自治体学校3日目〔7/24〕は締めくくりの全体会が行われました。
『社会教育・公民館の役割と地方自治をめぐる課題ー地域・自治体に住民の学びの自由と自治の権利を創造しようー』と題して長澤成次千葉大学名誉教授が講演しました。
文部省が公民館を奨励
最初に講演では、文部省が1947年に公民館設置を奨励する文章を紹介しました。その文章には『町村民に対して新憲法の精神を日常生活に具現化するために恒久的施設として特に適当なる町村を選んで、公民館の設置を促進し…』とあり、その言葉通り公民館は戦後、住民が地域の問題、時事問題、憲法などを学び考え話し合い、実践する、主権者としての意識を培っていく上で重要な役割を果たしたと話されました。
地域を再興させた公民館運動
その話の中で、町並み復元保存運動を進めた岐阜県・妻籠地区の例に挙げました。廃れてしまった江戸時代の宿場町だった街並みを高度経済成長時代に修復・保存する運動が妻籠で興り、その中心となったのが公民館活動でした。公民館活動で出会った若者たちが、1960年代には地域民俗資料保存運動の中心となり、この活動は徐々に公民館を拠点にしながら、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建、1976年選定)へといたる町並み保存運動に発展していったと講義されました。
公民館の統廃合の下で
後半の講義は公民館の取り巻く現状に話が移りました。人口減少や財政の逼迫などの理由により公民館の再編・統廃合、民間委託などが進められていると指摘、千葉県・習志野市では2016年7月に施行された公共施設再生基本条例によって、最大時30箇所あった私立幼稚園・保育所を7つの認定こども園に統合する計画をはじめとする公共施設の再編・統廃合計画が進められようとしていると解説。
2014年にはさいたま市の公民館が『梅雨空に九条守れの女性デモ』と書かれた秀句を公民館だよりに掲載することを拒否した事件が起こりました。これは明らかに憲法で保障された基本的人権と学び表現する権利を根底から覆す侵害であると語りました。
地域住人の学習権を保障する公民館活動を
この様な現在の公民館をとりまく状況をふまえて市民が地域の課題と向き合い、学び話し合う公民館活動の再確認が必要だと語りました。その上で1963年に枚方市教育委員会が『社会教育は国民の権利であり住民自治の力となるものである』と明記された『枚方テーゼ』に触れ『各自治体が人権として学ぶ権利を保障する社会教育行政を構築しよう。住民ひとりひとりが社会教育や憲法を学ぶ公共の広場づくりを進めていこう。』と呼びかけ講義を締めくくりました。