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山川すみえの一般質問(全文)

 (2008年12月9日)

 

〔質問項目〕

 1 金融危機による不況から県内中小企業と雇用を守る対策について (知事、産業労働部長、橋本副知事)
 2 西部地域障害者雇用支援センターの廃止について (知事)
 3 国民健康保険の資格証明書等交付について (知事)
 4 小児救急医療体制の整備について (知事、保健医療部長、病院事業管理者)
 5 保育施設「ハッピースマイル」閉鎖と保育所への企業参入問題について (福祉部長)
 6 定時制高校等の教科書給与・夜食費補助制度の存続について (知事、教育長)
 7 県営住宅の家賃減免制度の見直し及び入居承継等の問題について (知事、都市整備部長)
 8 治水効果に乏しい八ッ場ダム建設については事業の中止を (知事)

 

〔質疑・答弁〕

 

金融危機による不況から県内中小企業と雇用を守る対策について

 

Q 山川すみえ議員

 12月に入って寒い日が続き、本格的な冬の到来が迫ってまいりました。こうした中、アメリカ発の金融危機に端を発した急速な景気悪化によって、中小企業の相次ぐ倒産と大量の失業の危険が現実化しつつあり、派遣労働者など非正規雇用労働者の派遣止めなどの事態が全国で広がっています。カジノ資本主義によってつくられた景気悪化のツケを国民に回すようなことは、絶対にあってはなりません。県民生活を守るための緊急の手だてとして、(1)大企業などの大量の首切りをやめさせ雇用を守る取り組みや、(2)中小企業の資金繰りと仕事の確保を最優先した取り組みが求められていると考えますが、まず、知事の見解を求めます。
 私は先日、塩川鉄也衆議院議員とともに川口市内の中小企業を訪ねて事情をお聞きしてまいりましたが、どの企業も、原油、資材高を価格に転嫁できず、売上げ、利益とも大幅に減らしているのが現状です。特に中小企業対策で緊急に求められているのは、資金繰りの改善です。県が行った直近の四半期経営動向調査でも、前期に比べて「資金繰りが良くなった」という企業はわずか4.1パーセント、「悪くなった」と答えた企業は46.4パーセントに上っています。資金繰り悪化の要因は、売り上げの減少、原油、原材料価格などの上昇による仕入価格の高騰、下請単価の切下げ、金融機関の貸し渋りなどが考えられますが、こうした中小零細企業を救済するには、中小企業が融資を受けやすい環境を整えるとともに、下請二法の厳格な適用や仕事の確保などの緊急対策が求められています。
 そこで伺いますが、第一に、販売不振や急激な円高などを口実にした大企業による下請中小企業に対する強引な単価の切下げなどに対して、監視や行政指導を強化すべきではないでしょうか。
 第二に、県の制度融資については、据置期間や返済期間を延長して月々の返済の負担を軽減するとともに、県保証協会に対する出えん金を増額して、積極的な保証ができるよう経営基盤の強化を図るべきです。また、税金を滞納している業者であっても、返済の見通しがある場合や税務署から納税猶予を受けているような場合には保証を実行するよう、弾力的な運用を協会に働き掛けるべきではないでしょうか。
 以上2点について、産業労働部長よりお答えください。
 第三は、仕事確保対策です。県は、今回の補正予算に、道路、街路などの公共事業費を計上していますが、こうした土木事業中心ではなく、県民生活の安定にも寄与でき、経済波及効果も大きい、例えば住宅建設や学校、福祉施設などの耐震化といった中小業者にも仕事が回るような事業に力を入れるべきです。特に住宅については、市町村と連携しながら中小企業や県民からの要望の強い住宅の耐震補強、リフォームに対する助成を行い、仕事を増やしてはどうでしょうか。県の方針について、橋本副知事よりお答えください。
 次に、雇用の確保についてです。
 今、自動車産業をはじめとして大企業が派遣社員や期間社員などの非正規労働者を大量に解雇する計画を次々と発表し、派遣切り、雇い止めの嵐が吹き荒れています。埼玉でも、ホンダ狭山工場では期間従業員270人の契約を12月末で打ち切り、日産ディーゼル上尾工場も派遣社員200人を12月20日付けで雇止め、曙ブレーキ岩槻工場では派遣社員190人に12月20日付けで解雇する予告通告を出しています。県が約9億6,400万円の補助金を用意して本社機能を誘致したカルソニックカンセイでも、吉見工場や児玉工場の派遣社員を既に4割削減したと新聞で報じられています。期間社員や派遣社員の多くは東北地方などから出てきて、企業が用意した寮やアパートに住みついて働いています。職を失うということは、住居を失うことに直結し、家具もなく、田舎に帰省する費用もないまま、年の瀬の寒空にほうり出されることになるんです。労働者を景気の調整弁として物のように使い捨てることは、非正規労働者にも適用されるべき雇用のルールを破壊するものであり、非正規という理由だけで許されるべきものではないと考えますが、知事はどうお考えでしょうか。
 また、県内大企業における派遣労働者や期間労働者の雇い止めなどの実態については、県はどこまで把握していますか。把握していないとすれば、直ちに企業訪問を行うなどして把握し、幹部を先頭に、継続雇用を企業に働き掛けるべきではないでしょうか。産業労働部長よりお答えください。
 今、大企業は首切りをしなければつぶれるという状況ではありません。数十億から数百億もの経常利益を上げ、株主配当は確実に確保しています。本田技研は今年、第2・四半期で1株22円の配当を決め、約400億円を計上しています。曙ブレーキも約1億1千万株に10円、総額10億円の配当を決めています。大量の失業者を路頭に迷わせるような人員削減を強行する根拠は全くありません。
 労働契約法は、その第17条で「使用者は、期間の定めのある労働契約については、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することはできない」と定めています。したがって、県内の派遣労働者や期間労働者などに対する解雇については、その適法性について十分精査し、法違反に対しては厳正に対処すべきであります。埼玉労働局とも連携をとりながら、企業への監督、指導を強化すべきであります。
 また、解雇を余儀なくされた派遣社員や期間社員を路頭に迷わすことがないよう、次の派遣先が決まるまで寮などに住み続けられるようにすることや、再就職について最後まで責任を持つこと、3年を越えて派遣された労働者については直ちに直接雇用することなどを、派遣先及び派遣元の会社に申し出るなどの対策をとるべきと考えますが、産業労働部長よりお答えください。
 最後に、知事に伺いますが、カルソニックカンセイの派遣社員の削減に対しては、県として厳しく対処すべきではないでしょうか。同社の誘致は雇用の拡大にもつながるとして県民の税金を投入するわけですから、補助金の凍結も含めた断固たる姿勢で雇用の確保を迫るべきであります。

 

A 上田清司 知事

 まず、「金融危機による不況から県内中小企業と雇用を守る対策について」のお尋ねのうち、雇用を守る取り組みや中小企業の資金繰りと仕事の確保の取り組み及び非正規労働者の雇用についてでございますが、この問題は大変悩ましい問題であります。
 急激な景気の悪化に伴い、企業は売上げの減少など厳しい経営環境にございます。
 経営に支障が出るほどの雇用を抱きかかえ、結果として企業の存続ができないようであれば、それは、企業としての社会的責任を果たせないことになってしまいます。
 一方、大企業において派遣労働者などの非正規労働者の雇用を打ち切られるという事態も極めて残念で、本当に痛ましいものだと思います。
 企業にはできるだけ雇用の維持に努めていただきたい。これが、基本的な考え方であります。
 しかし、企業にとって、経営上の問題でありますので、知事という立場の中で、ああせい、こうせいというのは、なかなか難しい問題なのかなと思っております。
 問題はこうした厳しい雇用・経済状況を踏まえて、県としてですね、どんなにしたら雇用の維持や確保あるいは中小企業のですね、支援につながるような対策がとれるのかどうか、このことがむしろ問われているというふうに私は思っておりますので、従って、11月25日には緊急経済対策本部を設置して、全庁をあげて、さまざまな取り組みをやろうというふうに決意したところでもございます。
 もともと本県の制度融資が充実しているのは、山川議員も御承知のとおりだと思いますが、それにも関わらずですね、もっと資金繰りがうまくいくようにということで、経営安定資金の対象を9月8日から全業種に拡大をしておりますし、1月以降もこの措置についても延長を決めたところでもございます。
 また、中小企業の仕事を確保するために、例えば、用地費を工事費に振り替えることで工事発注量を増加させ、県内事業者に行き渡るいわゆる「真水」を増やす工夫もしておるところです。
 こうした取り組みが少しでも雇用の維持確保につながるのではないかというふうに考えております。
 次に、カルソニックカンセイに対する補助金についてでございます。
 カルソニックカンセイへの補助金は、本県経済の活性化、雇用の創出、税収の確保に大いに貢献することから制度化したものでございます。
 そもそも補助金は本社・研究開発センターに対して出したものでありまして、工場に対して出したものではございませんので、そういう意味で、補助金の交付対象と別のことを言われても困るなというふうに思っております。御理解を賜りたいと思います。
 一般に日本の企業は、いたずらにレイオフをしないというのが、私は、日本がこれまで築いてきた企業文化だと思っておりますので、県内の企業には、会社の存続を前提に、できるだけ雇用の維持・確保に努めていただきたいということを議場を通じても申し上げたいというふうに思います。

 

A 浅賀康夫 産業労働部長

 まず、下請取引の適正化についてでございます。
 下請取引の適正化のため、本年4月に中小企業振興公社に「下請かけこみ寺」を設置し、下請に関するさまざまな相談に応じております。
 また、買いたたきや支払いの引き延ばしなどが生じないよう弁護士相談や講習会、適正取引推進のためのガイドラインの説明会を行っています。
 今後とも、企業訪問などあらゆる機会を捉えて話を伺い、下請法違反の疑いがある場合には、下請企業の意向を十分に尊重した上で、取締機関である公正取引委員会や中小企業庁につなげて解決を図ってまいります。
 次に、県制度融資について、据え置き期間や返済期間を延長すべきについてであります。本年度新たに500億円の融資枠で借換資金を設け、既存借入金の月々の返済の軽減策を講じたところでございます。
 平成20年10月末現在、73億8,000万円の融資実績となっております。
 また、埼玉県信用保証協会に対する出えん金についてですが、協会には、平成20年3月末現在、501億9,000万円の基本財産と111億7,300万円の収支差額変動準備金が積み立てられ、経営基盤は極めて安定しており、保証枠にも十分余裕がございます。
 このため、現時点では出えんの必要性は薄いものと考えております。
 次に弾力的な運用を信用保証協会に働き掛けるべきについてですが、国からの指導もあり、税金の滞納など償還能力に疑問のある事業者への新規の保証は困難であります。
 なお、税務署からも分納が認められ、短期間に確実に完納が見込まれる場合には、実態に即して個別の審査を行っていると承知しておりますが、御質問の趣旨を踏まえ、改めて協会に要請してまいります。
 次に、「雇い止め」などの実態把握についてですが、現在、国では労働者派遣契約の契約期間満了に伴う契約の不更新や契約解除の情報収集を行っております。
 県としても、情報収集に努めてはおりますが、個別の企業の実態までは、把握することは困難であります。
 今後も埼玉労働局と情報交換を行うなど情報収集に努めてまいります。
 継続雇用を働きかけることにつきましては、企業経営上の問題でもありますので、個々の企業に対して要請することは難しいと考えております。
 次に、企業への監督指導の強化及び派遣先及び派遣元の会社への申し入れなどの対策についてですが、企業が労働契約法をはじめ労働法令を遵守しなければならないことは当然のことであると思っております。
 県といたしましては、労働者派遣事業の適正な運営を図るための指導監督の強化を国に対し要望してきたところでありますが、今後は、解雇や雇い止め等に対する事業主への指導監督を一層強化するよう要請してまいります。
 また、国では派遣元及び派遣先双方に対して、雇用の安定を図るための措置を講じるよう指導を徹底するとしております。
 こうした中で、今後、県としては、埼玉労働局と連携し、県内経済団体等に対して雇用の維持等を要請してまいりたいと考えております。

 

A 橋本光男 副知事

 「金融危機による不況から県内中小企業と雇用を守る対策について」のうち、仕事確保対策についてお答えを申し上げます。
 経済状況が悪化し、県民生活への影響が深刻化する中、官民が一体となって仕事の確保につながる事業を創出することが重要であると考えております。
 道路や街路事業などの公共事業も大きなインパクトになりますが、住宅建設も非常に経済波及効果の大きな事業であります。
 例えば県営住宅の建替えや民間賃貸住宅を県営住宅として借り上げることは、民間の経済活動を誘発する上で、大変有効なものとなっております。
 県といたしましては引き続き、これらの建設推進による事業量の確保に努めてまいります。
 また、学校や福祉施設などの耐震改修工事も大きな波及効果が見込まれる事業でございます。
 そこで、県立学校の耐震化をさらに進めるとともに、民間の学校や福祉施設など、多数の人々が利用する建築物の耐震化を支援するため、昨年度新たな補助制度を創設いたしました。今年度はさらにその支給対象範囲を拡大したところでございます。
 次に、住宅につきましては、耐震補強について19の市町で、リフォームについて32の市町で助成制度が設けられております。
 県といたしましても、建築審査会などと協力した無料耐震診断の実施や、県内民間金融機関と連携した「耐震・安心リフォームローン」も制度化するなど、耐震補強工事やリフォームなどによる民間需要の拡大を図っております。
 今後とも、市町村や民間と連携し、中小企業の仕事拡大につながる取り組みの強化に努めてまいります。

 

西部地域障害者雇用支援センターの廃止について

 

Q 山川すみえ議員

 川越市にある西部地域障害者雇用支援センターは、社団法人雇用開発協会が雇用納付金による国の補助や、県、近隣8市の補助によって運営している、障害者の職業準備訓練から就職、職場定着に至るまでの相談、援助を行っている施設です。平成7年から300人以上の訓練生を受け入れ、うち140人が民間企業に一般就労するなど、高い実績を誇っています。熱心な指導と就労後の元訓練生への相談業務が事業主さんにも好評で、就労継続の力となってきました。
 ところが、昨年度この施設を自立支援法の就労移行支援事業に移行するよう埼玉労働局が雇用開発協会に働き掛けたところ、埼玉の協会は労働局と協議の上、全国で唯一、センターの廃止を決定してしまいました。元訓練生の方から知事にも手紙で訴えがあったと思いますが、在校生はもちろん、卒業生からも、なくさないでほしいという訴えが出ています。労働局に対して、県は「既に周辺の障害者就労移行支援施設は整備されつつある」と答えたということですが、市町村ごとに設置する就労支援センターは、雇用支援センターのエリア内では半分の市町にしか設置されていません。しかも、設置されているところでも、机が置いてあるだけの開店休業状態のセンターもあります。圏域ごとに設置する障害者就業・生活支援センターは、この圏域ではまだ設置の見通しが立っていません。雇用支援センターだけが廃止が決まり、既に募集を停止しています。
 そこで、知事に伺いますが、障害者の就労が遅れ、就業支援のための施設も不十分な中で、なぜ雇用支援センターの廃止が決定されたのでしょうか。仮に雇用開発協会の強い意向だったとしても、移行期限の平成21年までぎりぎり存続させるという方策はなかったのでしょうか。障害者就業・生活支援センター整備のめどがたってから募集停止というのが本来の手順ではないかと考えますが、お答えください。
 ところで、知事は、支援センターをなくさないでという障害者の手紙に対して、責任を持って受け入れ先を見つけると約束されたと聞いております。訓練生にとどまらず、卒業生たちからも、解雇やいじめといった様々な相談が雇用支援センターにも寄せられるといいます。一刻も早く、300人を超える卒業生たちの受け皿となる施設を確保できるようにしていただきたいと思いますが、県の方針について明らかにしてください。

 

A 上田清司 知事

 この雇用支援センターは、障害者が職業生活での自立を図るため、職場での基本的なルールを身につけるなど職業準備訓練を行う施設として平成7年に国が設置したものでございます。
 従いまして、この雇用支援センターの廃止についての意思決定は、基本的には国が行ったものであるということについて御理解を賜りたいと思います。
 従いまして、この問題は、出来ましたら本県選出の共産党所属の塩川鉄也議員に国会で質問していただくのが筋ではないかなというふうに考えております。
 でも、ご質問ですので、お答えはいたします。
 なぜ雇用支援センターの廃止が決定されたかについてでございますが、平成18年に障害者自立支援法が施行され、全国の障害者雇用支援センターは、一般企業への就労を希望する障害者の職業準備訓練を行う「就労移行支援事業」への転換が求められました。
 運営主体であります社団法人埼玉県雇用開発協会が、この雇用支援センターの運営について総合的に検討した結果、「就労移行支援事業」への移行は困難であると判断し、廃止したことになっております。
 次に、ぎりぎりまで存続させる方法はなかったのか、のお尋ねでございますが、「就労移行支援事業」に移行しない雇用支援センターには、国の財政的支援が削減されるため、雇用開発協会は、平成20年度末をもって廃止せざるを得ないと判断したものでございます。
 次に、障害者就業・生活支援センター整備のめどがたってから募集停止が本来の手順ではないか、とのお尋ねでございますが、障害者就業・生活支援センターは、障害者の就労及び生活の両面を支援する仕組みとして平成14年度から国が始めた制度です。
 川越を含む西部地域には、就業・生活支援センターは設置されておりませんが、近隣には十分に実績を上げている就業・生活支援センターがあり、また、国立職業リハビリテーションセンターや埼玉県総合リハビリテーションセンターなど、雇用支援センターの利用者の受け入れ先も整っていることから、国は廃止したものでございます。
 最後に、卒業生を含めた受け皿の確保でございますが、既に近隣の障害者就業・生活支援センターや市町村障害者就労支援センターへの卒業生や入所者の受け入れについて、具体的な手続を進めております。
 県としては、この地域の障害者就労支援センターが未設置の4市すべてに、来年度中に整備できるように支援をさせていただきますので、御理解を賜りたいと思います。

 

国民健康保険の資格証明書等交付について

 

Q 山川すみえ議員

 県内の市町村国保加入世帯は約119万世帯、今年6月1日現在の滞納世帯は2割を超す約26万世帯に上っています。資格証明書では、病院の窓口でいったん治療費を全額支払わなければなりません。他県では、受験を控えた人が死亡するという事例も続発しています。5月11日に放送された「NHKスペシャル『セーフティーネット〜日本の社会保障が危ない〜』」という番組では、全国2千の救急告示病院へのアンケート調査で、475人の手おくれ死亡事故例が確認されたとしています。経済的な理由で医療の保障から排除され、命を失うような事態は絶対に避けなければならないと考えますが、知事の見解を求めます。
 ところで、知事は昨年2月議会の予算特別委員会で、我が党議員の質問に対し、資格証明書の交付について、「基本的に人道主義に立った形での考えが必要ではないか」とお答えになり、今年6月1日現在の調査では、資格証明書の発行が昨年の8,257世帯から3,871世帯へと53パーセントも激減しました。これ自体は歓迎すべきことですが、それでも資格証の交付については、市町村によってかなりのばらつきがあります。例えば川口市では、資格証交付が激減し、滞納世帯の1.7パーセント。ところが、八潮市は12.0パーセント、三郷市は8.5パーセントという高さです。さいたま市など30市町村は全く交付していません。国民皆保険制度の下で保険証を取り上げることは、国民から医療を受ける権利を奪うもので、憲法25条が保障する生存権に対する侵害にほかなりません。
 そこで、知事に伺いますが、資格証の交付については直ちに中止して、悪質な滞納者についてのみ短期保険証で対応するように市町村を助言、指導すべきではないでしょうか。また、親が保険料を滞納したことで無保険の状態にある中学生以下の子供が全国で3万2,903人に上ることが厚労省の調査で明らかになりましたが、埼玉でも157世帯、221人の子供が無保険状態にあります。これこそ知事が言うように、人道主義に立った対応が必要ではないでしょうか。県がイニシアチブを発揮して、直ちにすべての子供たちに保険証が交付できるよう是正を図るべきであります。
 また、短期保険証を取りに来るまで窓口に留め置いている自治体もあるようですが、そのために実態として無保険の状態に置かれている子供もいます。こうした実態についても県として調査し、保険証が行き渡るようにすべきではないでしょうか。
 さらに、今年度から病気になりがちな高齢者から医療を奪いかねない後期高齢者医療制度がスタートしました。子供の保険証交付同様、高齢者についても人道的な観点から全員に漏れなく保険証が交付できるよう、後期高齢者医療広域連合に働き掛けるべきであります。
 以上、知事より明確な答弁を求めます。

 

A 上田清司 知事

 セーフティーネットの中核である国民皆保険制度を今後とも堅持していくということは極めて重要だと考えます。
 国民健康保険制度において、負担の公平化を図り制度を維持していくため、資格証明書等の運用を適切に行うことが定められております。
 資格証明書の交付は、法律で市町村に義務づけられております。交付に当たっては、滞納世帯の生活実態や個別の事情を十分把握した上で適切に対応をすべきものであります。
 単に滞納があるというだけで、機械的に交付するものではありません。御指摘のとおりです。
 したがって、子どものいる世帯や高齢者世帯には、積極的に相談にのるなど、世帯特性を踏まえた暖かみのある対応もしなければなりません。
 また、短期被保険者証は、滞納者としての接触の機会を確保し、きめ細やかな納税相談を行うために窓口で交付しております。
 市町村において、その趣旨を踏まえ、より積極的に滞納者と接触を図るよう引き続き県としては指導してまいります。
 今後とも、滞納世帯に対する資格証明書等の運用については、きめ細かな対応を図るよう市町村及び後期高齢者医療広域連合を指導してまいります。
 幸い、中学3年生以下の子どもに限り、保護者が保険料を滞納しても、保険証を交付する救済法案が、あすにも衆議院に提案されると聞いております。
 自・民・公が合意したというふうに聞いておりますので、ちょっと一安心だと思っております。

 

小児救急医療体制の整備について

 

Q 山川すみえ議員

 地元ふじみ野市、富士見市、三芳町の第二次小児救急医療機関は、川越にある埼玉医科大学総合医療センターです。地域の拠点病院である同センターには、たくさんの患者が押し寄せ、夜間、休日でも大変な混雑です。そのため、救急搬送の状態を見ますと、同センターより近隣医療圏の志木市立市民病院に多く搬送されています。医療圏を超えた救急搬送の実態を見るにつけても、二次救急医療に対する県の役割が大変大きいと感じるわけですが、こうした医療圏を超えた協力関係が円滑に進むよう、二次救急医療を担う病院に対する支援をさらに充実させていただきたいと思いますが、県の方針について保健医療部長にお聞きいたします。
 ところで、二次及び三次救急医療機関への患者の集中を防ぐ上では、市町村の初期救急医療体制の整備が急務です。救急病院でも、医師会の協力を得て開業医による支援体制をつくっている志木市のような事業をさらに広げるとともに、大阪府のように県が財政的にも支援している圏域ごとの初期救急センターを整備することを検討してはいかかでしょうか、保健医療部長の答弁を求めます。
 また、二次、三次救急が置かれている窮状を広く県民に広報するためのキャンペーン、ムーブメントといいますか、保健所や医療機関は言うまでもありませんが、部局を超えて、知事を先頭に県を挙げて取り組んではいかがでしょうか、知事よりお答えください。
 さて、県立小児医療センターでは、軽症患者の来院による混雑解消のため、紹介状を持たない夜間救急外来患者に負担金を課すことを検討していると新聞等で報じられています。しかし、同様の検討を行った埼玉医科大学総合医療センターでは、周辺医療圏の初期救急も二次救急も未整備な中で負担金を課せば、重症患者も診療抑制しかねないとして導入を見送っています。金銭的負担を課して診療抑制を図るやり方は行うべきではないと考えますが、病院事業管理者よりお答えください。

 

A 上田清司 知事

 大病院・専門医志向や夜間診療ニーズの高まり、保護者の育児への不安感の増大などにより、多くの患者が休日・夜間に小児救急病院に集中しているという現状がございます。
 一方、現場の医師からは、多くの軽症患者の対応のために疲労し、肝心の本来の救急医療を必要とする重症者への対応が遅れてしまうなどの問題が出ております。
 こうした保護者の不安を減らし、医療現場の支援をするために、何か良い工夫はないか、少しでも改善が図れないかということで、この6月には、彩の国だよりの見開き特集ページで、小児救急医療の実情や、かかりつけ医を持つことなどについて、県民の皆様に大きくアピールをさせていただきました。
 また、小児救急電話相談#8000を実施し、多くの保護者からの相談をいただき、そのほとんどはその場の相談で安心いただけるようになっております。
 さらに、いざというときに備え、保護者に子どもの急病時の対処法がわかるように、この11月から母子手帳サイズの「子どもの救急ミニガイドブック」の配布を始めました。
 まだまだあることはあると思いますので、さらに工夫して、保育所や幼稚園、子育て関連NPOなど様々な関係団体の協力を得ながら、広く普及に努めていきたいと思います。

 

A 宮山徳司 保健医療部長

 本県では、人口や地理的条件、交通事情を考慮して16地区の救急医療圏を設定しておりますが、患者が圏域外の医療機関を受診することを制限するものではございません。
 圏域を超えた医療機関の受診が相互に頻繁に行われ、県民の皆さんは、診療科目や通院の利便性などを参考に、受診する医療機関を選定しております。
 このため県では、すべての圏域の小児二次救急を担う医療機関に対し、輪番実施日に応じた支援を行っております。
 平成19年度、20年度は、補助金の単価アップを行い、1回あたり5万円に増額をいたしました。
 また、開業医がこれらの医療機関の診療に参加することも、大きな支援策の1つであります。
 既に実施している志木市立市民病院においては、勤務医師の負担軽減に効果を上げており、他の医療機関からの問い合わせも多く、今後、他の地域への拡大についても働きかけてまいります。
 また、圏域ごとの初期救急センターの整備につきましては、市町村に交付税措置がなされ、身近な地域での受診機会を提供するために、休日・夜間急患センターや在宅当番医制が整備されております。
 小児医療体制の充実においては、このような急患センターを核として、再編や集約化を図るという方法もございますので、保健所において、地区医師会、消防本部などとの調整を進めてまいりたいと思っております。

 

A 伊能 睿 病院事業管理者

 小児医療センターに、休日や夜間に来院する患者さんは、年々増加し、平成19年度には11,645人と、病院局発足直前の年である平成13年度の約6倍に達しています。このうち紹介状のない初期救急の患者さんが、全体の4分の3を占め、その97%が外来診療のみで帰宅しています。
 こうした患者さんの集中によって、小児医療センターが高度専門医療を提供する上で、支障を来たしはじめております。
 このような中で平成19年度の県議会決算特別委員会から、「高度医療を提供していくべき県立病院へ来院する初期・二次救急患者に対しては、別途負担を求められるかを検討すること」との御指摘を頂きました。
 病院局といたしましては、小児医療センターの限りある医療資源が、最も有効に活用されますように、関係各方面と調整を図りながら、休日夜間における非紹介患者加算の算定について、慎重に検討を進めているところでございます。 

 

保育施設「ハッピースマイル」閉鎖と保育所への企業参入問題について

 

Q 山川すみえ議員

 県内で22カ所の家庭保育室や病児・病後児保育室、学童クラブなどを運営していたエムケイグループが倒産し、突如閉園した問題は、保育施設を安易に営利法人の運営にゆだねることが、どれほど深刻な問題を引き起こすことかを教えてくれました。突然の閉鎖による最大の被害者は子供たちです。子供は、物ではありません。環境が激変すれば、熱も出しますし、夜泣きもします。継続性や安定性が求められている保育施設だからこそ、絶対に営利法人を参入させるべきではありません。これまでも私どもは発言してまいりました。様々な事業を展開している営利法人が、他の事業の不振から保育事業を途中で投げ出すという事態は十分予想できたはずです。
 そこで、福祉部長にお聞きします。悪質な事業者は確実に存在します。そのような事業者の参入を許さないために、県は補助制度の運用に当たってどのような配慮を行ってきたのでしょうか。認可外の保育施設に対する助成は市長が決めることだとして、県は助成の半額を負担するだけだというのでは、余りにも無責任です。
 ところで、私たちは、エムケイグループの関係者を名乗る人物から、同グループの初見社長が戸田市とさいたま市の委託料を担保に総額3,000万円の借入れを行っていた事実を知らされました。この債務は期間が来ておりますが、返済されておりません。
 そこで伺いますが、第一に、この場合、債権者には保育施設の差押えなどどのような権利が生じるのでしょうか。
 第二に、同グループは、事業をまとめて派遣会社などに譲渡を検討していたとも聞いております。仮に事業譲渡が実行されていたとしたら、保育施設の運営は譲渡先にそのまま引き継がれるのでしょうか。私は、戸田市と事業者との協定書を見ましたが、今申し上げたような事態に対する備えが全く見受けられません。県として、補助金を担保にするということはできないとか、運営権や補助金の権利を審査なくして譲渡はできないといった契約上の留意点を明確にし、市町村に対する助言、指導を徹底すべきと考えます。併せて福祉部長よりお答えください。
 さて、無認可施設だけではなく、認可施設にも川口市を中心に企業の参入が進んでいます。認可施設においても、今回のような事態を抱えている企業がないか心配です。県は、認可の際、親会社の貸借対照表、収支決算書など確認していると思いますが、また、定期監査を年に1回やっているそうですが、このような事態を防止できるとお考えでしょうか。連鎖倒産の影響はどこに及ぶか、想像もつきません。親会社、関連企業の状態をよく調査し、今回の事件の教訓を生かすべきと考えますが、福祉部長よりお答えください。
 また、相手が営利法人であるがゆえに、こうしたきめの細かな事前の調査や監視が難しいということであれば、安易に企業参入を認めるべきではないということを申し上げなければなりません。

 

A 石田義明 福祉部長

 ハッピースマイルの突然の閉鎖は、事業者が事業の公益性を認識していない非常に無責任な行為であり、あってはならないことでございます。
 家庭保育室の指定は市町村が行います。その指定に当たりましては、県が定めた一定の基準を満たし、適正に保育が実施されていると認めた施設を指定することを市町村に求めております。
 また、市町村は指定後も年1回以上の実地調査を行い、事業が適正に運営されているか確認を行うこととなっております。
 次に、事業者と債権者との債権債務の関係でございますが、県では具体的な内容を承知しておりません。債権者と債務者との間で解決すべき事柄と考えております。
 次に、仮に事業譲渡が実行された場合についてでございます。改めて市町村が家庭保育室として適当であるかを審査のうえ、指定するか否か検討することとなります。
 次に、市町村に対する助言・指導を徹底すべきとのお尋ねでございます。今回の事件を踏まえ、市町村に対しまして、家庭保育室・放課後児童クラブ等の適正な運営の確保について、通知をいたしました。
 さらに、今回の問題について関係市と検証を行い、留意点や問題点の洗い出しを行っております。
 また、企業が設置する保育所につきましては、認可に当たりその財務内容等を十分審査するとともに、事業開始後においても適正な監査の実施に努め、安定的、継続的な運営の確保に努めてまいります。

 

定時制高校等の教科書給与・夜食費補助制度の存続について

 

Q 山川すみえ議員

 定時制、通信制高校に通学する生徒を対象とした教科書給与・夜食費補助制度は、90日間就労証明がある生徒に教科書を無償で提供し、夜間定時制高校の給食費を1食52円補助するもので、経済的困難を抱えながら通学する生徒にとって重要な支えとなってきました。
 ところが、県教委は、全日制課程との均衡を失することのないようとして制度の見直しを求めた昨年10月の県監査委員の報告を受けて、この制度を廃止する方針を示しています。これに対して定時制の卒業生は、各方面から、経済的に困窮する生徒から教育の機会を奪うものとして反対の声が上がっています。私も、定時制に通う生徒から直接話を聞きました。監査委員の報告では全日制との均衡を問題にしていますが、全日制の生徒と定時制、通信制の勤労生徒では、家庭環境にかなり開きがあると感じられます。
 そこで、教育長に伺いますが、定時制の勤労生徒の生活状況について、内容を御報告ください。また、制度を存続すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。この両制度を廃止しているのは、全国では奈良県だけ。あの大阪府でさえ、忍びないと、補助削減方針を撤回されたというではありませんか。お答えください。働きながら学ぶ生徒を知事からも大いに激励し、応援していただきたいと考えます。知事の見解をお聞かせください。

 

A 上田清司 知事

 まず、基本的に、現在の定時制課程で学ぶ生徒の現状は、以前と比べて大きく変わってきております。
 以前は勤労青少年が学んでおったわけですが、現在では、不登校や中途退学経験者など、多様な生徒が入学をしております。
 県では、ご承知のとおり修学困難な生徒に対しましては、日本一の水準の奨学金を用意しておりますので、そういう意味でのカバーはできているという判断をしております。
 また、そういう意味での監査委員の指摘も十分理解できるものであります。
 こうした状況を踏まえて、お話の教科書給与・夜食費補助の問題を含めて、どのような支援が必要なのかは教育委員会が検討すべきものであります。
 働きながら学ぶ生徒は、私はおおいに激励したいと思います。ただこの問題に関して決めるのは教育委員会でございますので、ご理解をたまわりたいと思います。

 

A 島村和男 教育長

 まず、「定時制の勤労生徒の生活状況」についてでございます。
 夜食費補助が制度化されて間もない昭和41年度には、県内中学校卒業者のうち、定職について定時制高校等に入学してきた生徒は、1,749人でございましたが、平成20年度には、これが19人と大きく減少をしております。
 平成20年3月現在、夜間定時制に在籍している2,558人のうち、アルバイトを含め年間90日以上働き教科書給与又は夜食費補助を受けている生徒は1,051人、41%でございました。そのうち、208人、20%の生徒が、授業料減免を受けております。
 次に、「制度を存続すべきではないか」についてでございます。
 近年、定時制高校には、働きながら学ぶ生徒に加え、不登校経験者や中途退学者など様々な学習歴を持った生徒が増えております。
 こうした定時制高校で学ぶ全ての生徒たちに様々なチャンスを提供していくため、現行の教科書給与・夜食費補助制度に代わる支援が必要であると考えております。
 また、生徒の卒業後の就職など進路状況が厳しいことから、将来、社会人として自立・自活していくことができるような支援が、より重要になっております。
 県といたしましては、定時制高校の生徒の実態に合った新たな支援策について、検討を進めてまいります。

 

Q 再質問  山川すみえ議員

 先ほど教育長がお答えになったように、平成20年でも1,051人、41パーセントの人がこういう勤労青年であり、208人が対象だと言っております。こういうことからしますと、知事がおっしゃるような不登校とかそういう方は対象になっておりません。90日間の就労をした人に対しての補助でございますので、是非、勤労青年が学びたいというその気持ちを持続できますように、補助を継続していただきたいというふうに思います。

 

A 島村和男 教育長

 先ほど、ご答弁したことと一部ダブりますけれども、この制度が発足した頃は、かなりの人数、多いときは2,000人ぐらいの生徒が本県の中学校を卒業して定職について、定時制高校等に入学していた。そういう実態の中で、働きながら学ぶ生徒に対して、学業との両立を応援するような制度として、この教科書給与・夜食費補助制度は、始まったわけでございます。
 ただ、定時制高校に学ぶ生徒の実態が、平成20年度にはそのような形で入ってくる生徒が19人ということで、非常に小さくなっております。
 もちろん、その後、入学してからアルバイトなどを含めて、年間90日以上働く生徒には、そうした制度の適用はあるわけでございますが、従いまして、実態としては、必ずしも経済的困窮に対する支援を目的としたものではないというとらえ方でございます。
 経済的に修学が困難な生徒への支援としては、本県の場合には、先ほど知事の答弁にもございましたが、高等学校等奨学金制度であるとか、あるいは、授業料減免制度がございます。
 今、問題だと思っているのは、例えば定時制高校で卒業する時に、就職も進学も共にできない生徒、それで卒業していく生徒が42%いるような実態がございます。そうしたところに着目して、必要な施策について、検討をしているところでございます。

 

県営住宅の家賃減免制度の見直し及び入居承継等の問題について

 

Q 山川すみえ議員

 最初に、家賃減免制度の見直しについて伺います。
 今、県営住宅の入居戸数は2万5,354戸、そのうち減免措置を受けている世帯は約4分の1の6,453戸に上ります。そのうち、25パーセント減免は1,987戸、50パーセント減免は2,183戸、75パーセント減免は2,280戸。県は、この減免措置を今年から毎年5パーセントずつ減額率を引下げ、5年後には50パーセントと25パーセント減免の2本立てにする方針です。つまり、5年後には75パーセント減免はなくなり、現在25パーセントの減免を受けている1,987世帯の方々の減免がなくなります。原油や原材料の高騰で生活費も大変厳しくなり、各種公共料金や税金なども引き上げられ、生活はますます厳しくなる中で、なぜ減免制度を引下げるのか、全く理解に苦しむものです。
 公営住宅法は、その第1条で、「住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与する」とうたっています。県が行っていることは、県民生活の安定と社会福祉の増進に逆行するものではないでしょうか。減免制度は知事の権限に属するものであり、減免制度の見直しについては、当分の間、凍結すべきと考えますが、知事より明快な答弁を求めます。
 第二の問題は、入居承継の問題です。2005年に入居承継基準が見直され、原則として、現に同居している配偶者、高齢者、障害者に限ることになりました。しかし、国土交通省は、この実施に当たり、居住の安定ということもあるので、事業主体、地方自治体の承認を得た場合には、家族の方でもそのまま承継できると答えています。
 県営住宅で寝たきりの親を介護している子供、親の状態によっては付ききりで介護しなければならない。しかし、親が不幸にして亡くなった場合、親が亡くなると同時に、この子供さんも住まいを失うことになります。在宅介護に対応するためにも、このようなケースでは入居承継ができるよう弾力的な運用を図るべきと考えますが、県の見解について、都市整備部長よりお答えください。
 第三に、入居基準の引下げについてです。来年4月から、県営住宅の入居基準が変更され、月の収入基準が20万から15万8,000円に引下げられます。この基準変更で、総務省の家計調査に基づく収入分位25パーセント相当で、退去などの措置を5年間かけて実施する予定のようですが、これが実施された場合、どのくらいの入居者が退去の対象になるんでしょうか。入居者をごく少数の低所得者層に絞り込むような入居基準の見直しは行わず、若い子育て世帯も入居できるようにすべきと考えますが、併せて都市整備部長よりお答えください。

 

A 上田清司 知事

 経済環境の悪化、所得格差の拡大などが進む中で、セーフティーネットの更なる充実が必要という観点から、県営住宅は極めて重要な役割を果たしております。
 貴重な県営住宅でもありますので、その管理については入居者のみならず、入居できない方との公平性の確保にも十分配慮しなくてはいけないと思います。
 県営住宅の家賃は公営住宅法に基づいて入居者の収入により定められ、収入の低い方はそもそも安い家賃で入居できる仕組みになっております。
 その結果、最も低い収入層の方の平成20年度当初の平均家賃は、約22,500円と、民間に比べれば、だいたい3分の1、安い世界でございます。
 そういう意味で、10万人の方々がこの入居を待っているという事実もございます。そういう中で、家賃の減免は、この低額な家賃を更に引き下げる話でございます。
 平成19年度の制度改正は、公平性の観点から減免率を縮小する方向で見直したものでございます。
 なお、今回の見直しでは急激な家賃変動を緩和する措置も講じておりますし、低所得者にも十分配慮もさせていただいております。
 また、これまでどおり病気や災害、リストラなどにより収入が著しく減少された方には随時家賃を減免する仕組みもありますので、是非、10万人待っている人との均衡も含めてですね、今後とも県営住宅がセーフティネットとしてその機能を十分果たせるように、適切な管理をしなくちゃいけないという私どもの立場についても是非、ご理解を賜りたいと思っております。したがって、凍結はできません。

 

A 松岡 進 都市整備部長

 「県営住宅の家賃減免制度の見直し及び入居承継等の問題について」のうち、「入居承継等の問題」についてお答えを申し上げます。
 まず、「入居承継」についてでございます。これまで公営住宅において広く親族間の承継を認めてきた結果、長年にわたり同一親族が居住し続け、入居できない方との公平性を著しく損なうという弊害がございました。
 そのため、本県では、平成19年3月に県営住宅条例を改正し、平成20年4月から入居承継の厳格化を実施しております。高齢社会を迎え、子が親を介護することは好ましいことですし、それらの方を支援することも必要です。
 しかし、一方で、入居を待っている多くの方との公平性を確保する必要もございます。これらのことを勘案いたしますと、お尋ねのようなケースにあっても、介護の必要性がなくなった段階で転居していただくことはやむを得ないと考えています。
 次に、入居収入基準の引き下げによる影響でございます。
 今回の公営住宅法施行令の改正は、県営住宅に入居できる収入基準を実態に合うように引き下げることによって、結果として真に住宅に困窮する方が入居できるよう適正化を図ったものでございます。
 今回の入居収入基準の引き下げでは、明け渡し努力義務の生じる世帯が約1,300世帯、また、明け渡し請求の対象となる世帯は約260世帯になるものと推計しています。
 なお、5年間の経過措置が設けられておりますので、その間に新基準に対応した生活設計を円滑に行えるよう指導・支援してまいります。
 最後に、「若い子育て世代の入居」についてでございますが、県では、平成19年10月から「子育て世帯入居枠」を拡大しております。
 若い子育て世代の入居などについては、引き続き必要な配慮を行ってまいります。

 

Q 再質問  山川すみえ議員

 県営住宅についてですが、県営住宅の問題は、先ほど住宅を待っている方のために、10万人の方々が待っていらっしゃるということで、その方々のために公平を期すとかそういうお話でございますけれども、実際に入居されている、こういう例がございます。
 9万円の年金で、実を言いますと今度の5パーセントの引下げで、その方はちょうど老齢加算も収入になりまして、亡くなりましたから収入になりまして、それで1万5,800円の家賃が2万4,500円になりました。つまり、9万円の生活費の中からこのような高額な家賃を納めて生活するというのは、もちろん高齢者でございますから、高齢者医療保険、そしてまた介護保険なども引き落とされ、大変困窮をいたしております。そういうことからすると、最低生活を保障する、また低廉な家賃で住宅を確保するという県の使命についても、大変不十分ではないかと思います。
 私は、URが、今年この景気が後退しているという中で、家賃の引上げについて当分の間、中止ということをいたしました。こういうことから考えますと、私は、どうしてもこの減免制度の引下げ、5パーセントの引下げについては、今年度は是非実施をやめていただきたい、こういうふうに思うんですが、もう一度知事の御見解をお願いいたします。

 

A 上田清司 知事

 たいへん悩ましい課題も言っておられますし、また、URの話もされました。
 まずURに関して言えば、はるかにレベルの高い平均的な人たちが一般的には入ってますので、家賃も県営住宅と比べますとだいたい2倍以上高いというふうに判断していいかと思っておりますので、それと比較されるのはいかがかなと思っております。
 また、入居を待っている人たちだけのためにやっている話でもございません。
 民間家賃との差、また入居できない方との公平性確保、しかも減免率を5年かけて徐々にやっていこうという形で激変緩和措置もありますし、いろんな措置もあった上でのですね、公平性の確保ということになります。
 多分に山川議員の方にはですね、現に住んでいる方々からの強い要請があると思いますが、私どもの方にはなぜ入れないのかという、そういう強い要請もございます。
 そういうことについても、既得権益を擁護される気持ちも分からぬのではないんですが、また同時に幅広な公平性ということについても御理解を賜りたいと思います。よろしくお願いします。

 

治水効果に乏しい八ッ場ダム建設については事業の中止を

 

Q 山川すみえ議員

 我が党議員団は、知事に対して過去4回八ッ場ダムについて質問し、計画の中止・撤回を求めてまいりました。人口減少と節水社会の進展の中で、水需要計画が過大であること、冬場の非かんがい期の農業用水の転用を安定水利権として主張すべきであることなどを指摘してまいりましたが、知事は依然、ダム計画に固執し続けておられます。
 そうこうしている間にも、熊本県知事は、川辺川ダム建設中止の意向を表明し、淀川水系流域委員会がダム計画を不適切と判断し、その一つ、大戸川ダムについて、大阪、京都、滋賀、三重の4府県の知事が建設凍結を求める共同見解を発表しております。時代は、ダムに頼らない時代へ着々と歩みを進めております。知事は、こうした脱ダムに向けた各府県の判断に対してどのような見解をお持ちでしょうか、まずお答えください。
 本日は、治水の側面から質問いたします。
 国土交通省の利根川水系河川整備基本方針によりますと、利根川水域に戦後最大雨量、3日間で318ミリの雨を降らせたキャサリン台風が再来したとする想定では、上流の基準地点、群馬県伊勢崎市の八斗島付近で、ピーク時の流量を毎秒2万2,000トンと想定して治水計画を立てておられます。その内容、2万2,000トンのうち5,500トンの水を、八ッ場ダムを含む上流のダム建設によりカットし、残りの1万6,500トンは、堤防など現在の設備で対応するというものです。
 ところが、先日、公金差止め請求の住民訴訟原告団が情報公開で入手した利根川浸水想定区域図の試算資料では、現況の断面、現況の洪水調整施設で流出計画を行った場合、上流部ではんらんした上で、八斗島のピーク流量は1万6,750トンとなるとしているのです。ピーク水量が2万2,000トン毎秒でなく、1万6,000トン程度であれば、八ッ場ダムなど上流ダムは不要になってしまいます。
 そこで、伺います。国土交通省の河川整備基本方針のピーク流量、毎秒2万2,000トンについては、国土交通省自身が余り裏付けを持っていないようですが、知事はどのようにお考えになりますか。大戸川ダムの4知事が凍結を表明したのは、「施策の優先順位を考慮した」とのことです。本県の財政も非常に厳しいと、知事は事あるごとにおっしゃっておられますが、治水面からも利水面からも、これだけ必要性に疑問が持たれているダム建設に今後も、百数十億円もの県費を支出していくことに矛盾をお感じにはならないでしょうか、明確な答弁を求めます。

 

A 上田清司 知事

 「治水効果に乏しい八ッ場ダム建設については事業の中止を」のお尋ねのうち、脱ダムに向けた各府県の判断に対する見解であります。
 お話しのあった各府県の知事は、治水のあり方、ダム建設予定地や流域の事情などを熟慮された上で、決断をされたものだと認識しております。
 私自身も平成15年に、本県における今後の水需要の減少を踏まえて、群馬県で建設中の戸倉ダムからの撤退を表明しました。
 各県の知事も同意され、その結果、戸倉ダムの建設は中止されました。ダム本体の工事は、進んでおりませんでしたが、周辺整備は終わっておりました。
 この事業中のダムの中止は、日本で初めてのことでございました。そう言う意味では、きちんと判断をさせて頂いております。
 いずれにしても一概に、個別の条件が違いますので、論じることはできないのではないかと思います。
 次に、河川整備基本方針に関する国土交通省に対する考えについてでございます。
 国土交通省では、平成18年2月に策定された利根川水系の河川整備の基本的事項を定める「利根川水系河川整備基本方針」で、計画の基本となる流量を八斗島地点で毎秒22,000立方メートルと定めています。
 これは、八斗島地点より上流の河川について将来的な河道の断面等を想定し、それらが完成した時点で200年に一度の雨が降った場合、八斗島地点に流れてくる流量でございます。
 一方、毎秒16,750立方メートルという流量は、八斗島より上流の河川やダム等の治水設備が現在の状況下で200年に一度の雨が降った場合を想定しています。
 したがって、それぞれ条件が違うのです。現状では治水施設の設備が十分ではないので、200年に一度の雨が降ると群馬県内で大規模な氾濫が生じ、55,000立方メートルの水浸し部分が出てくると。その結果、毎秒、残った16,750立方メートルになるという、そういう話でありますので、誤解ではないかと思います。
 このように、お話しにあった毎秒16,750立方メートルと毎秒22,000立方メートルという2つの流量は、八斗島より上流の治水施設の状況が現状と将来と異なる前提で算出されております。
 山川議員のお話は、群馬県側が埼玉県のために今後一切治水対策を行わず水害を受け入れる、すなわち群馬県が埼玉県のために水浸しになって、犠牲になるという前提で初めて成り立つ議論でございます。
 八ッ場ダムは、上流ダム群の中で最大の貯水量を有するダムでありますので、本県をはじめとした流域の各都県の治水対策上、極めて重要な施設であると考えております。
 次に、八ッ場ダム建設について県費を支出していくことに矛盾を感じないかについてでございますが、ただいま説明しましたように、群馬県側だけに犠牲になれと言うわけにはいきませんので、全く矛盾は感じておりません。
 八ッ場ダムは利根川の洪水を防ぎ、県民に安定的に水を供給するために本県はもちろんのこと、東京都や群馬県にとっても、必要不可欠な施設であると考えております。
 このため、今後とも関係都県が一体となって八ッ場ダムの早期完成を国に強く働きかけてまいります。

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