(09年9月15日)
第126号議案、第131号議案乃至第134号議案に対する反対討論
議請第9号乃至第11号について、審査結果に反対し採択を求める討論
日本共産党の柳下礼子です。日本共産党を代表しまして、第126号議案、第131号議案ないし第134号議案に対する反対討論及び議請第9号ないし第11号について審査結果に反対し採択を求める討論を行います。
最初に第126号議案「市町の配置分合について」についてです。
この議案は、2010年3月23日をもって久喜市、南埼玉郡菖蒲町、北葛飾郡栗橋町及び同郡鷲宮町を合併し、新たに久喜市を設置するものですが、わが党は次の理由により反対するものです。
第一の反対理由は、関係自治体の住民から「住民投票」の実施を求める声があったにもかかわらず、調査票配布による住民意向調査の実施にとどまり、合併の是非について住民の意思が十分反映されたとは言い難いことです。特に、久喜市では自治基本条例に住民投票の規定があるにもかかわらず、これを活用せず調査票の配布による意向調査で済ませたことは極めて問題です。
第二の反対理由は、こんどの合併が住民の要求からではなく、国や県の強力なイニシアチブのもとに上から進められた合併であるということです。政府は、「三位一体改革」の名で地方交付税を大幅に削減したうえで、自治体の規模拡大で自主性や自立性を高めるという理屈で市町村合併を押しつけてきました。県がこの国の方針に追随して、市町村合併推進構想を策定し合併の組み合わせまで決めることが、どうして「自主的な」市町村合併と言えるでしょうか。
第三の反対理由は、これまでの市町村合併によって、都市と農村の格差がますます広がっている傾向にあるという問題です。
今年2月県議会の一般質問でも自民党議員から、秩父の合併においても、都市機能が秩父市の中心部に集約され、行財政改革も進んだ結果、効率性は高まったものの、旧町村部の住民からは「合併して良かったことは何一つないという話をよく耳にした」という質問が出されましたが、それが実態であります。
埼玉県町村会が県に出した要望でも、地方財政改革にあたって「財政力の弱い小さな自治体に特に配慮」を求めるとともに、「いかなる形であれ、市町村合併を強要することのないいよう十分に留意する」よう求めています。
今後の市町村合併については、これまでの市町村合併の問題点を十分検証した上で進めるべきであり、この検証を抜きに合併を推進することには賛成できません。
次に、第131号議案乃至第134号議案は関連しておりますので一括して討論を行います。
第一の反対理由は、県職員や学校職員などの給与の引き下げを行うからです。
今回の改定は、職員の給料月額を平均0.2%、期末・勤勉手当について年間支給割合を0.35月分それぞれ引き下げるものです。
この改定によって職員一人当たりの年収は16万4千円、全体では約100億円の減収となります。国家公務員と全国の都道府県で同様の引き下げが実施された場合、全国で580万人とその家族が給与削減の影響を受けるといわれています。
内需拡大策と称して、定額給付金を給付する一方で、これだけ大規模な給与削減を行うことは景気対策にも逆行するものではないでしょうか。また、民間との格差解消を理由に行われる給与引き下げが、さらに民間企業の冬季一時金支給や来年の春闘に跳ね返り、いわゆる負のスパイラルによって、景気をさらに冷え込ませる要因となることは明らかであります。
新型インフルエンザの流行など予想しえない事態の発生や職員定数の削減で、県の職員の仕事量が増え責任が重くなる一方で、この10年間に職員の年収は約90万円も引き下げられています。知事は「県民の役に立っていると実感する、このことが一番だ」と答弁されていますが、そのような精神論には限度があります。精神疾患による長期休職者が増加している現状に真剣に目を向け、職員の処遇改善に努めることこそが、県民へのサービス向上につながるのではないでしょうか。
第二の反対理由は、持ち家にかかる住居手当を廃止するためであります。
住居手当については公務員の自宅の維持管理費を補てんする趣旨で昭和49年に設けられたものです。国家公務員の住居手当はすでに平成15年に大幅に要件を狭められた結果、受給率が9%にとどまり、今回の人勧では廃止が勧告されました。国家公務員は全国への転勤を常としており、そのため官舎も4割整備されております。これに引き替え埼玉県職員の手当受給率は43%と高く、2年間の経過措置があるとはいえ、職員の受ける影響は国家公務員の比ではありません。
さいたま市や神奈川県の人事委員会が、国家公務員と地方公務員とでは置かれている状況が異なるとして廃止を見送ったり、京都府や奈良県の人事委員会のようにわずかの削減にとどめたのは、独立した行政委員会としての見識のある措置だといえます。
民間で手当を支給しない企業が支給企業を上回ったことが廃止の理由にされていますが、支給しない企業が50.1%で、支給している企業の49.9%をわずかに上回ったに過ぎません。このような状況で県職員の住居手当を廃止すれば、民間企業の手当廃止の呼び水となりかねません。
以上の理由から第131号議案乃至第134号議案については反対するものです。
次に請願の討論に移ります。
まず議請第9号「消費税の増税を行わないよう求める請願」は、委員長報告では「現行の消費税5%は据え置くこととし税率引き上げは行わない旨三党連立政権の合意がなされている」ことを理由に不採択としていますが、わが党は採択を求めます。
財界は今も繰り返し消費税の増税を要望しており、民主党政権内にも「消費税の議論は必要」という発言が後を絶ちません。政権合意であるから絶対増税しないとする根拠はどこにもなく、消費税を上げないでほしいという請願者の切実な願いを受けとめ、速やかに意見書を国に対してあげるべきと考えます。
次に議請第10号「県政調査費について領収書全面添付を求める請願」について、委員長報告は不採択でありますが、わが党は採択を求めます。
委員長報告では「領収書等証拠書類の提出を要しないのは、…あくまで会派の自主的な調査研究活動に支障を及ぼす恐れがある場合にかぎっており…本規定は妥当と考える」として不採択の理由にしておりますが、本県と茨城県を除く全国の都道府県議会が領収証全面添付に踏み出しております。しかし、これによって政党の自主性を犯す事例や調査研究に支障を及ぼす前例が生まれたという話しは全く聞かれません。「会派の自主性を脅かすのではないか」などという杞憂(きゆう)より、県民への説明責任を果たすという県会議員としての責務の方がはるかに重いと考えます。
よって本請願については採択を主張します。
次に議請第11号「八ッ場ダムの建設を中止し、地元住民の生活再建と地域再生のための対策を求める意見書を国に提出して下さい」について、審査結果は不採択でありますが、わが党は採択を求めるものであります。
住民や関係自治体に対する事前の説明もないまま、「マニフェストに書いてあるから中止します」と述べた新政権の対応は、あまりにもダム建設予定地の住民感情や関係都県などへの配慮を欠いたもので、このこと自体は厳しく批判されなければなりません。
そのことを指摘した上で、わが党は八ッ場ダムについては請願理由でも述べられているように、利水面からも治水面からもその必要性がなく、中止すべきであると考えます。
まず利水面でありますが、平成15年と19年の二度にわたって長期水需給見通しを下方修正を余儀なくされているように、人口の増加にもかかわらず水の需要が下降線の一途をたどっています。平成19年の「長期水需給見通し」でも将来人口は平成22年度、つまり来年度をピークに緩やかな減少傾向に移行し、目標年度の平成27年度には700万人を割ると予測しています。こうした水需要減少の原因はいくつか考えられますが、事業所等における水の循環利用や家庭における節水型機器の普及、漏水防止対策などが進んだ結果と考えられます。これは本県に限らず首都圏に共通する傾向であり、お隣の東京では1日当たり200万トンの余剰水源をもっているのが現状です。
ダム建設を合理化する理由の一つとして、本県の暫定水利権をあげる議論が盛んですが、本県は農業用水合理化事業にこれまで総額2,160億円、企業局だけでも903億円にのぼる多額の事業費を投入し、毎秒10.9立法メートルの都市用水を開発しています。この農業用水の転換水を暫定水利権ではなく安定水利権として認めさせることができれば、八ッ場ダムの必要性は失われるのであります。
平成16年2月県議会で、当時のわが党の山岸昭子議員が農業用水の転換水を安定水利権として国に認めさせるべきだと質問したのを知事はご存知かと思います。その時、知事は「各都道府県は要望してまいりましたが、河川管理の一元的な、ある意味での管理権を持つ国が、この点については全く微動もしない硬い態度でおります。そういう意味では残念ですが、どうにもならないという状況であります」とお答えになっています。
その国が民主党政権に替わって八ッ場ダムの中止を決めたわけですから、ダム建設に固執するのではなく、水利権の見直しを国に迫るというのが県としてまずとるべき態度ではないでしょうか。
次に治水面での効果であります。
1952年に八ッ場ダムの建設構想が持ち上がったのは、カスリーン台風級の再来に備えるため、利根川の上流に洪水調節を行う必要があるということでした。1980年に策定された利根川水系工事実施基本計画では、群馬県伊勢崎市の八斗島(やったじま)地点のカスリーン台風の再来流量をそれまでの毎秒1万7,000立法メートルから毎秒2万2,000立法メートルに引き上げるとともに、この毎秒2万2,000立法メートルに対応するために八ッ場ダムなどが必要だという根拠にされてきました。2006年に策定された河川整備基本方針では、毎秒2万2,000立法メートルのうち、5,500立法メートルを上流ダム等で調節し、残りの1万6,500立法メートルを河川改修で対応するとなっています。
しかし、国の計算によれば、八ッ場ダムを含めても利根川上流のダムによる洪水ピーク時の流量削減効果は毎秒1,600立法メートルに過ぎません。残りの3,900立法メートルはこれからつくる新規のダム群で対応しなければなりませんが、そのためには新たなダムを十数基もつくらなければなりません。しかし、利根川上流で新たなダム建設計画はあるでしょうか。
委員長報告では、「八ッ場ダムは利根川上流のダムでは、洪水調節容量が最大であり、治水効果が大きい」と述べられていますが、わが党の塩川鉄也衆議院議員が2005年2月に行った衆議院予算特別委員会で、カスリン台風と同等の降雨災害による八ッ場ダムの治水効果について国交省を質したところ、国交省は「治水効果はゼロである」と答えています。他の洪水でも八ッ場ダムの治水効果はわずかでしかなく、もともと建設予定地の吾妻川流域が深い渓谷となって天然のダムの役割を果たしています。
また、八ッ場ダムの建設に固執することは、本来優先すべき堤防の強化といった河川改修などを遅らせる要因にもなっております。この際、治水対策の基本をダム建設から本来の河川改修に重点を置くべきであり、以上、今や八ッ場ダムは利水・治水の両面でその必要性が失われてきていることを述べましたが、八ッ場ダム建設については、これ以外にも、美しい吾妻渓谷の喪失、貴重生物の消滅、ダム湖の水質悪化、地滑りの発生など様々な問題が指摘されています。
最後に地元住民の生活再建と地域振興についてですが、歴代自民党政権によるダム建設の押し付けによって、長年にわたって翻弄されてきた水没地区住民の苦難は想像しがたいものがあります。長い反対運動の末、ダム建設の受け入れを苦渋の上決断し、一刻も早い地域再建を願ってきた住民にとって、再び国の政策の変更によって暮らしが左右されることに怒りと不安の声があがるのは当然のことであります。
従っていま政府に求められているのは、八ッ場ダム建設中止に至った理由や科学的根拠を十分説明して地域住民の合意形成をはかるとともに、生活再建のための物心両面の支援措置、衰退した地域の基幹産業を再生させるための支援プログラムの作成など、地域再生にむけた様々な取組を関係自治体と協力しながら進めていくことであります。
ダム湖なしには生活再建はあり得ないというのが自民党などの主張でありますが、住民にとって一番の願いは「とにかく早く終わらせてほしい」ということです。しかし、現状ではダム建設を進めるとしても、新駅予定地周辺の土地が未買収であることや付け替え国道用地の地盤が脆弱で工事が遅れていることなどから、ダムの完成は2015年度より大分先になることは確実であります。
ダム湖が観光資源となって地域の活気を取りもどす可能性は低く、むしろ吾妻渓谷などの自然を観光資源として生かして地域再生を図ることこそが現実的であり、住民の生活再建の近道でもあると考えるものです。
以上、申し上げた理由により、議請第11号について採択を求め私の討論を終わります。