネルギーの割合を2030年まで22パーセントないし24パーセントを目標にしております。ドイツでは2022年までに全ての原子力発電所を停止させ、再生可能エネルギーの割合を2025年までに40パーセントから45パーセントにすることを目標にしています。

私は日本のエネルギーをできるだけ早く再生可能エネルギーで賄えるよう努力すべきだと考えております。県として再生可能エネルギーの普及拡大に取り組んでまいります。

 

3、埼玉県の企業誘致を検証する

①ホンダ狭山工場廃止は撤回へ

【柳下県議】

次に「埼玉県の企業誘致政策を検証する」のうち「①ホンダ狭山工場廃止撤回へ、県の役割を果たせ」についてです。

昨年10月の本田狭山工場の廃止の報道から8か月が過ぎました。この間、私たちは、ホンダの社員、周辺の商店街、関連企業の皆さんと、対話してまいりました。社員は「寄居まで通うのは無理なので辞めるしかない」「寄居には全員受け入れのキャパはない」と口々に不安を語っています。会社からは、廃止後の雇用方針は一切示されていません。周辺の飲食店は「ホンダが撤退することにより、精神的打撃を受けている」店をほかの場所に移そうと思う」と語っています。

地元狭山市も調査を行っています。特に非製造業では、169件中55件の事業所が売り上げの減少、事業所移転・撤退などの悪影響があると回答しています。ホンダへの賃貸不動産は計9万㎡であることも明らかにしております。ホンダの撤退が、極めて深刻な影響を地元市、地元市民に与えることは必至です。

昨年12月、わが党県議が一般質問した際に、知事は「まず、計画の詳細を把握する」と答えております。知事、現在把握している状況をご報告ください。知事は同じ答弁で、地元狭山市や商工団体とともに具体的に対応していかなければならないと答えております。狭山市は、3月にホンダに対して狭山工場の寄居工場への移転集約に伴う今後の対応について」という文書を提出し、「狭山工場の跡地については、ホンダで活用することを第1に(中略)していただきたい」などと要望しています。埼玉県としてもただちにホンダに対して、「狭山工場は廃止ではなく活用せよ」と要望すべきです。知事答弁を求めます。

ホンダの発表によると、当初廃止と言っていたホンダが、「完成車工場の機能を寄居に集約する」、つまり自動車の製造ラインは移転するが、部品などは引き続き狭山工場で製造すると変化してきているようです。この機会を逃さず、ホンダにはっきりものを言うべきです。

ホンダの内部留保は、2016年から17年までに7400億円増額し、8兆7100億円に達しました。これほどの体力のある企業は、地元に対する社会的責任を果たすべきです。   またホンダ寄居工場、小川工場の誘致政策を進めてきた以上、私は県にも地元に対する責任の一端があると考えます。来るときは億単位の補助で、出ていくのは勝手というのでは、企業誘致政策が成り立ちません。県として、狭山工場存続に全力をあげる決意を固めていただきたい、知事の答弁を求めます。

 

【知事】

次に、「埼玉県の企業誘致政策を検証する」のお尋ねのうち、「ホンダ狭山工場廃止撤回へ、県の役割を果たせ」の現在把握している状況についてでございます。

本田技研工業株式会社は、1952年に現在の和光市内で白子工場を操業して以来、埼玉県の製造業を牽引してきました。こうした中、ホンダは昨年10月に狭山工場の生産機能を2021年度を目途に寄居工場に集約するとともに、電気自動車に係るマザー工場機能を新設することを発表いたしました。

この発表後、速やかに、県幹部などにホンダの本社や狭山工場、寄居工場を頻繁に訪問させ、情報収集を行わせていますが、現時点では発表以上のことは明らかにされておりません。

ホンダの八郷隆弘代表取締役社長が狭山工場の従業員については、「寄居工場に集約しても雇用は維持する」と明言されております。ただそれ以上の詳しい内容については明らかになっていないため、地元の皆様にとって大変大きな関心だということは私も十分理解しております。

今後も引き続き、自動車生産体制の再編計画の具体的な内容について、ホンダに対し情報収集をしっかりと行ってまいります。

次に、狭山工場活用の要望と存続に全力を上げる決意について一括してお答えをいたします。

今回の再編計画は世界の自動車産業界が大変革する中で、ホンダが世界で戦っていくために新しい生産体制にシフトする決断をしたものだと考えております。こうした中で地元狭山市にショックがあれば、それを和らげる対応も必要でございます。

しかし、それ以上にホンダがより一層世界に通用するレベルの高い自動車を生産することによって、今後も狭山工場を活用する状況になることを強く期待するものでございます。私としてはホンダの決断を尊重しつつ、新しい生産体制においても県経済全体に良い影響を及ぼすよう取り組んでいくことが必要だと考えております。今後ともホンダとは県経済全体の活性化のために、協力関係を一層強化してまいります。

 

【柳下県議再質問要旨】

「寄居工場まで通えない」、「地元の商店にも影響がある」といった労働者や地域住民の声をホンダ本社に届けてほしい。

 

【知事】

ホンダの件でございますが、御案内のとおり日本の企業は地域経済あるいは地域社会と密着した関係を常に維持し、地域からの支持を得ながら企業運営をしております。したがって、企業の論理だけで動いておりません。いわんや、ホンダという企業は、埼玉県と極めて深い関わりを持っております。

こうした歴史的なつながりを含めて、ホンダは世界の自動車の環境の中で独自に様々な判断をしておりますが、同時に社員のことに関しても相当いろいろなことを判断しておられる。

ただ、そのことを世間一般にオープンにやっていない。私たちがいろいろ細かく尋ねても、なかなかお答えしていただけない。

しかし、ホンダの企業のマインドとして少なくとも埼玉県にいろいろな意味での配慮をしているということは感じますので、しっかり見守っていかなければならないと思っております。この点については御理解いただきたいと思います。

 

②県農業大学校跡地へのIHI誘致について

【柳下県議】

次に「県農業大学校跡地活用について」です。

終戦後、農大の前身となる農民道場は、地元農民より土地提供を受け、松林を開墾してスタート、昭和60年に埼玉県農業大学校となりました。こうした歴史からも、地元の皆さんに喜ばれる跡地活用とすべきですが、県の考えは先端産業の誘致です。今回、北側産業用地の立地事業者の募集が実施されています。

しかし、すでに一昨年4月27日の日経新聞には、「IHI=旧石川島播磨重工業が埼玉県鶴ヶ島市に航空機エンジン整備の新工場を建設する方針を固めた」「立地予定地は県が持つ県農業大学校跡地の約40ヘクタールの土地」「IHIとの交渉は1年以上前から水面下で進めてきた」とあり、本日「IHIが応募した」との報道がありました。

そこで質問です。報道されたIHI進出の事実関係、また事業者選定は公募型提案競技とされていますが、その選定状況についてお答えください。

IHIは、日本のジェットエンジン生産の60~70%を担い、防衛省が使用する航空機のほとんどのエンジンの生産を担っている重機メーカーです。日米で共同開発されたF-2戦闘機用の新鋭エンジンなどを量産製造しています。県民からは「県が軍需工場を誘致するのか」との声があがっています。先端産業創造と言えば聞こえは良いが、軍需工場誘致などあってはならないと考えますが、見解を伺います。

さて、地元の跡地活用について、鶴ヶ島市議会では「市民の意向に配慮した埼玉県農業大学校跡地活用の実現を求める決議」があげられ、自然環境の保全と調和のとれた企業誘致をと求めています。住民からは、産業用地整備において、貴重な湧き水を守れるのか、新たな遊水地で現状と同じ環境をつくれるのかなど、疑問の声があります。自然環境をどう保全し創造するのか、以上3点、産業労働部長の答弁を求めます。

 

【産業労働部長】

御質問3「埼玉県の企業誘致政策を検証する」の(2)「県農業大学校跡地活用について」お答えを申し上げます。

まず、報道されたIHI進出の事実関係や公募型提案競技とされている事業者の選定状況についてでございます。

お話の報道内容は新聞社独自の取材に基づいたものであります。農大跡地への企業の誘致に当たっては、公募型の企画提案競技を実施しています。多くの企業に参加していただくため、募集要項公表後、直ちに、1000社を超える全国の先端・次世代産業分野の企業に対し、ダイレクトメールを送付いたしました。

また、東京、大阪、川越の3会場で説明会を開催し、延べ80社、173名に御参加いただきました。その結果、6月4日から22日までの応募期間内に、2事業者から提案書が提出されたところです。今後、外部有識者で構成する選定委員会を開催し審査を行いますが、地域経済牽引事業への取組をはじめとする経済活性化への貢献度などを評価し、候補事業者を選定する予定です。

なお、県では、事業者が策定する地域経済牽引事業計画を参考とし、地域再生計画を策定することとしております。

次に、軍需工場を誘致するのかについてでございます。

県では、昨年12月に13市町と共同して埼玉県鶴ヶ島ジャンクション周辺地域基本計画を策定いたしました。この計画では、第4次産業革命関連分野や先端産業創造プロジェクトの重点5分野などを柱として稼ぐ力を強化していくことを目指しています。このため、これらの分野の事業を展開する先端・次世代産業を応募条件としたところです。

最後に、自然環境の保全、創造についてでございます。

農大跡地の活用に当たっては、平成22年度に戦略的環境影響評価を実施し、地元や関係団体の方々と意見交換を重ねてまいりました。その結果、基準を上回る面積の4割以上を緑地などとし、既存の水辺や樹木をできる限り保全する計画としています。

また、湧き水の保全につきましては、継続して水量の調査を行い、造成工事の影響に注意しながら、必要な対策を講じます。さらに、既存の遊水池は埋め立てることとしておりますが、新たに設ける遊水池につきましては、専門家の意見を聴きながら進めてまいります。引き続き、地元鶴ヶ島市や関係団体の声を聴き、自然環境に配慮した整備に努めてまいります。

 

【柳下県議再質問要旨】

IHIは防衛省向けの軍用機エンジンを量産している企業であり、このような戦争に役立てるものが来ることを地元は望んでいない。地元の声をしっかりと聴き、環境に配慮した跡地利用計画とすべきと考えるが、見解を伺う。

 

【産業労働部長】

柳下礼子議員の御質問3「埼玉県の企業誘致政策を検証する」の(2)「県農業大学校跡地活用について」の再質問にお答えを申し上げます。

仮に民生用に作ったものであっても軍事用に転換されることはあります。例えば、半導体であっても、半導体がどのような形で使われるか、また、もっと簡単な例で申し上げますと、化粧品やシャンプーなどを作っている企業であっても、例えばトリエタノールアミンという物質が入っています。これは、マスタードガスの原材料にもなります。また、テニスラケットや釣竿を作っている、こういう企業があれば、炭素繊維が入っておりますのでミサイルの部材になります。

あくまでも今回の企業の誘致につきましては、先端・次世代産業分野の企業を募集するということで募集したわけでございます。

 

4、障害児放課後デイサービス報酬削減は撤回を

【柳下県議】

次に「障害児の放課後等デイサービスの充実を」についてです。

人はそれぞれに、子どもの頃の放課後の思い出があります。私はドッジボール・バスケ・砲丸投げ・ダンスなどです。「誰と遊ぶ」「何をして遊ぶ」といった放課後活動での経験が、大人になった時の自分らしい生活を実現する力につながります。また放課後の活動の充実は、家族の就労保障、家族が自分らしい生活を続けることへの糧にもなります。障害児にとっては、より切実で重要な課題です。

私は今月、設立して6年目になる所沢市の放課後デイサービスを訪問し、通園している子どもさんがのびのびとおやつを食べたり、指導員と触れ合う様子に感動しました。この施設は、学校までお迎えに行き、自宅まで送っています。施設長自身が、障害児の育児に悩んだ経験から、「お母さんが、少しでも楽になれば」と親の苦労に寄り添い、献身的に頑張っています。私は、このような放課後デイがさらに充実され、医療的ケアなど重度の子たちへも広がることを希望しますが、知事、放課後デイの意義について見解を求めます。

2012年に放課後デイという形態が出来て以来、事業所数は急速に増えています。ところが、この4月の厚労省による報酬の改定によって、放課後デイが重大な岐路に立たされています。障害のある子どもたちの放課後保障全国連絡会の緊急調査によると、実に約2割の事業所が廃止の危機にあるというのです。

6月12日には、障害児施設の職員と保護者が国会内に集まり、報酬削減見直しの要望書を厚労省に手渡しました。参加者から「職員の給与をカットしないと運営が成り立たない。」などの切実な声が寄せられました。

今回の報酬改定は、入所施設やグループホームなど入所系障害者施設に比べて、就労支援やデイサービスなど通所系施設が黒字であることから、通所系を改定したとのことです。そもそも、国の障害者施策じたいが不十分であり、通所系の報酬を入所系にまわす様なやり方は絶対に認められません。先に述べた保護者たちの切実な要望に対して、厚労省は「自治体を通じて実体把握に努める」と回答しています。

知事、早急に県内の放課後デイについて報酬改定の影響を把握し、その結果をもとに、放課後デイの報酬の改定見直しを強く国に働きかけるべきです。2点、答弁を求めます。

今回の報酬改定の背景には、利潤を追求し支援の質が低い事業所が増え、問題化したこともあります。放課後デイに関する毎日新聞のアンケートでも、利用が広がる一方、安全性に対する懸念が生じています。放課後デイの質の向上のために、県としてどのように取り組むのか福祉部長、ご答弁ください。

 

【知事】

最後に、「障害児の放課後等デイサービスの充実を」のお尋ねのうち、放課後等デイサービスの意義についてでございます。

放課後等デイサービスは障害のある子供たちを単に預かり、見守るだけではなく、集団生活の中で遊びや交流を通じて成長と発達を促していく役割がございます。

また、日頃から在宅で障害のあるお子さんを介護している御家族の負担を軽減するというレスパイトといった役割もございます。放課後等デイサービスは共働きの夫婦が増加し家庭環境が変化する中、障害のある子供の健全な育成を図るとともに、その家族の日常生活を支えていくため必要なサービスだと認識しております。極めて重要な役割を果たしているものだと思っております。

次に、県内の放課後等デイサービスの実態を把握し、放課後等デイサービスの報酬の見直しを強く国に働き掛けることについてでございます。放課後等デイサービスについては、今回の報酬改定においてこれまで一律の単価設定になっていたものが日常生活の介助の程度などに応じて報酬が見直されたものでございます。障害福祉サービスの経営実態調査を踏まえ、報酬単価を障害の重度化や医療的ケア児の支援などに重点的に配慮したものになっております。

また、看護職員を配置した場合の加算が創設されるなど、医療的ケア児への支援を行う事業所が評価される仕組みにもなっております。このように、今回の改定では放課後等デイサービスの報酬体系の大きな見直しがあり事業者への影響が懸念されたため、事業所や団体に聞き取りを行っております。

その中には改定前の報酬に比べ収入が下回る事業所もあり、今後の運営が厳しくなったなどの御意見がございました。改定は4月に行われましたが、実際に報酬が支払われるのは6月ということもあり、その実態については現時点ではまだ定かにはなっておりません。

県といたしましては引き続き、県内の事業者に運営状況の確認を行いつつ国の実態把握の結果と照らし合わせ、改善すべき点については見直しを行うよう強く国に働き掛けてまいります。

 

【福祉部長】

御質問4「障害児の放課後等デイサービスの充実を」のうち、放課後等デイサービスの質の向上のために県としてどのように取り組むのかについて、お答えを申し上げます。

県内の放課後等デイサービス事業所は、平成30年3月末時点で602か所となっており、5年間で約3倍に増加しています。事業所が急激に増加しサービスの利用が拡大する一方で、サービスの質が低い事業所が増えているとの指摘もございます。そのため、県では毎年、事業所職員を対象に障害特性に応じた支援のあり方や、事故への対応方法などの研修を実施しております。

また、国が定めた「放課後等デイサービスガイドライン」の周知を図るとともに、研修を通じその内容の理解を図っております。平成29年度からは、ガイドラインに沿ってサービスが提供されているかどうか、事業者と利用者の保護者が評価し、その結果と改善内容を各事業者が公表することを義務付けられております。

さらに、適切な施設運営を確保するため、原則として、3年に1回、事業所を実地に訪問し監査を実施するとともに、毎年、全事業者を集めて運営に係る不適正事例などを説明し、事業者を指導しております。

また、利用者の安全を確保するために、事故・事件が発生した際には、速やかに報告するよう指導徹底しております。その報告内容により、必要に応じ現地確認を行い、再発防止策の策定とその徹底を指導しております。

県といたしましては、障害のある子供の健全な育成を図るため研修や事業者指導など、あらゆる機会をとらえて、放課後等デイサービスの質の向上を図ってまいります。

 

5、公立病院の独法化は、病院廃止の第一歩

【柳下県議】

次に「公立病院の独法化は、病院廃止の第一歩 地域医療へ貢献する県立病院へ」です。

2007年、総務省は「公立病院改革ガイドライン」を発表し、全国の自治体に対し公立病院に地方独立行政法人も選択肢とする「経営形態の見直し」を迫ってきました。

本県においても「埼玉県立病院の在り方検討委員会」で検討が始まっております。5月、福祉保健医療常任委員会は、地方独立行政法人大阪府立病院機構へ視察を行いました。大阪府立病院は、独法化直後、前年度比17.2億円も収支を改善するなど財務を改善し、独法化成功のモデルであるかのような報告を受けております。

しかし、その実態は、職員の処遇悪化による質の低下と患者への大幅の負担増であり、公立病院の変質といわざるをえません。

第1の特徴は、徹底した経営論理への転換です。パナソニック出身の独法副理事長は「病院運営から『経営』に変えていこう」と発言。電子カルテを見る看護師のパソコンの画面には、毎日病床利用率が表示され、80%を切ると赤字表示にかわります。

第2は、職員とくに看護師の処遇の切り下げです。看護師給与は国立病院機構にならって、40代以上の昇給をストップしました。これを含む給与費の削減は17.3億円で、収支改善とほぼ同額です。この結果、看護師の退職が相次ぎ、「年中、職員募集に追われ」、非常勤職員が激増しています。

第3は、患者への負担増です。独法化後、個室料金は7500円から1万5千円以上に。最高の部屋は6万円とホテルより高額です。緊急入院しなければならない患者が「2万7千円の個室しかあいていない」と言われ、「それやったら帰るわ」と言ったそうです。

人件費を引き下げて看護師不足に陥るだとか、6万円もの差額ベッドを設ける、このような大阪府立病院のあり方は、まさに「経営」であり、民間病院と変わりないと感じますが、病院事業管理者の見解をご答弁ください。

大阪府立病院の独法化の最大の問題点は、独法化が病院廃止の一歩だという点です。大阪府立、市立病院の統合を目的に、2011年大阪府と市の統合本部が発足し、まず医師会はじめ府民の猛反対を押し切って市立住吉病院が廃止されています。独法化計画は、府民の医療の充実などではなく、公立病院の廃止を目標にしたものです。

私は、公立病院の根幹を否定するような独法化は認められないと思いますが、病院事業管理者、見解を求めます。私は、県立病院のあり方を検討する上で、大切なのは、全国一医師の少ない本県の医療課題に県立病院がどう応えていくのか、この点だと思います。

2点提案します。1つは、循環器・呼吸器病センターは、さらなる拡充をし、救命救急機能を担うべきだということです。医療過疎となっている北部地区の救急医療体制は県立病院こそが支えるべきです。

2つは、小児科・周産期医療を支えるために、小児医療センターの医師体制を強化し、今以上に各地に小児科・新生児科医師の派遣を行うべきです。小児科医師が退職してしまったなど、病院緊急時の支援を県立病院がしっかりと担うべきです。病院事業管理者、私の2つの提案はいかがでしょうか、ご答弁ください。

ところで、私の地元の西埼玉中央病院ですが、NICU9床を備えていながら、新生児の専門医の不在により地域周産期母子医療センターが2012年より休止しております。産科医の確保、小児科医の確保など努力が重ねられてきました。関係者の懸命な努力の末、3床の再開となりました。引き続き、残り6床の再開に進むべきです。地元の悲願である、NICU再開について、保健医療部長の答弁を求めます。

私は、県立病院は、高度医療・不採算部門を担うと共に、地域としっかり結びつき地域医療に貢献することが本来の役割と考えます。あり方検討委員会は拙速な結論をさけ、職員や地域を中心に、幅広い意見を聞きながら議論を進めていただきたい、病院事業管理者の答弁を求めます。

 

【病院事業管理者】

御質問5 公立病院の独法化は、病院廃止の第一歩 -地域医療へ貢献する県立病院へ- についてお答えを申し上げます。

まず、大阪府立病院のあり方についての見解です。

大阪府立病院は、平成18年4月に都道府県立病院としては初めて地方独立行政法人に移行しました。移行に際し、給料表を国立病院機構にならって変更したので、これは収支改善の要因の一つになったのかもしれません。

ただ、本県が確認したところ、地方独立行政法人に移行した15府県18法人の状況では給料表を変更したのは2法人だけであり、少数派です。

一方で、大阪府立病院は医師、看護師などの医療スタッフを必要に応じて増員し、救急部門や高度専門医療の充実など、公立病院の役割を適切に果たしてきたと理解しています。

また、事務や現業などの間接部門はアウトソーシングを行うなど、効率化も進めたとも聞いています。こうした様々な取組の結果、収支が改善され、設立当初からの多額の不良債務を解消されたとのことです。地方独立行政法人への移行当初は、手厚い財政支援も受けていたと聞いておりますが、立派に運営されていると認識しております。

次に、公立病院の根幹を否定するような独法化は認められないについてです。

周産期や救急などの高度専門、不採算医療については、まさに公立病院が担うべき役割です。埼玉県立病院が仮に地方独立行政法人になったとしても、公立病院として担うべき役割は、しっかり果たしてまいります。

次に、循環器・呼吸器病センターにおける救命救急機能の拡充についてです。

循環器・呼吸器病センターは地域医療支援病院として、地域の医療機関と連携しながら、対応可能な領域に限られますが、重篤な救急患者を積極的に受け入れております。平成29年度の救急患者の受入れ実績は、救急車により搬送された患者が前年度と比較し15%ほど増え、救急患者全体で4,147人になりました。今後も、引き続き医師の確保を図り、県北地域における救急医療を支えてまいります。

次に、小児医療センターの医師体制強化についてです。

小児医療センターは、地域の医療機関では対応が困難な小児患者を受け入れ、高度で専門的な医療を提供しています。こうした役割をしっかりと果たすためには、医療スタッフの体制強化、特に医師の確保は極めて重要です。

ただ、県の施策に協力して医師を派遣するためには、まだまだ体制が十分でなく、地域の病院に常勤医師を派遣することは現時点では困難です。まずは医師の確保に努めてまいります。

次に、在り方検討委員会は幅広い意見を聞きながら議論を進めるべきだについてです。

先般、地域医療や経営の専門家など8名の外部有識者から構成される「埼玉県立病院の在り方検討委員会」を設置しました。委員会は、県立病院の役割や求められる機能、また、そのために最適な経営形態などを議論し、意見を頂くこととしております。

一方、今後の県立病院の在り方を検討していく上では診療現場の職員と意見交換をしていくことも非常に大切だと考えています。そこで、この委員会の開催に先立ち、職員と一緒になって県立病院の将来像を考える「県立病院の在り方に関する勉強会」も開催しているところです。勉強会では、これまでに4病院の全てで計8回、延べ千人を超える職員が参加し、活発な意見交換を行いました。在り方の検討については、勉強会で出された意見を委員会で議論していただくなど、職員不在の議論とならないよう丁寧に進めていきたいと考えております。

 

【保健医療部長】

御質問5「公立病院の独法化は、病院廃止の第一歩 -地域医療へ貢献する県立病院へ-」の内、西埼玉中央病院のNICU再開についてお答えを申し上げます。

西埼玉中央病院をはじめ様々な関係者の長年の御努力の結果、平成29年4月に新生児科の指導医1名を県外から招へいするとともに、小児科常勤医7人体制を確保したところです。

西埼玉中央病院からはNICU再開に向け一定の準備が整ったことから、3床を来月中には再開する旨、話をお聞きしております。

6床の再開に進むべきとの御指摘ですが、まずはNICUが安定して継続的に運用されることが重要でございますので、今後の西埼玉中央病院の状況や御意向等をよく踏まえ、必要な支援に努めてまいります。

 

6、県立高校の統廃合は許されない

【柳下県議】

最後に「もう、これ以上、県立高校の統廃合は許されない」について質問いたします。

県は今年4月に「魅力ある県立高校づくり実施方策策定に向けて(再編整備の進め方)」として、2029年度までに、10から13校程度の県立高校を統廃合する計画を公表しました。この「進め方」では、繰り返し「中学校卒業者数の減少が予測される」ことが強調され、学校統廃合が結論付けられています。「魅力ある県立高校」などの文言はありますが、私は本計画は、公立高校統廃合先にありきだと言わざるをえません。

まず、本計画の県立学校をめぐる現状と課題の分析が一面的です。子どもの貧困が社会的に論議されているように、子どものいる家庭の経済状況は深刻です。労働者の実質賃金は10年間で15万円下がり、非正規労働者が広がっています。一人親家庭が増大していますが、シングルマザーの平均年収は200万円程度です。私立学校父母負担軽減制度は、未だ不十分で重い学費負担があります。このような中で「県立高校に行きたい」という子どもたちの願いは切実です。

そもそも県立高等学校は、憲法第26条の「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」この保障こそが最大の役割と言えます。だからこそ、革新県政時代「15の春を泣かせない」というスローガンのもと、多くの困難を乗り越えて県立高校を県内各地につくってきたのです。

県立高校の役割の議論に必要不可欠な、子どもたちの貧困状況、家計状況について、学校間・地域間および定時制・全日制間の経済格差について、「進め方」はいっさい触れておりません。これでは県立高校のあるべき姿など、議論は不可能と考えますが、教育長の答弁を求めます。また、「進め方」策定にあたり、実態把握のために学校や市町村教育委員会を訪問し意見交換を行ったとの説明です。

しかし、保護者、高校生、地域の人にはまだ十分聴いていないということでした。長い年月と時間をかけて策定していますが、一番声を聴くべきところを調査されていない。これでは、地域の実情を反映した方針策定は不可能だと考えますが、教育長の答弁を求めます。

県教委は、1999年の「いきいきハイスクール構想」にもとづき、全日制高校を19校、夜間定時制を14校減らしてきました。その際、地元首長はじめ議会、保護者、OBほか地域住民の存続を求める多数の要望が寄せられたことを、私は忘れません。

私は、子どもたちをめぐる経済状況の分析もない、地域・保護者・高校生のヒアリングもない、統廃合先にありきの「再編整備の進め方」は認めることはできません。どの子も豊かな学力、人間性、社会性が身につくように支えるのが本来の教育です。魅力ある学校づくりというなら、まず第1に少人数学級で充実した学校生活を保障すること、第2に修学旅行・部活などの重い負担をなくすための給付制奨学金創設などを先行して実施すべきです。教育長の答弁を求めます。

 

【教育長】

御質問6「もうこれ以上の県立高校の統廃合は許されない」についてお答えを申し上げます。

まず、「県立高校の役割の議論に、子どもたちの貧困状況などの現状は不可欠ではないか」についてでございます。

県立高校の再編整備は、生徒数の減少に対応し、適正な学校規模の維持と社会のニーズに応える特色化を図り、生徒にとってより良い学習環境を整備することを目的とするものでございます。議員御指摘の経済的困窮などの課題を抱えながら、高校で学びたいという生徒の意欲に応え、学習機会を継続的に提供することは、再編整備にかかわらず県立高校の重要課題と認識しております。そのため、県立高校の授業料は一定の所得要件はあるものの、実質的に無償化されるなど、家庭の経済状況などに十分配慮された支援となっております。

次に、「保護者、高校生、地域の人など一番声を聞くべきところを調査していないのではないか」についてでございます。

今年度、小中学校の各地区PTAの会議や、県内イベント会場におきまして、これから高校へ通うことになる小中学生の保護者や地域の方々に再編整備の進め方を御説明し、生の声を伺っております。引き続き、地域や学校関係者の方々からも幅広く御意見を伺いながら、魅力ある県立高校づくりを進めてまいります。

次に、「魅力ある学校づくりには、まず少人数学級や給付制奨学金を実施すべき」についてでございます。

県立高校におきましては、学習内容の確実な定着を目指し、少人数指導、少人数学級編制や習熟度別授業を導入するなど、生徒の状況に応じてきめ細かく対応しております。経済的に修学が困難な生徒に対しましては、修学旅行などの費用に充てるため、返還不要の「奨学のための給付金」が支給されており、さらに本県では、無利子で、希望者全員が利用可能な奨学金制度で支援をしております。再編整備も含めた魅力ある高校づくりは、生徒数の減少に対応し、適正な学校規模の維持や、社会のニーズに応える特色化を進め、高校教育の充実を図るためのものですので、御理解を賜りたいと存じます。

 

以上

 

201806柳下一般質問質疑答弁要旨