経済規模では、世界第三位の「経済大国」、日本。
世界的に見ても、平和で平等な社会といわれています。
しかしそんな世界の評価とは裏腹に、今、日本国内では各家庭の「経済格差」が広がり、「貧困率」が高まっているのです。
6~7人に1人が「貧困」、母子家庭とりわけは生活苦
厚生労働省が3年に一度行っている「国民生活基礎調査」。
2016年に報告された同調査によると、全世代の相対的貧困率(平均的な所得の半分に満たない所得しかない世帯の割合)は15.6%、18歳未満の子供の相対的貧困率は13.9%と、約6~7人に1人が「貧困世帯」となっています。
さらに、母子家庭などの大人一人で子供を育てる世帯では、50.8%と、非常に高い割合で「生活苦」を強いられているといえます。
前回調査で相対的貧困率が過去最低の割合を記録しました。そこで、政府は「子どもの貧困対策大綱」を策定し、親から子への貧困連鎖を防ぐために、教育費負担の軽減や、親の就労支援などを行うとしていましたが、現在も大きな改善には至っていません。
一方で、そういった「支援」の財源を低所得者ほど負担が長くなる「消費税10%」へ引き上げでまかなおうとしています。
これでは、貧困層の削減につながらないばかりか、低所得者の負担は増える一方です。
“市民にとことん寄り添う行政”を行う先進的な滋賀県野洲市
そんな中、滋賀県野洲市では、「ようこそ滞納していただきました条例(債権管理条例)」というものを、2016年より施行しました。
本来の趣旨は「債権管理」、いわゆる税金の滞納に対する対策として施行されたものですが、この条例には、“市民の生活レベルの底上げをしたい”という想いが込められています。
税金滞納者の中には悪質なものもありますが、ほとんどは「払いたくても払えない」という、「生活困窮者」の方々であるといいます。
そういった本当に困っている方は、朝から晩まで働きづめだったり、払えないことを恥ずかしい、申し訳ないと思うため、自ら市町村の生活相談窓口に相談に来る、ということがありません。
これまで行政では、市民が「税金を滞納している」という情報は持っていても、その方が「なぜ」滞納しているのか、というところまでは把握していませんでした。
しかし、根本的原因がわからなければ、一時的・強制的な「差し押さえ」等でその場限りしのげたとしても、継続して税金を払い続けてもらうことはできません。
野洲市長は、「税金を納めてもらう以前に、市民の生活が健全でなければならない。市民の生活を壊してまで滞納整理をするのは本末転倒」と話しており、まずは市民の生活実態を総合的に把握することが、先を見据えた安定した税収確保につながるとして、市民に寄り添った行政運営をされています。
野洲市では、この条例に先駆けて、2013年から滋賀労働局と協定を結び、生活困窮者を対象とした就労支援事業を開始しています。
ここでは、単なるお仕事の紹介にとどまらず、面接等に必要なスーツや靴の貸し出しから、履歴書の書き方、面接練習、就労先との打ち合わせ等に至るまで、きめこまやかな就労支援を行っています。
野洲市の取り組みに学び、県民に寄り添った行政!
現在、野洲市の先進的な取り組みが注目され、全国からの視察が相次いでいるそうです。
税金滞納者、貧困に陥った方々が「なぜそうなってしまったのか」を把握し、寄り添い、生活再建のための策をきめ細かく講じることが、行政の本来の仕事です。
時間はかかるかもしれませんが、それこそが生活困窮者の支援につながるとおもいます。
埼玉県もぜひ見習うべきではないでしょうか。
野洲市のように“とことん”市民に寄り添う行政を行う市町村が埼玉県内でも増えていくことを、切に願います。