○保健医療部関係
柳下委員
(1)第130号議案の原爆障害者対策費について、原爆症の認定基準が緩和されたとのことだが、どのように変更されたのか。
(2)原爆症の認定を受けた被爆者に対しては、医療特別手当が支給されるが、認定の申請をしてもまだ結果が出ていない人たちが全国で7,000人を超えている。申請者には、がんなどを患い、不安を抱きながら生活している人も多く、大きな問題である。
そこで質問するが、埼玉県では、申請して保留になっている人は何人いるのか。また、そのうち亡くなった人は何人いるのか。さらに、最も長く待たされている人の期間は、どのくらいになるのか。
(3)原爆症の認定を申請している最中に亡くなった人や病気が重くなった人もおり、胸が痛む。厚生労働省は早期に体制を整備し、審査を進めるべきと考えるが、これまで県として国に対し、どのような働き掛けをしてきたのか。また、審査が遅れている理由について明らかにしてもらいたい。
(4)原爆症の認定に関し、7,000人もの被爆者が待たされている現状に対して、都道府県に認定の権限を移譲すべきとの話もあ る。医療特別手当の支給もあるので、1日も早く認定してほしいという被爆者からの願いを、県としてどのように受け止めてきたのか。今後の方針を明らかにしてもらいたい。
(5)食品衛生検査費について、東京都と埼玉県が、国から加工食品中の残留農薬等試験法開発事業の委託を受けているとのことであるが、埼玉県の衛生研究所は全国的にどのような役割を果たしているのか。
また、衛生研究所の施設は老朽化しているが、旧吉見高校を移転先に予定しているとの話もある。町内に1校しかない吉見中学もマンモス校となっており、地元では旧吉見高校を利用したいとの希望もあるようである。レベルも高く、先進的な役割を果たしてきた衛生研究所について、職員体制の強化や施設の建替えなどを行う必要があると思うが、県としての考えを明らかにしてもらいたい。
(6)看護師離職防止施設整備費補助について、病院内保育所施設整備費の中身と対象となる場所について説明を願う。
また、病院内保育施設はもっと増やすべきと考えるが、現状と今後の見通しはどうか。
さらに、女性医師の定着を図るためには、働く環境の整備などが考えられるが、今年、日本女医会埼玉支部では、女性医師の勤務環境の改善に関するパネルディスカッションを行い、県にも報告を行っていると思う。その中に、女性医師へのアンケート報告があると思うが、小児科医の確保や女性医師の働きやすい環境整備など、本県の行政施策に生かしていけるものがないか明らかにしてもらいたい。
(7)第138号議案について、埼玉県立大学に新たに設置する大学院は、どのような人を対象とするのか。また、所在地は越谷であるが、授業を受ける場所や時間について、どのような構想を持っているのか。
疾病対策課長
(1)これまでの基準では、爆心地からの距離や被爆した可能性のある時間等を一人一人個別に計算し、その結果、がんなどの病気が被爆により発病した確率が10%以上あると認められた場合に認定を行っていた。今回の基準緩和により、爆心地から約3.5km以内で被爆したか、又は原爆投下から100時間以内に2km以内に立ち入った場合等で、がん、白血病、副甲状腺機能障害など特定の疾患にかかった人については、積極的に原爆症と認定するよう変更されたものである。
(2)医療特別手当を申請して保留になっている人の数は55人であり、そのうち3人が既に亡くなっている。また、最も長く待っているのは、平成18年5月1日に申請した人で、その期間は2年7か月である。
(3)原爆症の認定は、厚生労働大臣が行うことになっており、国の責任と権限で行われるものである。都道府県知事は、法定受託事務として書類の経由を行っている。県としては、一刻も早く申請が認められるよう、少なくとも1週間以内に国に届けているほか、手続や書類に関する相談に迅速に対応している。また、申請の状況がどのようになっているかを、個別の事例ごとに確認して、必要に応じて申請者に情報提供できるよう努めている。
次に、審査が遅れている理由についてであるが、国から聞いた話によると、全国における原爆症の認定件数は、平成17年度が230件、平成18年度が124件、平成19年度が128件であるのに対し、平成20年度は既に1,615件となっている。このように申請件数が増加している中で、審査体制が追い付いていないことが理由になっていると推察するものである。
(4)権限を県に移すというような話は、被爆者の団体からも国からも聞いていないので、状況を見ながら適切な判断を行っていきたい。
食品安全課長
(5)本県の衛生研究所の理化学検査の担当者には、国の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会の食品添加物部会や器具・容器包装部会の委員を務めている職員がいる。このように高い知識を持った職員がいるので、試験法の開発に参加して、十分な貢献ができるものと考えている。
(5)各保健所の試験検査室を衛生研究所に集約し、機能強化を図ってきた。現在、衛生研究所は約80人の人員を要しており、全国的にも高いレベルの試験検査を行っている。指摘のとおり、ハード面では昭和47年に建てられた施設の老朽化が進んでいる。また、さいたま市が、すぐ近隣に市としての衛生研究所の機能を持った施設を設置したこともあり、今後、衛生研究所をどのようにしていくかについて、財政難の折りでもあるので様々な工夫ができないか内部で検討しているところである。
(7)埼玉県立大学大学院では、専修として「看護の部門」、「リハビリテーションの部門」、保健福祉医療の連携を図る「健康福祉科学の部門」の3部門で、20人の定員を予定している。大学院の大きな特徴として、社会人を対象としたリカレント教育を行いたいと考えている。このための工夫として、平日夜間の午後6時から午後9時10分まで、これは6時限と7時限に当たるが授業を 行うこととしている。そして、大学の学部が開講していない土曜日にも、社会人を対象に講義を行う予定である。
また、場所については、越谷では不便だという人もいるので、サテライトの教室として、北浦和の中央病院の一角に県が持っている看護実習の施設を改修し、講義室や実習施設として使用するなどの工夫をしていきたい。
医療整備課長
(6)病院内保育所施設整備費は、国の経済対策の一環として、老朽化した院内保育施設の建替えを進めるため新規に認められたものである。病院に照会したところ、さいたま市北区の医療法人が運営している病床数266床の病院から希望があったので、補助しようとするものである。
院内保育については、平成20年6月時点で158病院が実施しており、県全体では44%の実施率である。看護師の新規養成が難しい中、離職防止・定着促進が大変重要であるので、一生懸命取り組んでいきたい。
また、今年の7月6日には日本女医会埼玉支部の創立50周年記念のディスカッションがあり、県からもパネリストとして参加させてもらった。この中で、女医会のアンケートについて報告があり、仕事と育児の両立や子育て支援に対する要望等が紹介された。女性医師は増えており、これから大きな役割を担ってもらわなければならない。女性医師が働き続けられるための支援や、環境整備を検討していきたい。
柳下委員
女性医師を支援するために、アンケートの実施やパネルディスカッションの開催など、県で取り組んでいることはないのか。
医療整備課長
県では、女性医師対策として、県内の病院にアンケート調査を実施し、600人を超える女性医師から回答をもらっている。現在分析中であり、その結果を踏まえて十分検討していきたい。
柳下委員
アンケートの分析結果は、いつ頃出るのか。
医療整備課長
年明けには、数値としてまとめたいと考えている。
○保健医療部及び病院局関係(行政課題報告)
柳下委員
資料4について、公立大学法人の特徴の2点目に「法人の職員は非公務員であること」とある。今まで公務員であった職員が公務員でなくなるわけであり、職員の今後に関わる問題である。きちっと職員と話し合い、合意していくことが必要と考えるがどうか。
保健医療政策課長
県の内部で公立大学法人化についての推進会議を設置するとともに、大学側でも職員の今後の給与制度の在り方等についての分科会を設けて検討している。なお、非公務員になっても、保険、年金については、引き続き共済組合の組合員として制度にとどまることが法律で定められており、そのような特別な扱いがされている。
○福祉部関係(行政課題報告)
柳下委員
高齢者支援計画(案)骨子の施策体系のうち、基本目標の4番目に「安定的で安心して利用できる介護保険制度の運営」が掲げられている。このための施策として「介護サービス事業者に対する指導・監査の充実」を挙げているが、福祉施設の職員の処遇改善を図ることが、介護の現場で介護労働者が誇りを持って仕事を続けていくためにも重要と考える。新聞等で報道されているが、新座市にある特別養護老人ホーム、デイケアセンター、ショートステイ、地域包括支援センターの「菜々の郷」において、行っていない機能訓練の保険請求をしているという通報が県と私ども双方にあった。県の福祉施設監査課が特別監査を実施したが、この結果、機能訓練だけでなく、記録がない入浴サービスについても請求が行われていたことが明らかになった。この施設について270万円の返還が決定されたが、この点についてどのような状況だったのか答弁してもらいたい。資料3の計画の趣旨においても、「これまでの施策の実施状況等を踏まえ」とされていることから、この件についても詳細を明らかにしてもらいたい。
また、施設を退職した元職員が、12月12日に埼玉地方裁判所に提訴したが、この訴状によると、昨年の開設以来、90人余りの職員が退職したということで、慢性的な人手不足があり、残業が日常的に行われていたことが分かる。職場にはタイムカードもなく、手書きの勤務表を使って責任者が署名する仕組みにしていたとのことだが、県はタイムカードの導入や、適正な労働時間の管理、パワーハラスメントの防止など、職員の処遇改善上の指導を徹底していく必要があると考えるが、この点を明らかにしてもらいたい。
委員長
発言の途中であるが、柳下委員に申し上げる。個別具体的な事案についての質問は差し控えていただきたい。あくまでも計画(案)の骨子であり、マクロ的な視点で質問をしてもらいたい。
柳下委員
計画の趣旨に、「これまでの施策の実施状況や医療制度改革に伴う療養病床の再編などの課題を踏まえ、現行計画を見直すこととした」とある。指導・監査の充実が大きな問題になっており、監査対象を増やすだけでなく、中身を充実させるために質問をしている。
委員長
個別具体的な指導については、答弁で触れられない場合もあるので了承願う。
柳下委員
社会福祉法人が労働者に対する処遇の改善を行い、職員が定着することで介護サービスの向上を図るという観点から質問をしている。これを施策に生かしてもらいたいということであり、次の質問に移らせてもらう。
新座市議会でも問題とされ、市長も県の監査の問題であると答弁しているが、「菜々の郷」の上部組織は湖山医療福祉グループであり、北は北海道から南は島根県まで282の事業所を運営し、4,300人の職員を有する巨大グループである。埼玉県でも新座市と草加市に施設があり、今後も施設の開設が予定されているはずである。草加でも「菜々の郷」と同様に手書きの勤務表が使われており、同グループに共通する労務管理の手法と考えるが、施設の開設に当たっては職員の処遇に十分留意して許可すべきである。この点も含めて答弁願う。
また、監査対象事業所数については、平成19年度実績は23事業所であるが、同計画の目標として、これを平成23年度には2,946事業所まで増やしていくとのことだが、どのような姿勢で取り組んでいくのか、併せて答弁願う。
福祉部長
県では平成18年度に監査指導室を廃止し、福祉監査施設課を新設した。苦情等への機動的・迅速的な対応を図るため、特別調査担当3人を設置したところである。これにより、苦情受理から2日以内に調査に着手し、苦情者の立場に立った対応に取り組んでいる。さらに、平成19年度は、特に問題のある法人に対して、事業担当課と密接な連携を図り、強力に指導を行うため、特別指導担当も設置している。このような体制整備を図り、福祉施設監査課と部内の事業担当課が一体となって対処しているところである。
また、監査指導のポイントとしては、苦情・通報への迅速な対応、事業者の視線に立った指導・監査、法人指導の強化、公正透明な運営の確保、メリハリのある指導監査等を通じて、今後も監査・指導を充実していきたい。
柳下委員
監査の詳細について、部長が無理なら課長から説明してもらいたい。
委員長
個別の案件については、議員の個人的な調査の範囲と考える。
柳下委員
個別な事例を通じて、それを教訓として今後どのように高齢者支援を行っていくのかということであり、委員会で質問しても問題ないと考える。
委員長
個別の内容はともかく、適正に行われていたか否かについてのみ答弁願う。
福祉施設監査課長
一般県民から5月、6月、8月に苦情が寄せられた。施設監査課では、苦情や要望があれば、迅速に対応し、現地を調査することとしている。この3件に関しては、現地調査を行い、施設に対して必要な指導を行った。また、特別養護老人ホーム及びそれに付随するショートステイやデイサービス等についても、必ず毎年1回、監査を行うこととしており、2年に1度は実地で監査を行っている。そのため、9月には改めて一般監査を行い、運営指導についても実施したところである。計画にあるとおり、社会福祉施設の指導・監査の充実に努めていきたい。
柳下委員
全般的に職員が定着しないという問題がある。パワーハラスメントをするような施設長では問題がある。職員が生き生きと誇りを持って働けることで、施設の利用者も良いサービスが受けられる。このような問題に対し、県としても指導を強化していく必要があると考えるがどうか。
福祉部長
介護施設における人材の定着は大きな課題である。これは、監査だけで解決できるものではないので、国の動向を注視しながら、福祉部を挙げて取り組んでいきたい。