柳下委員
(1)事故米の不正転売事件は、「三笠フーズ」の悪質さもあるが、2004年の食糧法改正により、農水省農政事務所の権限、例えば、米穀販売業者に立ち入り、帳簿確認などを行う権限が奪われ、併せて人員を大幅に削減されたことで、業者の不正を発見するのが困難になったことに問題がある。
また、事故米のほとんどは輸入米であり、外国から米を輸入しているWTO協定は問題である。輸入中止も必要な措置であると思うが、どう考えるか。
(2)スーパーなどで信じられない価格で販売している米がある。そういう激安米などの食品について調査はしないのか。安全確保の観点から県としてどう対応しているのか。
(3)食品に関する苦情件数はどう推移しているか。
(4)食品衛生監視指導計画はどのように定めているのか。
(5)監視対象施設数と実績はどうか。
(6)食品衛生監視員数はどう推移しているか。専任・兼任別に明らかにしてもらいたい。
(7)輸入食品に対する検査状況はどうか。
(8)食品衛生監視指導計画に基づく監視指導は、熊谷保健所深谷分室、坂戸保健所、川口保健所戸田・蕨分室、春日部保健所の4か所に置かれた食品監視担当と、本庁の食品安全課特別監視担当で実施しているようだが、各保健所等の管轄地域が非常に広範囲である。監視指導の充実に当たっては、すべての保健所に食品監視担当を配置する必要があると思うがどうか。
食品安全局長
(1)事故米に係る問題を踏まえ、国において、事故米が国内に入ってこない対策を検討しているところである。よって、今後は問題のある米が日本に入ってくることはないと考えている。
また、ミニマムアクセス米の輸入中止については、輸入機会の提供を約束した国際協定に違反することになるとの考えがあるので、県としての見解は差し控えさせていただく。
(3)食品に関する苦情件数の推移は、平成17年度1,536件、平成18年度1,496件、平成19年度2,467件である。平成19年度は中国製冷凍ギョーザ事件があったことから前年度より1,000件ほど増加した。
(4)食品衛生監視指導計画は、各自治体の地域事情、前年度の実績、社会的な食品事故発生事案、食の安全県民会議での意見などを勘案して毎年度定めている。
(5)平成19年度実績であるが、監視対象施設13万3,057件に対して、6万6,921件の監視を実施した。
(6)食品衛生監視員数の専任・兼任別の推移は、平成17年度、専任43名、兼任1(8)0名、合計223名。平成18年度、専任43名、兼任176名、合計219名。平成19年度、専任44名、兼任179名、合計223名。平成20年度、専任44名、兼任179名、合計223名。以上である。
(7)輸入食品について、平成19年度は459検体の検査目標に対して、実績は47(4)検体であった。
(8)平成18年度に保健所の再編・統合があった。これにより効率的な人員活用を図ることとなり、各保健所の生活衛生・薬事担当でも地域に密着した監視を実施している。
4か所の保健所と本庁だけで監視指導するには広範すぎるとの指摘だが、集約化することによって機能の充実を図っている。
保健医療部長
(8)食品監視機能の保健所4か所への集約化であるが、最近の食品製造業は製造過程が複雑で高度化し、大規模化していることから、率直に言って、今までの食品衛生監視員の知識だけでは対応できないことも生じている。この事態に対応するため、食品衛生監視員が十分な研修を積み、情報交換をしつつ集約化を図ることで、逆に機動性を高めている。小規模の営業店舗に対する監視指導は、通常の体制で行っているが、大規模製造業や販売業については、集約化して監視指導する方がむしろ機能的であると考え、対応している。
農産物安全課長
(2)激安米などの調査は、さいたま新都心にある独立行政法人農林水産消費安全技術センターが抜き打ち的に調査を行っている。調査に当たっては、県と連携しながら一体的に実施している。
また、異臭やカビ米混入などについて、食品表示調査員などから情報提供があった場合、必要に応じて農林振興センターと保健所が連携し調査を実施している。
さらに、「食品表示なんでもダイヤル」には、県民から常時、情報が寄せられている。特に昨年6月の北海道ミートホープ事件以降は、苦情・通報件数が急激に増加した。件数は、平成18年度が37件だったのに対して、平成19年度は138件となった。特に内部告発と思われるものが増加している。
柳下委員
(1)食品衛生監視指導計画は、前年度の実績で定めるとのことだが、監視指導の目標施設件数は、平成18年度から平成20年度までは6万2,000件のままで、毎年同じである。
一方、監視指導実績は、平成19年度は6万6,921件に増加している。前年度実績を基にするのであれば、平成20年度の目標施設件数はもっと増えるのではないのか。
(2)苦情件数が増加しているにもかかわらず、専任の食品衛生監視員は、近年1名しか増員していない。食品監視業務は、ストレスがかかる仕事でもあり、専門性を要する。部長は集約化の効果を強調するが、そもそも効率性になじまない業務である。もっと専門職員を増やして、体制強化を図るべきではないのか。
(3)輸入食品の検査については、検体数の実績が、平成17年度は643件、18年度512件、19年度474件と年々減少している。それなのに平成20年度の検査目標は520件となっている。実績が減っているのに、目標を増やした理由は何か。
(4)現場における職員の時間外勤務増加や精神的ストレスについてどう考えているのか。
保健医療部長
(2)従来の食品監視業務は、食品衛生の水準を引き上げ、それに達しない施設などは処分するというような業務が多かった。しかし、最近は原材料の問題であるとか、非常に複雑化していることから、国、各検査機関との連携体制を組み、対応する業務が増えている。食品衛生の視点からは、現在の保健所の体制の中で、基本的なものは十分対応できるし、そういうものが大部分を占めている。しかし、最近の事件性を含む複雑な問題に対しては、集約化し、集中的に対応する方が効果的であると思っている。
(4)現在の現場では、今までの知識だけでは対応できない事態が生じていることから常に勉強を続けなければならず、非常に悩みながら職員は業務を遂行している。しかしモチベーションは極めて高いと感じている。
食品安全課長
(1)毎年度設定する目標施設件数は、事件事故を見越して多少余裕をみた設定にしてある。平成19年度は中国製冷凍ギョーザ事件の影響で、監視実績が特に多かった。
(3)輸入食品の検査検体数は、事件事故の発生状況によって、年度ごとに増減する。よって、実績だけではなく事件事故を勘案して、20年度は検査目標を520件に増やした。
保健医療部長
(1)監視指導計画の目標施設件数の6万2,000件というのは平常時を想定したものである。平成19年度は中国製冷凍ギョーザ事件の影響で特別監視が加わり、監視実績が増加した。
そういった意味で、平成19年度は特殊であったわけで、平成20年度の目標施設件数は平常時のまま6万2,000件にしてある。
柳下委員
それでは輸入食品の検査検体の目標数が、平成19年度は450件であったのに、平成20年度は520件に増やしたのはなぜか。19年度にギョーザ事件があって、政策的に520に目標を増やしたのではないのか。監視指導計画の目標施設件数は20年度は、平常時のままで、輸入食品の検体数の目標は増やしているのはどういうことか。
食品安全課長
輸入食品は残留農薬の検査を70品目に増やした。
輸入食品の事故が多いことから、検体数の目標を増やした。国内産の農薬検査を100検体減らし、その分を輸入食品に回した。トータルでは変わらない。
保健医療部長
輸入食品に関する問題が多いので検査の目標件数を増やしたが、これは検査体制の問題である。施設の監視指導の関係とは異なる。輸入食品の問題を受けて残留農薬の検査品目を70に増やしている。監視指導計画とは連動しないものである。
柳下委員
検査の検体数を実績に基づいて増やすのは当然である。輸入食品についても実績が増えたのだから、目標を増やすのも当然である。今後、輸入食品の流通が増えてくるという考え方もあると思うので、しっかりやってもらいたい。
さて、衛生研究所の体制を強化しているとあるが、集約化して効率化するというのではなく、やはり人がやる検査体制は、現場の声に耳を傾け、充実してもらいたいと思うがどうか。
保健医療部長
検査の内容が複雑化してきているので、場合によっては24時間対応を求められるケースが、感染症を含めて最近増えている。したがって、衛生研究所では即日24時間で検査に対応する体制をとっている。そうした体制を組むためには機器の問題と併せて、人数を集約しないと24時間対応はできない。この点については理解願いたい。
<柳下委員の意見・提言>
(1)食品衛生に関する業務が複雑となる中、保健所等の職員数が少ない。職員の増加と監視体制の強化を図ること。現場の職員に過度のストレス等が生じないよう配慮すること。
(2)ミニマムアクセス米の輸入中止を国に要望すること。