「高齢者医療費、最も少ない町」埼玉県小鹿野町の保健センター視察

森真太郎町長、お時間をありがとうございました。

要望は、救急医療体制の整備

1月29日、村岡正嗣・前原かづえ両県議は埼玉県小鹿野町の保健センターを調査しました。

小鹿野町は、後期高齢者医療費が、全県の平均値を大きく下まわってきたことから、町立病院と保健センターを中心とした健康づくりや地域包括ケアが注目されてきました。

埼玉県は、2008年に小鹿野町の実地調査を行い、その特徴的な取り組みを明らかにし、その後他自治体の検証へて健康長寿プロジェクトを推進しています。

まず、小鹿野町長を訪問し、

「CSF(豚コレラ)対策について」「暖冬で観光名所氷柱が凍らず打撃を受けたことについて」など話が弾みました。

健康長寿プロジェクトの取り組みについては、町長の強い要望は二次救急医療体制の整備です。

町の二次救急医療機関は2施設しかなく、一部救命救急センターがダイレクトに受け入れてくれているとはいえ、医師不足解消が切実な課題だとのこと。

健康づくりの取り組みは重要ですが、根本的には医師不足を解消し、医療体制を整備することが急務です。

小鹿野町は人口11599人 高齢化率36.81% 江戸時代から市が立つ宿場町として栄え、県内では川越に次ぎ調整施行。歴史と伝統の街です。

町立病院など直営での運営がつよみ

場所を町立病院併設の保健センターに移し、保健課長さんはじめ、保健師の皆さんにお話を伺いました。

「直営での運営がメリットです」と課長

小鹿野町の地域包括ケアシステムと健康づくりの取り組みは町立病院と保健センター、地域包括支援センターが町営で一体に運営されていることに特徴があります。

そもそも、町で病院を運営している自治体そのものが全国でも少ないそうです。その上、町の保健課や福祉課も含めて、保健センターが病院の隣に引っ越してきて、一体運営ができるようになりました。

保健・医療・福祉が一体となって、サービスを提供することによって、医療介護の必要な人にそれぞれの職員が連携し総合的にかかわっています。

このことによって、病院に入院した時点で、退院後の生活まで見据えることができます。また、家族の困りごとにも速やかに、スピーディ―に対応することができます。

全県各地同様、地域ケア会議などで、きめ細かな意見交換が行われていますが、病院の「褥瘡対策委員会」や「緩和ケア委員会」にまで介護士やケアマネが出席するところは、珍しいことです。

小鹿野町は、この地域包括ケアと精神保健活動によって、2004年には「第56回保険文化賞」を受賞しています。

長い継続と保健師・健康運動指導士・栄養士のマンパワーが力

小鹿野町健康センターには10人(現在1人退職で9人)、健康指導士2人、栄養士がいます。保健師一人当たりの担当人口数は1169人で、県内2位の手厚い体制です。

町では昭和50年代から、町民の中から「保健補導員」を育成し、この蓄積は現在の健康サポーターに引き継がれています。

このような官民の体制で、特定健診の手渡し、地域の「ふれあい生き生きサロン」高齢者健康づくり教室、元気はつらつ教室、健康ふれあいフェスティバル、町民輪投げ大会などを展開しています。

「こじか筋力体操」は、指導に当たるボランティア100人、参加者は年間400人、延べで8000人以上が参加しています。

こうした取り組みが筋力アップなど自立した生活につながっていると同時に、交流関係がひろがるなど生きがいにもつながっています。

また、さらに、

地区別に取り組みがすすむことによって、災害時の避難行動についても話し合う機会ができ、台風19号の際にも3日前から全戸に働きかけが行われ、速やかな安否確認や避難行動につながったといいます。上郷地区では被災時に孤立地域となりましたが、事前の避難のおかげで孤立世帯は生まれませんでした。

保健師と町民の「顔のみえる関係性」

埼玉県は、健康プロジェクト計画策定にあたって小鹿野町を調査し、その特徴を

①徹底的な訪問活動

②継続する健康づくりの場の創設

③住民参加の促進

この3つの特徴を強調しています。この調査は10年前のものですが、今もその特徴が生かされ発展していることが確認されました。

強く印象に残ったのは、保健師さんたちと住民の「顔のみえる」関係性です。

「近くに用事で出かけた時、ちょっくら○○さんのところによってみようか、と、訪問することがよくある」

「車で、すれ違った高齢者と、その場で立ち話をよくする」

こうした、保健師さんと地域住民の関係の構築こそが、高齢者医療費の低さ全県1の秘密だと思いました。

「保健師は受け入れられやすい職です」という言葉も印象的でした。警察官・税金徴収事務職員などなどの中で保健師は家の中にいれてくれる存在です。こうした自覚をもって、積極的に訪問活動をすすめている保健師さん。

大都市部では、失われている活動を、どう全県に広げていくのか、埼玉県とともに挑戦していきたいと思います。

町立病院と保健センターのバスまちあい場所の椅子には毛糸で編んだ座布団がたくさん敷かれていました。大都市にはない暖かさがここにも。