日本共産党の柳下礼子です。
私は第1号議案、第19号議案、第23号議案、第33号議案、第35号議案、第39号議案及び第54号議案に対する反対討論並びに、19年議請第14号について審査結果に反対し、採択を求める討論を行います。
最初に第1号議案「平成20年度埼玉県一般会計予算」についてですが、以下申し上げる主な理由により反対致します。
第一の反対理由は、乳幼児、重度心身障害者、ひとり親家庭の福祉医療制度の補助率を財政力指数が過去3年間平均して1を超える市町に対して、従前の2分の1から、12分の5に、さらに過去平均して1.2を超える市町については3分の1に引き下げるなど、
福祉3医療に係る県の補助率を削減する予算となっていることにあります。
財政力指数が1を超える自治体は、地方交付税の不交付団体となっており、そのうえ県の補助金の交付でも差別を押しつけることは、政策誘導というこの補助金の性格に照らしても許されないことであります。
第二の反対理由は、社会福祉施設利用者サービス推進事業費において、1施設に対する補助限度額を従前の30万円から20万円に引き下げたことです。
この事業は、措置費等で運営される保育所などの民間社会福祉施設のサービスの質の向上を図るための取り組みを支援するための補助金で、民間社会福祉施設等職員処遇改善費補助が打ち切られたのに伴い導入されたものです。
ご承知のとおり、民間の社会福祉施設はどこも厳しい経営環境におかれており、職員の処遇改善もままならないなかで人材の確保やサービスの質の確保に大変苦労されています。補助金の削減はこうした民間社会福祉施設の努力や苦労に報い、援助するのではなく、反対に足を引っぱるものであります。
第三の反対理由は、障害者地域生活サポート事業費の補助限度額を引き下げたことです。
この事業では、現在65市町村を対象に県が事業費の2分の1を補助していますが、現行では県が人口規模に応じて上限額を設けているために、がんばっている市町村ほど持ち出しが増える仕組みになっています。
新年度予算では前年度より予算が276万8000円減額されていますが、減額の理由は人口規模ごとの限度額をさらに引き下げ、自治体の負担を強化することによるものです。この際、限度額を撤廃し、市町村の取り組みを大いに支援すべきであります。
第四の反対理由は、八ッ場ダム建設やスーパー堤防の建設など、事業完成の見通しも立たず事業効果も疑われるような大規模土木工事に多額の投資を行っていることです。
八ッ場ダムについては、利水で一般会計から企業局に対して国庫補助金を除いて17億6,330万円、治水で国直轄事業費負担金として13億2,000万円、合わせて約31億円にのぼる予算を計上しております。
しかし、利水上の効果については、県の水需要の見直しでも2年後の平成22年度には人口のピークを迎え、水需要そのものも既に2001年度から下降線をたどるなど完成した頃にはほとんど用をなさないと考えられています。
第54号議案にもありますように、国土交通省は八ッ場ダムの工期を平成22年度から平成27年度に5年間延長することなどを内容とする基本計画の変更について同意を求めていますが、完成時には水需要がさらに一段と落ち込むことは明らかで、安定水利権の確保という名目で、これ以上、県民の税金を投入することは許されません。
また、スーパー堤防については、着工から20年以上が経過しながらも進ちょく率は2.3%(利根川)にとどまっているのが現状です。現在のような進ちょくでは完成するのに千年も必要です。
スーパー堤防事業については、形を変えた再開発事業との批判もあり、この際事業を抜本的に見直し、スーパー堤防に替わる堤防の強化策について検討すべきであります。
第五の反対理由は、さいたま新都心八街区土地利用推進費として94億6,000万円余の予算が計上されていますが、この事業地に整備する公共公益施設の内容については、もっと県民的な議論を尽くして、真に県民が必要とする施設とすべきであります。
また、建物の高さを競って開発事業者に無理難題を押し付けるあまり逆に事業者から県の負担を求められるような事態は絶対避けるべきであります。
第六の反対理由は、高等技術専門校の授業料の引き上げと統廃合を進めるなど、依然として厳しい雇用情勢にもかかわらず労働者の職業訓練の機会をむしろ狭める予算となっていることです。
低賃金で不安定な非正規雇用の増大が、貧困と格差の広がりをつくりだし、大きな社会問題となっています。こうしたなかで、非正規で働く労働者が、技能を身につけたり、資格を取得できるように職業訓練の機会を抜本的に増やすことが強く求められており、職業訓練校の役割もますます大きくなっています。
ところが、県が進めている授業料の引き上げと高等技術専門校の統廃合は、ワーキングプアやフリーターからの脱出を願う人たちから職業訓練を受ける機会を逆に奪うものであり、賛成できません。
以上が、第1号議案に対する主な反対理由であります。
次に、第19号議案「平成20年度埼玉県水道用水供給事業会計予算」と第54号議案「八ッ場ダムの建設に関する基本計画の変更に係る意見について」は関連しておりますので一括して討論致します。
第54号議案は、群馬県長野原町に建設中の八ッ場ダムの工期を5年間延長することなどを内容としたものでありますが、
既に第1号議案への討論のなかで明らかにしたとおり八ッ場ダムについては、水需要が下降線を辿る中でその利水上の効果を失ってきているのが現状であります。
また、治水対策上も、戦争直後のカスリン台風の洪水をベースに利根川の基本高水水量(八斗島地点)を毎秒2万2,000トンに設定して八ッ場ダム等の上流ダム群が必要だとされていますが、過去50年間、毎秒一万トンを超える洪水は記録されていません。八ッ場ダム等の洪水調節がなくとも河川改修を計画的に進めることで洪水氾濫の危険性をなくすことは可能であり、八ッ場ダムの必要性は治水面でもますます薄れているというのが実態です。
八ッ場ダムの基本計画については、総事業費が2,110億円から4,600億円へと2倍以上に引き上げる変更案が審議された2004年の2月県議会において、「これ以上建設工事費を増額しないこと」や「工期を厳守」することなどを内容とした決議を全会一致で議決しているところです。
今回の工期延長は、こうした本議会の決議をも踏みにじるものであり、到底認めるわけにはいきません。第19号議案の水道用水供給事業会計についても、八ッ場ダム建設のために国庫補助金を含めて52億9,200万円の予算が計上されており、同様の理由により反対するものです。
次に、第23号議案は、薬事法の一部改正に伴い、登録販売者試験手数料等の額を定めることなどを内容としたものでありますが、今回の薬事法の一部改正は、一般用医薬品の販売制度の規制緩和、違法ドラッグ対策の強化を目的としたものであります。
医薬品は、副作用等何らかのリスクを生じる恐れがあり、現行では専門家である薬剤師が常駐して販売を行うことになっています。
しかし、ドラッグストアなどでは薬剤師が常駐していないのが実態であり、今回の改正は薬剤師以外の「登録販売者」をつくることで、薬剤師がいなくとも医薬品の販売ができるような仕組みに変えるものです。薬剤被害が後を絶たない中で、薬剤師配置規定を緩和することには賛成できません。
以上の理由から、第23号については反対するものです。
次に、第33号議案「埼玉県心身障害者扶養共済制度条例の一部を改正する条例」についてです。
心身障害者扶養共済制度は、心身障害時・者を扶養する保護者が掛け金を支払い、保護者の死亡または廃疾後、残された障害児・者の生活の安定と福祉の向上を図るため年金を給付するものです。
今回の改正では加入時年齢が35歳未満では現行3,500円の掛け金が、新規加入者では9,300円へと2・7倍の値上げ、既加入者では5,600円と1・6倍の値上げになります。本県ではこの制度に2,574人が加入し年金受給者数と合わせると3,767人を数えますが、心身障害者全体のなかでは、2・7%の加入率にとどまっています。
今回の改正は国の通知を受けてのものですが、前回の掛け金値上げも「制度が維持できないため」という理由によるものでした。今回もまた同じ理由での値上げであります。
今でさえ加入率が低いのに、さらに大幅な値上げをすることは、ますます共済離れを促すことになり、制度の維持どころか、制度の破綻につながりかねません。
もともと、国の障害者年金の低さや親亡き後の障害児・者に対する政策の貧困のなかでこうした任意の扶養共済制度が生まれた経緯に照らすならば、保護者の負担を増やすのではなく、国として制度を支えるための財政的支援を強化すべきであると考えます。
よって、掛け金の大幅な値上げを内容とする条例改正には反対であります。
次に、第35号議案「埼玉県後期高齢者医療財政安定化基金条例」についてです。
この条例は、老人保健法の一部改正に伴い、埼玉県後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の財政の安定化を図るため、基金を設置するものですが、わが党は後期高齢者医療制度そのものに反対する立場からこの条例案には賛成できません。
考えてもみて下さい。75歳以上というだけで、機械的に後期高齢者として他の医療保険から切り離し、死ぬまで年金から保険料を徴収するような医療制度が世界のどこにあるでしょうか。しかも、75歳以上の人口比率が高まった場合も、後期高齢者の医療給付が増えた場合も、保険料の負担が増える仕組みになっています。
また、年金が月1万5,000円以上の人からは保険料が天引きされます。これでは、「天引きなら未納が発生しない」として、年金を担保に取る悪質な金融業者と同じ発想ではないでしょうか。
医療の給付面でも、「後期高齢者の心身の特性」として「いづれ避けることのできない死を迎える」のだからとして、別枠の診療報酬に囲い込んで医療費を抑制するというのは、「年寄りは早く死ね」と言っているのと同じであります。
戦中・戦後、社会のためにがんばってきた人たちの、人間としての尊厳を踏みにじるような医療制度は中止・撤回以外にありません。
次に、第39号議案「埼玉県立高等技術専門校条例の一部を改正する条例」ですが、この条例改正は高等技術専門校の授業料を現行の11万5,200円から11万8,800円に引き上げるとともに、川越高等技術専門校飯能分校の廃止、県立秩父高等技術専門校を廃止し熊谷高等技術専門校に統廃合することなどを内容とするものですが、第1号議案に対する反対理由で既に指摘した同様の理由により反対であります。
最後に、19年議請第14号「高校歴史教科書検定での『集団自決』に関する記載内容」への修正指示撤回を求める意見書の提出を求めることについて」は、審査結果は不採択でありますが、私は採択を主張するものです。
この請願は、沖縄戦における集団死・「集団自決」が、「軍による強制・強要・命令・誘導等」によって引き起こされたことは否定できない事実だとして、昨年3月30日発表された沖縄戦「集団自決」に関する教科書検定の意見を撤回するよう国に対する意見書提出を求めたものであります。
委員長報告では不採択を主張する意見として「教科書6社から提出された訂正申請の内容が、教科用図書検定調査審議会で審議され、昨年12月26日に文部科学省から承認されたことから、県議会として意見書を提出する意味がなくなった」という理由が述べられいます。
しかし、昨年12月の文科省の決定は、検定意見の撤回は行わず、教科書会社の訂正申請に対しても、沖縄戦「集団自決」の記述について「軍による強制」の明記を認めないというものでした。
教科書の執筆者からも軍の強制を認めず、軍の責任を曖昧にした訂正申請の結果は「記述の回復とは言えないもの」であり、「執筆者として到底納得できるものではない」という厳しい批判の声があがっています。
もともと、「集団自決」は、住民の虐殺などと並んで、沖縄戦での日本軍の残虐行為として記憶にとどめられています。
「共生共死」(軍が死ねば住民も死ぬ)という方針のもと、島ぐるみで戦争に動員された沖縄の住民は、米軍の攻撃が迫っても投降を許されず、軍からあらかじめ手榴弾などの武器を渡されていたことからも、「集団自決」が日本軍の強制・強要・誘導によって起きたことは明白であります。
誤った検定意見を撤回し、正しい記述を回復することは当然であり、19年議請第14号については採択とすべきであります。
以上で私の討論を終わります。