第59回自治体学校in千葉が7月22日~24日の日程で千葉市の青葉の森公園芸術ホールなどを会場にして開催されました。地方自治体職員や地方議員など1000人を越える人たちが全国から集まりました。日本共産党埼玉県議員団からは柳下礼子、村岡正嗣、金子正江、前原かづえの各県議が参加しました。
初日の全大会ではまず記念シンポジウム『住民参加で輝く自治体を』が行われました。
各地で生まれる市民と野党の共同
まずコーディネーターの岡田知弘京都大学院教授が住民の命と生存権をめぐる問題の深刻化の中で、足元から住民の命を守る広範な住民運動と市民と野党との共同が各地で生まれていると語りました。とりわけ東北の被災地、沖縄、福島に共通する動きとして地域の困難な課題に直面する中で地元財界人を含む多様な分野をつなぐ運動体が生まれる過程を話されました。
2016年10月に行われた新潟県知事選挙は野党三党と県民に推された米山隆一氏が圧勝しました。これは原発再稼動反対やTPP反対を貫き『新潟が地方として自立する』と訴えた米山氏の明確な主張が広く県民の心をとらえ、それを連綿と続いてきた柏崎刈羽原発に対する広範な住民運動などが後押しした結果でした。米山候補の選挙事務所では各野党が机を並べ、市民だれもが立ち寄りやすい雰囲気だったといいます。
沖縄では県内経済に占める米軍基地の経済波及効果がわずか5%という事実が広く知られるようになり県民の命と地域経済を脅かす基地は不要という世論が広がっています。その中で県内の企業が辺野古での新基地建設反対運動に大きく寄与していると紹介しました。
強引というな国会運営への審判が
次にシンポジストの渡辺治一橋大学名誉教授が東京都議会議員選挙の結果について触れ、森友・加計問題に加え暴言や失言、強引な国会運営が続く安部政権に対する審判という形で自民党の惨敗が引き起こされた。安倍政治に幻滅した行き場のない不満層の受け皿という形で都民ファーストが躍進し、一方共産党は健闘したが野党共闘勢力は伸び悩んだと論じました。
今、国会においても日本国憲法・九条を空文化させようとする動きがある。今後、市民と野党が各地でより結束を強めていき改憲発議をさせないことが大事になっていくと語りました。
大型開発を進める悪循環
同じくシンポジストの中山徹奈良女子大学大学院教授は,現在の多くの自治体が人口減少に歯止めをかけ諸問題を解決する名目で大型開発を実施する中で市民生活が悪化し,人口減少が現実化している悪循環を明らかにしました。
大阪府では大規模開発を進め、万博を誘致する施策の中で地下鉄や保育園、水道事業などが民営化され利用料金の上昇で住民生活を圧迫している実態が紹介されました。
最後に岡田知弘コーディネーターが『基本的人権は抽象的な権利ではなく自発的、自主的な住民運動として展開されざるをえない。国や自治体を少数の大企業のものではなく、主権者である国民・住民のものにしていこう。』とシンポジウムを締めくくりました。
命の尊重と人間らしい暮らしをめざす各地の住民運動と地方自治に希望を感じたシンポジウムでした。
自分たちの地域の魅力を引き出して
次に特別報告として千葉県いすみ市が行っている無農薬農法と自然環境を生かした地域づくりの取り組みを、いすみ市企画政策課の石川伸一郎さんが紹介しました。
いすみ市は千葉県の南東部、太平洋に面した九十九里浜の最南端に位置する人口約39000人の自治体です。12年前、3つの町が合併して誕生しました。合併後、「市では誰もが幸せになれる地域づくりをどう進めていくかを一生懸命考えたといいます。
その主眼のひとつは「自然と共生する里づくり」であり、その担い手の「人づくり」でした。まず無農薬農業、生き物に優しい環境保全型農業を推進しましたが当初はノウハウが不十分で農家の反対もあり上手く進みませんでした。その後、有機稲作の専門家を招き「学校給食米のすべてを有機米に」を目標に掲げ、試行錯誤しながら「有機稲作モデル事業」を開始し、2016年には市内全小中学校の40%が有機米を導入しています。
その結果、給食を通じて子どもたちの健康に寄与し、子供たち自らが農作業に関わることで農家への愛着も生まれています。この事業で生産されたお米を「いすみっ子」として、いすみ市の産物を「いすみブランド」として、全国に販売して市の所得向上を目指しています。
地域の魅力づくりと地域経済の活性化の連動を目指している、いすみ市の挑戦は続きます。