1 県民生活の擁護と来年度予算編成について (知事)
2 安心して生み育てることのできる医療体制の整備と医師確保対策について
(1)小児救急医療体制の整備について (保健医療部長)
(2)産科医・小児科医の確保対策について (知事、保健医療部長)
3 後期高齢者医療制度について (知事、岡島副知事)
4 埼玉県医療費適正化計画(仮称)の策定について (知事、保健医療部長)
5 障害者自立支援法の見直しと県障害者施策の充実について (知事、福祉部長)
6 子どもたちに豊かな放課後を保障する放課後児童クラブの充実について (福祉部長)
7 特別支援学校の教室不足の解消対策について (知事、教育長)
8 埼玉農業の振興対策について
(1)生産費を賄えるコメの価格安定対策について (農林部長)
(2)品目横断的経営安定対策の見直しについて (知事、農林部長)
9 米軍所沢通信基地の全面返還と東西連絡道路の建設について (知事、総合政策部長)
県民生活の擁護と来年度予算編成について
Q 柳下礼子議員 格差と貧困が社会の隅々を覆い、普通に働いても、まともな生活を維持することが困難な人々が増大しています。定率減税の廃止や住民税増税、医療・介護保険制度の相次ぐ改悪、さらにはでたらめな年金運営によって消えた年金が大問題になるなど、多くの国民が不安を感じる状況が生まれています。
構造改革は輝く光であり、痛みは、光が当たることで生ずる影にすぎないという議論は、構造改革を合理化するための詭弁にすぎません。ネットカフェ難民が若者の間で広がり、介護難民や医療難民を急増させ、高齢者を標的に庶民に負担を大幅に増やしたのは、構造改革そのものです。また、中小企業や農業、地域経済を衰退させたのは、経済規制を撤廃して市場に任せればすべてうまくいくという市場原理主義にほかなりません。福田首相は、若い人に希望を、お年寄りに安心をと訴え、高齢者医療費負担増の凍結や障害者自立支援法の見直しなどを打ち出していますが、相次ぐ庶民増税と社会保障改悪を推し進めてきた構造改革路線そのものを見直さない限り、国民に希望と安心を保障することはできないと考えます。
知事は、安心・安全、福祉、環境の視点から県政を見直すことを県政運営の指針の一つに挙げています。来年度の予算編成に当たっては、県民生活と地域経済を守るため、医療や福祉の充実、雇用確保、中小企業、農業の危機打開などに重点的に予算を配分すべきと考えますが、予算編成に対する基本姿勢について明らかにしてください。
なお、政府や財界においては、社会保障の財源論として、消費税を増税すべきという議論が再び起こっています。消費税は、低所得者層ほど負担が重い税制であり、消費税増税は、日本経済の最大の弱点である家計を痛めつけ、景気対策にも逆行をするものです。県民生活を守る立場から、明確に反対を表明すべきと考えますが、併せて知事の見解を伺うものです。
A 上田清司 知事 私は知事就任以来、埼玉を安心・安全な県にすることをまず第一に取り組んでまいりました。
福祉・医療の充実では、全国で初めてとなる特別養護老人ホームの県単独助成制度の導入や乳幼児医療費助成の拡大、ドクターヘリ専用機の整備などに努めてまいりました。
また、雇用の確保では団塊世代活動支援センターの開設による中高年の就労支援や障害者雇用サポートセンターの開設による障害者の就労支援を充実させてきました。
さらに、中小企業支援として県の制度融資改革により、無担保・第三者連帯保証人なしという使い勝手の良さでは日本一の中小企業融資を実現しました。
ご承知のとおり創業・ベンチャー支援センターがアドバイスした企業の存続率は94.5パーセントと驚異的な数字を誇っています。
平成20年度はゆとりとチャンスの埼玉プランの実現に道筋を付ける大事な年であります。
来年度予算では県民生活と地域経済を守るため、安心・安全に加えて、福祉、環境の3つの視点を取り入れ、同時に複数の効果を得られるような「一石三鳥」を狙っていきたいと考えております。
具体的には、みどりと川の再生や女性のチャレンジ支援、障害者の就労支援などに速やかに取り組んでまいります。
厳しい財政状況ではございますが、選択と集中の視点から限りある財源を重点的・効率的に配分し、メリハリのある予算にしたいと、このように考えております。
次に、消費税の増税に反対すべきについてでございます。
消費税の増税は国の財政だけではなく国民生活や経済活動など、我が国の社会経済全体に大きな影響がある問題であります。
このようなことから、社会保障の水準、消費税を含めた税制度のあり方、国民の暮らしや景気への影響といった観点から、国政の場で幅広い討論と検討がなされるべきだというふうに思っております。
道路はつくれ、福祉や医療は手厚くしろ、年金も増やせ、税金は少なくしろと、そういうわけにはなかなかいかない。
しっかりと幅広い議論を行っていただきたいと思っております。
小児救急医療体制の整備について
Q 柳下礼子議員 本県の小児二次救急医療が崩壊の危機に瀕しているという現状は、既に今年2月県議会でも我が党が指摘いたしましたが、その後の事態の進展は、更に深刻となっております。病院の二次輪番が埋まっていない医療圏が16地区中8地区にも及び、特に我が所沢地区では前年より大幅に後退して、輪番病院が定まっている曜日が3日しかない。もうすぐ移転してしまう都立清瀬小児病院にますます依存せざるを得なくなっています。
この問題について、県医療対策協議会小児科部会は10月に検討報告書を出されています。この報告書では、二次救急に殺到している軽症患者対策を強調して、市町村の時間外、平日夜間や休祝祭日診療の充実を求め、それができている所沢のような地域は、深夜帯診療へ更なる延長を図るよう提起しています。この整備は市町村の仕事ですが、検討会の報告は、県が強力なリーダーシップを発揮することなくして実現できないと指摘しています。県として、市町村の初期救急時間外診療に財政的支援を行い、強力なリーダーシップを発揮すべきときではありませんか。保健医療部長の答弁を求めます。
なお、報告書は、初期救急、時間外診療、二次救急も受け入れる小児拠点病院、連携強化病院を小児人口30万から50万人当たり1病院を目途に整備を進めるべきであるとしています。所沢地区では、この連携強化病院になり得る公的病院として所沢市民医療センターが挙げられていますが、市民医療センターは入院設備が少なく、小児科入院設備を持つ独立行政法人西埼玉中央病院がむしろ適当かもしれません。公的病院の対象は広げて考えていただきたいのですが、いずれにしても所沢地区二次救急医療圏の拠点病院整備に向け、県として早急に音頭をとって足を踏み出していただきたい。清瀬小児病院の移転も目前であり、拠点整備を望む声が広範に広がっていますので、保健医療部長の意欲的な答弁を求めたいと思います。
A 宮山徳司 保健医療部長 小児初期救急医療体制の整備につきましては、実施主体の市町村に交付税措置がなされています。
しかし、各地域の小児救急の充実に向けては、病院、地区医師会、消防などの連携が必要なことから、保健所が中心となって調整を図っております。
所沢保健所では、本年度において、関係市等との調整を進め、8月7日には、所沢市、入間市、狭山市の三市の市長による協議が行われました。
現在、実務者レベルで、初期救急の全ての曜日における実施に向け検討を行っております。
これらの結果を踏まえ、拠点病院について話し合ってまいります。
なお、お話にありました清瀬小児病院の府中移転につきましては、東京都は、小児救急医療機能を清瀬小児病院に隣接する多摩北部医療センターに残し、今後も地域の小児救急需要に応えることとしております。
産科医・小児科医の確保対策について
Q 柳下礼子議員 県内で、産科は閉鎖する、産科はやっていても分娩は受け付けないという事態が広がっています。本県の産科数減少の実態、またその対策について、まず保健医療部長より答弁を求めます。
小児科の危機、産科の危機が医師の不足に由来することは明らかです。例えば、小児科医がよく偏在していると言われますが、本県の小児科医1人当たりの小児人口は661.8人で、全国平均の551.6人を大幅に上回り、全国39位です。そもそも医師不足の上、病院勤務医が更に不足する事態が生まれているのです。産科医に至っては、医師1人当たりの分娩数は144人と、全国平均の104人を大きく上回り、全国ワースト1です。また、産科と小児科には女性医師が多いなど独自の課題もあります。このように医師不足は深刻であり、医師確保のために県が積極的に対策を打たなければ、将来県民が子供を安心して生み育てることが不可能になる事態が生まれると考えます。
そこで、知事に伺いますが、医師確保対策は待ったなしの課題と考えますが、いかがお考えでしょうか。また、医師不足は国による医師養成の抑制策に起因しますが、国に対して医師養成数の拡大を強く要望していただきたいのですが、併せて見解を求めます。
私は、医師確保対策として、第一に、県は、既に専門も定まった後期臨床研修医を対象に給与上乗せ制度を持っていますが、この制度を更に拡充すべきと考えます。第二に、もっと早い段階で、ふるさと埼玉のために働きたいという医師を育成するため、前期臨床研修医への支援や医学生に対する奨学金を創設すべきと考えています。この2点について、保健医療部長の答弁を求めます。
産科、小児科医は女性の割合が高いと言いましたが、若い世代では更に女性の比率が高まります。女性医師を支援している先進的な医療機関の取組を広く紹介するとともに、他の医療機関に対しても、知事を先頭に女性医師が働きやすい環境づくりを働き掛けていただきたいのですが、知事、いかがでしょうか。
また、十分な設備や人的体制を整えた24時間型の院内保育所、特に院内病児保育所が求められています。これは看護師確保にも有効であり、県として院内保育所充実のため特別の支援をお願いしたいのですが、保健医療部長よりお答えください。
A 上田清司 知事 はじめに医師確保対策についての考えについてでございます。
医師確保対策は本県の医療体制の整備に関わる喫緊の課題であると考えております。
とりわけ、産科医・小児科医の確保は安心して子どもを生み育てられる環境づくりという観点からも、極めて重要な課題であります。
そこで、産科・小児科を専攻した後期研修医の県内誘導を図るととともに、病院の整備計画の公募により高度・先進的な医療機関を整備し、県内で働く医師の確保に努めてまいります。
さらに、今後は開業医が夜間、休日において地域中核病院の診療に携わる体制づくりも進めていきたい、このように考えます。
次に、国に対する医師養成数の拡大要望についてでございます。
医師確保に係る根本的な対策は、医学部定員の拡大、不足感のある特定診療科の診療報酬の厚遇など、国の施策に負うものが多いことが事実であります。
このため、医学部定員の拡大も含めて、全国知事会、八都県市首脳会議など、あらゆる機会を通じて国に要望してまいります。
また、先日、舛添厚生労働大臣と全国知事会メンバーの意見交換の際、需給バランスを見込んだ医師の定数管理を進めていただきたい旨を提案したばかりでございます。
次に、女性医師が働きやすい環境づくりを働きかけることについてでございます。
平成16年度の国の統計資料によりますと、本県の女性医師は1,528人で医師全体の16.8%になっています。
また、医学部での女性の割合も年々増えており、医師国家試験の合格者も3割以上が女性になっています。
やがて、これらの女性医師が結婚・出産を迎え、やむなく離職される方が増えることも予想されます。
そこで、女性医師の勤務環境を改善するため、院内保育所の整備に努めております。
平成17年度は全病院のうちの43.8%に設置がされており、これは全国4位の高い割合となっております。
引続き、院内保育実施率の向上に努めてまいります。
また、本県は我が国女性医師の第一号である荻野吟子女史の出身県でもあります。
その後輩の方々である日本女医会埼玉支部の皆様が女性医師の勤務環境の改善に関するパネルディスカッションを計画されております。
県も全面的に協力して先進事例の紹介や他の医療機関への情報発信に最大限努力をいたします。
いずれにしましても、女性医師が働きやすい環境づくりに向けて、県といたしましても、全力を挙げて取り組んでまいります。
A 宮山徳司 保健医療部長 まず、産科数減少の実態と対策についてでございます。
本県における産科・産婦人科を標榜する医療施設は、出産数の減少と相まって、平成8年の300施設が、平成17年には246施設に減少しております。
しかし、医師数は増加し、また、一医療機関当たりの医師数が増え、産科医の集約が進んでいることが伺えます。
一方で、低体重児、高齢出産など、ハイリスク分娩が増えていることから、県では、周産期母子医療センターの新設、NICU病床の増設を図っているところでございます。
次に、後期研修医を対象とした給与の上乗せ制度の拡充についてでございます。
この事業は、医師不足に悩む地域の病院に、即戦力として、小児科・産科の後期研修医を派遣するものでございます。
今後、より多くの後期研修医が、本県での勤務を希望するよう、対象科目や受入体制について工夫してまいります。
次に、前期研修医への支援や医学生への奨学金の創設についてでございます。
奨学金による医師確保には相当の年数を要するため即効性に欠けます。
そこで、研修病院に魅力ある研修プログラムの策定を支援することにより、受入体制の環境整備を進め、1人でも多く、前期の臨床研修医の県内誘導を図っております。
平成18年度においては、前期の臨床研修医が前年に比べ39人増え、増加数は全国第2位となっております。
本県で研修を行うことにより、人的ネットワークが広がり、県内定着に繋がっていくものと期待しております。
次に、病院内保育についてでございますが、女性医師、看護職員の離職防止や再就業の促進を図るため、重要な対策と考えております。
県では、保育施設を設置している病院や診療所に対し運営費を補助しており、平成19年度は94病院に交付いたします。
特に、24時間の保育を行う72病院には加算を行っております。
病児保育につきましても、病院に対する補助制度がございますので、病院に紹介するなど、女性医師や看護職員の働きやすい環境づくりに取り組んでまいります。
Q 再質問 柳下礼子議員 まず、小児科、産科の医師確保対策についてです。
この点では、日本医学会総会のシンポジウムで、日本の産科、小児科医療は崩壊のプロセスに入っている、待ったなしの改革が必要というふうに語られたそうです。先ほど、本県の産科医数については、医師1人当たりの分娩数がワーストワンになっていると私、申し上げましたけれども、医師1人当たりの分娩数の全国平均が104人のところ、秩父は172人、児玉は187人と、医療圏によっては更に医師が驚異的な分娩数を扱っているんです。私は、もっと早期から、ふるさと埼玉のために働きたいという医師を育成するためには、どうしても医学生らに対する奨学金制度をつくる必要があると思います。
また、医療法人のある先生と医師確保対策で懇談しました。そのときに、この医療機関でも奨学金制度を持っているんですけれども、奨学金制度はそんな大した金額ではない、月にすれば。けれども、奨学金を支給して、繰り返しその医学生と接触して、悩みなども相談に乗るし、病院も見学してもらう、埼玉に来て働いてみようかな、そういうふうな人間的なつながりができるということで、医師の仕事の大切さ、やりがい、特に使命感、そういうものを培ってもらうための奨学金は理解のツールだというふうに言われました。
そこでお尋ねしますけれども、県も奨学金制度をうまく活用して、埼玉県内の医療機関と医学生の交流を支援してはいかがでしょうか、再度部長の答弁を求めます。
次に、女性医師対策ですけれども、これは知事からも、荻野吟子さんの出身県だということで力を入れていきたいというお話がありました。その上に立って質問ですけれども、特に小児科、産科には女性の医師が多いという点では、一般的に女性のチャレンジ支援ではなくて、特にこの分野に限って女性医師確保のための特別な対策が必要だと私は思います。
紹介しますけれども、女性医師数全国一の東京女子医大病院の主任教授がおっしゃっております。「ゼロか一かを求めるのでなく、1人で0.5人でも、医師不足の中では大変貴重である。そして、これが数年たてば一人前に戻る。ある時期サポートして、その連鎖をうまく繰り返すことができれば、女性医師の息の長い活躍が期待できるのではないか」というふうに語っております。
また、大阪厚生年金病院では、産休、育休の確保とともに、小学校在学までは育児支援期間として週30時間労働でも常勤と認める、また短時間勤務を認めています。また、病児保育を小児科内で行っています。NPOの女性医師のキャリア形成・維持・向上をめざす会という団体があるんですけれども、この団体が、女性医師を支援している医療機関を認定しているんですけれども、紹介した大阪厚生年金病院も認定病院です。残念ながら、埼玉県の病院はまだ認定されていません。
そこで、お尋ねしますけれども、県はこの間、女性のチャレンジ支援、子育て応援に取り組んでこられましたけれども、保健医療部長より、特別の対策について、知事も女性が各分野において活躍することが大事というふうに今議会でも述べておりますので、この点について再度お尋ねします。
A 宮山徳司 保健医療部長 産科医・小児科医の確保につきましては、様々な対策が考えられると思います。
私どもといたしましては、勤務医の勤務環境の改善、それから、地域の中核となる病院を開業医が支援する仕組み、病院において医師に代わり分娩を担う助産師の育成、それから、ハイリスク時における母体搬送先情報の提供、こういったことが必ず必要となると思いますので、セットで進めていきたいと思っております。
それから、女性医師の関係でございますが、大変ありがたいことに、日本女医会埼玉支部の皆様と関係ができました。
これから、しっかり協働して進めてまいります。
後期高齢者医療制度について
Q 柳下礼子議員 昨年6月に自公政権が強行した医療制度改革法により、来年4月から後期高齢者医療制度が発足します。75歳以上の人を後期高齢者としてくくって、ほかの世代から切り離し、際限のない負担増に追い込むとともに、受けられる医療も制限するという内容です。今、この制度の中身が知られるにつれ、高齢者や医療関係者だけでなく、広範な国民の間から一斉に批判の声が沸き起こり、福田内閣と政権与党も慌てて部分的な手直しに乗り出しています。
しかし、自民党と公明党の与党間で合意した中身は、(1)新制度導入に合わせて70歳から74歳までの高齢者の窓口負担を現行の1割から2割に増やすのを1年延期をする。(2)75歳以上の被扶養者が新制度で負担を迫られる保険料を半年凍結し、あとの半年は保険料を1割に減額するというものです。しかし、与党合意の保険料凍結は被扶養者にかかわる部分だけで、国保から移される人など大多数の負担には配慮がありません。
もともと被扶養者の保険料は、当初の2年間保険料の所得割を凍結し、均等割を5割に抑える激変緩和措置が法律に盛り込まれています。与党合意は、激変緩和措置の手直しにすぎません。将来の保険料の値上げを自動化し、高齢者の生活費から有無を言わせず保険料を取り立てることは、高齢者の生存権を脅かすものであり、知事は、後期高齢者医療制度の来年四月からの実施を中止するよう国に働き掛けるべきと考えますが、見解を求めます。
去る11月21日、埼玉県後期高齢者医療広域連合の議会が開催され、保険料などを定めた条例が可決されました。政府は、後期高齢者医療の保険料を全国平均で7万4,400円と説明してきましたが、埼玉の保険料は年額平均9万3,990円と全国平均を大きく上回っています。
後期高齢者医療制度においては、都道府県も、医療費の財源となる負担金、広域連合の財政リスクを軽減するために導入された財政安定化基金、高額医療費に対する支援、保険基盤安定制度に対する財政支援などの負担が義務付けられていますが、来年度これらの負担をそれぞれどのぐらい見込んでいるでしょうか。また、後期高齢者医療制度施行に向けて、広域連合より知事あてに、施行に向けての人的支援を含む財政支援等についての要望が提出されていますが、この要望に対し県はどうこたえる方針でしょうか。
以上2点について、岡島副知事よりお答えください。
A 上田清司 知事 わが国はすべての国民が何らかの公的保険に加入し、一定の負担でいつでも医療を受けることのできる、国民皆保険を実現しております。
しかし、75歳以上の高齢者の一人あたりの医療費は現在の年間約80万から10年後には100万円近くまで大幅に伸びていくと予想されています。
一方、高齢者を支える若い方々の人口は減少していくため、国民皆保険制度の存続が危うくなっています。
こうした背景から、高齢者の方々も含め、みんなで医療保険制度を堅持していこうと国が創設したのが「後期高齢者医療制度」でございます。
まずはその制度を着実に実行し、高齢者の方々が安心して医療を受けることのできる体制づくりを進めることが重要だと考えています。
制度実施後に十分な検証を行い、改善すべき点があれば必要な提言を国に対して積極的に行ってまいります。
A 岡島敦子 副知事 後期高齢者医療制度における県の役割は、制度の運営が健全かつ円滑に行われるように広域連合と市町村を支援することにあります。
議員ご指摘のとおり、財政支援のためのさまざまな負担が法律で県に義務づけられています。
例えば、広域連合の財政上のリスクに対応するための基金の設置、低所得者に対する保険料軽減措置への補填などが新たな負担となります。
それらを合わせると数十億円に及ぶものと算出しておりますが、来年度予算編成の中で精査を重ね、確実な実行を図ってまいります。
また、広域連合からは職員の派遣による人的な支援、健康診査への補助などの財政的支援についてご要望をいただいております。
県といたしましては、法的な負担も大きく、財政的には厳しい面もございますが、高齢者の方々が安心して医療を受けることができますよう、必要な支援を検討してまいります。
埼玉県医療費適正化計画(仮称)の策定について
Q 柳下礼子議員 来年から施行される高齢者の医療の確保に関する法律に基づく第一期医療費適正化計画策定作業が本県でも進んでいます。計画案では、回復期リハビリテーション病棟にある療養病床を除く療養病床数について、2006年10月現在、3,515床ある介護療養病床を2012年までにゼロにし、医療療養病床については9,110床を7,100床ないし9,800床にする計画です。
しかし、県が実施した療養病床アンケート結果でも、介護療養病床3,250床のうち、転換先未定又は廃止予定の介護療養病床としている医療機関が24.9パーセント、1,504床もあります。転換意向が未定の理由としては、経営の見通しが不透明である、施設の改修に費用がかかる、転換先の介護施設などの基準、報酬が明確でないなどが挙げられています。このアンケートの結果からも、介護療養病床の廃止は全く現実にそぐわない暴挙だと考えますが、知事の見解を求めます。
ところで、県は、医療療養病床数の目標を国基準の7,100床では現実に合わないとして、目標を7,100床ないし9,800床と幅を持たせ、引き続き転換見通しを精査した上で目標病床数を決定するとしています。しかし、医療療養病床の目標が上限9,800床というのは現実的な数字なのか、甚だ疑問に感じます。
私が先日訪問した地元のある病院では、120床ある介護療養病床を60床にし、残る60床は期限ぎりぎりまで維持したいと話しておられました。廃止した60床は医療療養病床に転換し、介護療養病床を出ざるを得なくなった患者さんたちを受け入れているということでした。病院の事務長さんは、「介護療養病床の6ないし7割は後期高齢者で、自宅に戻れるのはほんのわずか。高齢者が増え、医療への依存が高まっている。医療区分1で在宅介護といっても、机上で描いたプランにすぎない」と話されておりました。
この病院のように、介護療養病床が廃止されれば、行き場のない患者は医療療養病床へ流れ込み、医療療養病床の需要は更に高まるのではないでしょうか。私は、県が国基準どおりにしなかったことについては評価するものですが、更に踏み込んで、実態に即した医療療養病床数の目標を設定すべきと考えますが、保健医療部長の見解を求めます。
A 上田清司 知事 議員お話しの療養病床アンケート調査は、本年8月現在で、療養病床を有する医療機関の意向をお聞きしたものでございます。
調査結果では、介護療養病床が廃止となる平成23年度末ぎりぎりまで存続させたいという医療機関の病床数が695床ございます。
直接患者さんを預かっている医療機関の決意は重く受け止めなければならないと思います。
国は療養病床再編の趣旨について、患者さんの状態に即した適切なサービスを提供することと説明してます。
また、社会的入院を解消し、医療スタッフを医療が必要な現場に戻すという意味もあると言われております。
医療の必要が高い人には医療療養病床で、医療よりも介護が適している方には介護施設でのサービスが望ましいと言われております。
そのため、介護療養病床を介護老人保健施設へと転換を促進しようとしているものでございます。
しかし、今回の再編は県民生活への影響が極めて大きいものと受け止めております。
私はこの再編に当たっては、いわゆる介護難民や医療難民を生じさせないことを第一に対応したいと考えております。
今後、医療機関の転換意向が明確になってまいりますので、転換分に見合った介護老人保健施設など介護施設の整備を進めてまいります。
また、療養病床の需要も依然残りますので、医療費適正化計画の中で、県民に安心していただける医療療養病床数を確保してまいります。
A 宮山徳司 保健医療部長 お話のとおり、介護療養病床の患者さんの中には医療の必要性の高い方が一定割合おられます。
国の算定式においても、このような方の人数を加算することになっております。
しかし、本県では、さらに上乗せして、最大で9,800床までの範囲で検討しております。
上乗せの根拠はいくつかございます。
まずは、一般病床と療養病床の比率における全国格差でございます。
九州・四国地方は一般病床と療養病床の比率が5対5でございます。
関東地方は、ほぼ7対3で、本県も同様でございます。
九州・四国のように療養病床の比率が高い地域と同じ計算式で算定することはできないと考えております。
また、本県は人口当たりの療養病床数そのものが少ない県でもあります。
さらに、今後、全国で最も速いスピードで高齢化が進むこと、高齢者の一人暮らし世帯の増加率が全国1位と見込まれること、県外からの高齢流入患者が全国一多いことなどの特殊事情もございます。
こうした考え方を国に対して十分説明し、医療を必要とされる方が困ることのないよう、必要な医療療養病床数を算定してまいります。
障害者自立支援法の見直しと県障害者施策の充実について
Q 柳下礼子議員 障害者自立支援法施行から1年半がたちましたが、障害者の間では、自立支援法ではなく、自殺支援法などと呼ばれています。法施行後、障害者がかかわる心中事件が全国で40件余りも発生しているからです。埼玉では今月5日、さいたま市文化センターに1,200人を超える人を集めて、障害者自立支援法見直しと障害者福祉の推進を求める県民集会が開かれました。集会では、自立支援法の1割の応益負担、食費やホテルコストが障害者を苦しめている実態が報告されました。
共同作業所などでつくる共作連埼玉支部の調査によりますと、県内の各障害児者施設、232施設で2006年度に退所した人が75人、通所日数を減らした人が69人、食事をとる日数を減らした人が117人に上っています。しかも、利用料の滞納者が160人も生まれています。滞納理由の第一は、負担が多く、家族の暮らしが成り立たないというものです。施設報酬の単価引き下げ、日割り計算も障害者と施設を苦悩させています。施設については、国、県の特別支援策が講じられたとはいえ、1割の減収といいます。それでなくともぎりぎりだった施設経営は極度に苦しくなり、共作連調査では、36施設で職員の賃金を減らして対応しています。
集会では、「障害があるがゆえに特別な利用料金を払う。障害が重ければ重いほど利用料が増える。トイレ介助や食事介助がなぜ益なのか」と語りかけられました。知事は、こうした声をどう受け止めますか。自立支援法の応益負担と報酬単価の日割り方式を撤回するよう国に働き掛ける考えはありませんか。明確な答弁を求めます。
埼玉県は、県単独事業である心身障害者デイケア事業と生活ホーム事業の補助金5パーセント削減と、生活ホーム事業の日額方式導入を今年度になって強行しました。自立支援法で、それでなくても苦悩している障害者施設が、この連絡を市町村から受けたのは5月に入ってからといいます。このために、施設には大変な混乱が生まれました。
そこで、福祉部長に伺いますが、施設への事前の説明もなく、このような見直しをなぜ今年度になって突然実施したのでしょうか。入所者6人の生活ホームでは1割もの減収と聞いています。補助金の削減を撤回してほしいというのが県民集会で出された要求ですが、県はこの声にどうこたえるつもりでしょうか、併せてお答えください。
なお、福祉施設職員の減少が施設の運営を苦境に立たせています。知事は、3年前に民間社会福祉施設職員の処遇改善費を廃止してしまいましたが、福祉施設で働く職員の処遇改善なしには人材の確保が難しいのが現状です。処遇改善費については復活すべきと考えますが、知事よりお答えください。
A 上田清司 知事 まず、県民集会での県民の声をどう受け止めるかについてでございますが、皆さんの声はよく私も聞いておりますので、概ね理解ができます。
次に、障害者自立支援法の応益負担と報酬単価の日割り方式を撤回するよう国に働きかける考えはないかについてでございます。
私は障害者自立支援制度において、地方の意見に十分耳を傾けることなく制度設計を行ったために、現場での混乱が生じたものだというふうに思っております。
現場の声を受け、国においては本年4月から利用者負担の更なる軽減や事業者の収入に対する激変緩和のための特別対策を講じました。
県においても、御承知のとおり、平成19年度予算で利用者負担軽減策2億円、事業者の激変緩和のための特別対策事業費25億円など自立支援法関連予算として132億円を計上したところでございます。
県では、今年の8月から9月にかけて、利用者や事業所に対して特別対策の影響に関する調査を実施しました。
この結果、負担を理由にした退所者の減少や施設の収入の改善など一定の効果が見られています。
具体的には、負担を理由とした退所者は特別対策の実施前には8か月間で48名でしたが、実施後の3か月では1名に減少しております。
また、法施行後の施設の収入は施設全体で法施行前の92.9%でした。
特別対策の実施により、知的障害者通所授産施設では法施行前の94.3%に、施設全体では99.6%まで改善してきております。
この特別対策は平成21年3月までの時限措置でありますから、福祉の現場や関係者から不安の声が寄せられています。
「とことん訪問」においても、障害者の働く現場を訪れた際に制度改善を求める切実な声も聞きました。
このため、関東地方知事会議で「特別対策の効果を十分検証し、利用者負担の軽減措置や、事業所が安定して経営できるような措置を講ずるなど、速やかに制度全般にわたる見直しを行うこと。」という提案を行っております。
関東地方知事会議では、各都県の抱える課題のうち1本を提案することになっております。
その1本を、障害者自立支援法の見直しなど福祉問題に絞って提案をしました。
この提案が採択され、関東地方知事会から国に対して強く要望を行っておるところです。
今後とも障害のある方々の声に十分耳を傾けるとともに、国の動きを注視しつつ、必要な働きかけを行ってまいります。
次に、福祉施設で働く職員の処遇改善費を復活すべきではないかという御質問であります。
職員の給与については、国の責任で対応すべきものと考えております。
このため、処遇改善費補助については、平成16年度をもって大阪府とともに廃止し、現在、全国で実施しているところはございません。
私は先ほどの関東地方知事会議の席上で「福祉サービスを担う人材を確保するためには、現行の報酬制度を見直すべきである。」という提案を行いました。
この提案が採択され、関東地方知事会から国に対し強く要望を行ったところです。
アプローチは異なりますが、思いは柳下議員と同じであります。
A 石田義明 福祉部長 県では、昭和63年度から、地域における日中活動の場である「心身障害者地域デイケア施設」や共同生活の場である「生活ホーム」に対する運営費の助成を行ってまいりました。
これらの県単独補助事業につきましては、障害者の地域生活支援を進める上で重要でございます。
他の都道府県では、障害者自立支援法が施行されたことや、地方自治体をめぐる厳しい財政状況から事業を廃止するところも出ております。
本県では、平成19年度予算の編成に当たり、財政状況が厳しい中ではございますが、これらの制度の維持を最優先とするため、補助単価等の見直しをいたしました。
なお、定員が10人に満たない小規模な心身障害者地域デイケア施設につきましては、従前の補助単価を維持しております。
制度の変更につきましては、2月議会終了後直ちに事業の実施主体でございます、全市町村を集めて周知を図りました。
そして、新年度に入り直ちに要綱を改正し、5月に周知しました。
次に、補助金の削減を撤回してほしいという声にどう応えるつもりかについてでございます。
県は、心身障害者地域デイケア施設や生活ホームが国の制度である地域活動支援センターやグループホームへ移行することを進めております。
このため、本年度から地域活動支援センターに対する県単独の上乗せ補助制度を創設いたしました。
また、グループホームの整備が進むよう、運営費や入居者に対する夜間支援体制充実のための上乗せ補助も併せて創設いたしました。
これらの補助制度を積極的に活用することにより、小規模な事業者も経営の安定化が図られることとなるものと考えております。
今後とも、障害者の自立した地域生活を支援するため、身近な地域における日中活動の場や暮らしの場の確保・充実に努めてまいります。
Q 再質問 柳下礼子議員 先ほど知事からも、障害者の気持ちについては分かったと、伺っているというような、声をどう受け止めるかについて、おおむね理解できますというふうにありましたけれども、でも私、この障害者の集会に参加いたしまして、この県民集会のパンフレットの川柳にこういうのが載っていました。「休みます ため息ついて 受話器置く」、どういうことかと言いますと、施設の報酬が日割り計算になってしまって、自分が休めば施設全体に迷惑かけてしまう、でも体調が悪くて、どうしても出られないという気持ちを詠んだ句です。自立支援法が障害を持つ方たちにこんなつらい思いをさせているんです。
なぜこんな折に、私が聞きたいのは、県単補助削減なのか。自立支援法の施行で施設の収入は1割減っているんです。雇用情勢の変化で指導員も集まらない。灯油やガソリンや諸物価の値上げも、障害者の施設に重くのしかかっているんです。私は、そういう面で、なぜ今デイケア施設や生活ホームの補助を5パーセント削減しなければならないのか。今からでも遅くはないから撤回していただきたいと思います。
A 石田義明 福祉部長 先程もお答え申し上げておりますが、各施設が将来にわたってより安定した運営が図られるためには、国の制度である地域活動支援センターやグループホームに移行することが大事だということで、現在力を注いでおります。
そのため、県としては、移行先の地域活動支援センターやグループホームの運営が安定するよう、上乗せの支援措置を講じたところでございます。
その中でも移行できない施設に対しては、今後も県単の補助制度を維持することが重要だと考えておりますので、制度維持にも努めてまいりたいと考えております。
Q 再々質問 柳下礼子議員 私は、今、障害者が大変なときに、ガソリン代も上がったりして車の送迎とかも大変な時期に、なぜ5パーセント削減するのか、これをもとに戻しなさいという質問をしているんです。これにしっかりと答えていただきたいと思います。
A 石田義明 福祉部長 先程も申し上げましたけれども、県単独補助事業の制度を維持するということを考えております。そのためには、補助単価の見直し等も時には必要であると考えておりますので、御理解賜りたいと存じます。
子どもたちに豊かな放課後を保障する放課後児童クラブの充実について
Q 柳下礼子議員 私の2人の子どもも学童保育でお世話になりました。児童数は年々減少しても、学童保育の入所希望者は増加の一途で、今県内の学童保育の多くが大規模化しています。
昨年度、国は放課後子どもプランの中で、放課後等の子どもたちの安全で健やかな居場所づくりを進める放課後子ども教室推進事業と放課後児童健全育成事業のそれぞれ全小学校への設置や、70人を超える学童クラブの3年間という期限を切っての分割などの方針を示しました。
先日、私は所沢市内の学童クラブにお邪魔をしました。入所者が70人強と大規模で、子どもたちがやってくるとすごい喧騒で、本の読み聞かせも、叫ぶように読まないと聞き取れない。計画や目標を立てて、毎日毎日トラブルに追われて、その日暮らしの保育が続いているという指導員のお話でした。幸い、この学童クラブは来年度分割するということでした。国は、3年間で分割するという方針を示していますが、機械的に3年と期限を区切ることなく、早急にこのような状況を改善してほしいと思いますが、大規模学童保育の実態、分割の取組について明らかにしてください。
さて、分割の際に、県はなるべく小学校の空き教室を利用してほしいと考えておられるようですが、残念ながら、学童保育の児童数が急増している地域は学校の児童数も増えて、空き教室がない場合が多いのです。分割の際の補助を校外の単独施設であっても活用できるよう拡充すべきと考えます。
なお、国の放課後子どもプランについてですが、県外では、学童保育を放課後子ども教室に改称しようという動きもあるようです。学童保育は生活の場、放課後子ども教室はあくまですべての子どもを対象として、安全・安心な子どもの活動拠点であって、一体ではなく、それぞれ別の事業として充実を図るべきと考えます。その上で、学童保育は一刻も早く全小学校につくっていただきたいと思いますが、以上の点について福祉部長よりお答えください。
次は、学童保育で広がっている指定管理者制度の導入についてです。
学童保育は、子どもたちが生活する場です。指導員と子どもたちとその保護者は、長い時間をかけながら信頼関係を育てていきます。指定管理者制度は、3年から5年で事業者を新たに選定し直す制度ですが、こうした制度で学童保育の信頼性、継続性が確保できると県はお考えでしょうか。
また、各地で保護者や子どもたちの気持ちを完全に無視した指定管理者押し付けも行われています。指定管理者制度を導入するに当たっては、利用者である児童や保護者の理解と納得が得られることが前提でなければならないと考えますが、いかがでしょう。
自治労連が行った全国調査によりますと、指定管理者制度発足後4年間で既に指定取り消し事例が多数生まれています。その内訳を見ますと、指定管理者に占める民間企業の割合は11パーセントにすぎませんが、指定取り消し事例に占める民間企業の割合は50パーセントを占めています。学童保育は、夏休み中も含めて、いっときも中断できない継続性が求められる事業です。民間企業は、学童保育の指定管理者にとりわけなじまないものと考えますが、以上の点について福祉部長の見解を求めます。
A 石田義明 福祉部長 まず、「大規模学童保育の実態と分割の取り組みについて」でございます。
本県におきましても、放課後児童クラブへの登録児童数は年々増え続けており、834クラブ中、94クラブが大規模クラブとなっております。
クラブの大規模化は、施設が狭隘となり、また、一人一人にまで細かく目が行き届かないなど、児童の処遇低下が懸念されます。
このため県では、大規模クラブが発生している市町村に対して、計画的な解消に努めるよう、強くお願いをしているところです。
なお、大規模クラブ解消にあたって、既存施設の増改築や新設などの施設整備が必要となる場合がございます。
県では従来から、安心・安全に配慮して、学校施設を活用する場合の施設整備について助成してまいりました。
すでに学校施設で実施しているクラブが大規模化した場合については、当面は学校に近い児童館や公民館を利用するなど、それぞれの市町村の実情に応じた工夫や対策を促しているところでございます。
国に対しては、大規模クラブ解消に係る市町村への特別支援策について、強く要請してまいります。
次に、「放課後子どもプランについて」でございます。
現在、小学校数を超える834か所の放課後児童クラブが設置され、留守家庭の子ども達のための「生活の場所」として運営されております。
また、子ども達の遊びや育ちのための「居場所」づくりとして、学校施設の開放や、週末、夏休みなどに「放課後子ども教室事業」が実施されております。
放課後の子どもたちが安心して過ごせるため、それぞれの事業の良いところが機能するよう、今後とも取り組んでまいります。
次に、「指定管理者制度の導入について」でございます。
現在、市町村の条例により設置された放課後児童クラブは471か所あり、そのうち301か所が直営、残る170か所が指定管理者による管理となっております。
管理者として指定された事業者は、社会福祉協議会、社会福祉事業団、NPO法人、父母会などでございます。
放課後児童クラブを直営とするか、指定管理者とするかの選択や、指定管理者の選定方法などにつきましては、事業を実施する市町村が、それぞれの実情などに基づき決定するものでございます。
なお、指定管理者に移行するなどの際には、クラブの運営に混乱が生じないよう、事前に、保護者や指導員等に対して十分な説明を行い、理解を得られたうえで実施するよう、市町村にお願いをしております。
特別支援学校の教室不足の解消対策について
Q 柳下礼子議員 特別支援学校の教室不足が深刻です。私も先日、所沢養護学校に足を運びましたが、多くの教室が2クラスで共有されていて、廊下に教材が置いてあるなど大変な状況でした。そこで、教育長に伺いますが、全県の特別支援学校の教室不足の実態について明らかにしてください。県障害者福祉課によりますと、この5年間で障害児の数は1万700人から1万2,400人へと増加しているそうです。今後、特別支援学校への進学者が更に増加するのは確実ですが、どのくらいの増加を見込んでいるでしょうか、併せてお答えください。
県はこの間、高等養護学校2校の新設に加え、特別支援学校分校を3校増設し、さらに上尾東高校校舎に養護学校の新設を予定しています。しかし、県南西部については計画はありません。所沢養護学校に限らず、和光南も15クラス分の教室が不足しています。そこで、今度は県南西部の特別支援学校の新設を検討していただきたいと思います。所沢市東部にある所沢東高校は、新座北高校との統廃合により既に生徒募集を停止しておりますが、廃校となった段階で、この跡地を利用して新設が検討できないでしょうか。教育長の答弁を求めます。
なお、所沢に住む肢体不自由児の保護者からは、和光養護学校に通うのは大変なので、所沢で受け入れてほしいという要望もいただいています。この点も是非考慮に入れていただきたいと思います。
ところで、特別支援学校への進学者数は確実に増加していきます。そこで、教室不足を解消するための年次計画を立て、必要な学校の増設を計画的に推進し、保護者や学校関係者の不安を解消していただきたいと思いますが、知事の見解をお聞かせください。
A 上田清司 知事 特別支援学校の児童生徒が毎年増えており、教室不足が全県的に生じていることは私も十分認識しております。
そのため、教室不足の解消を目指し、これまで順次、必要な対策を講じてきております。 まず、本年4月に、「さいたま桜高等学園」「羽生ふじ高等学園」の2校を開校しております。
また来年4月には、川越養護学校川越たかしな分校など、高等学校内に特別支援学校高等部の分校3校を開校する予定です。
さらに、平成21年4月には、上尾東高の校舎を改修して新たな特別支援学校を開校する準備を進めております。
私は障害を乗り越えようと精一杯努力している子どもたちが安心して学びその可能性を最大限にのばすことができる教育環境を整備することは、行政の責任であると考えております。
そこで、「ゆとりとチャンスの埼玉プラン」の中にも「特別支援教育の推進」を位置づけ、教室不足の解消に取り組んでおります。
厳しい財政状況でありますが、今後も教育委員会とともに、障害のある児童生徒が安心して学ぶことができる教育環境の整備を計画的に進めてまいります。
A 島村和男 教育長 まず、「全県の特別支援学校の教室不足の実態について」でございますが、特別支援学校の児童生徒数は、このところ急激に増加しており、平成19年度におきましては、学校が保有する普通教室数と学級編制基準に基づく承認学級数との間に、250の差がございます。
次に、「今後、どのくらいの増加を見込んでいるのかについて」でございます。
本県の特別支援学校に在籍する児童生徒数は、平成9年度以降、年々増加し、平成19年度の児童生徒数は4,671人で、平成9年度と比べますと、この10年間で約1.3倍と大幅に増加しております。
全県の児童生徒数が減少傾向にあるにもかかわらず、特別支援学校の児童生徒数が増加していることから、具体的な数を的確に見込むことはなかなか難しい面がございます。
しかしながら、過去の推移からいたしますと、この傾向はここ数年続くものと考えております。
次に、「南西部の特別支援学校の新設について」でございます。
県南西部地域におきましては、平成20年4月に川越養護学校川越たかしな分校を設置するため、鋭意、準備を進めておりますが、なお、特別支援学校の教室不足の状況が続くことが見込まれます。
これまで、特別支援学校の教室不足を早期に解消するため、県有施設の有効活用により高等養護学校や高校内分校などの設置を進めてまいりました。
今後、県の南西部地域におきましても、県有施設の有効活用も含め、早期に特別支援学校の教室不足が解消できるよう検討しているところでございます。
また、「肢体不自由特別支援学校の通学環境」につきましては、切実な課題であると受け止めておりますが、当面、喫緊の課題である知的障害特別支援学校の教室不足の解消を基本として取り組んでまいりたいと存じます。
生産費を賄えるコメの価格安定対策について
Q 柳下礼子議員 今年も下げ止まらない米価の下落に、農家の間から「これでは米づくりが続けられない」という悲鳴が上がっています。今年の米価は、価格形成センターで入札された価格が前年比で7ないし10パーセントも安く、最も高いコシヒカリでも一俵当たり1万4,000円台となっています。農水省の調査で一俵当たりの米生産費は、2006年産で1万6,824円ですから、多くの農家から「肥料代の支払いさえできない」という声が上がるのも当然です。
今日の事態は、政府が米の流通を完全に市場にゆだね、大手スーパーなどの買いたたきを野放しにしてきた結果です。政府自身が決めた100万トンという備蓄も十分しないまま、古米まで安売りし、くず米で増量した低価格米の流通も野放しにしてきました。農民の批判や参議院選挙での敗北を受けて、政府は慌てて34万トンの備蓄米を年内に買い入れるなどの当座の米価下落対策をとりましたが、従来の政策を見直さない限り、今後も同じような事態が繰り返されるのではないでしょうか。
今、農家が何よりも願っているのは、農産物価格の暴落に歯止めをかけて、生産費を賄えるような価格保障を打ち立てることです。県は、そのための対策を強く国に働き掛ける考えはありますか。また、くず米については、本来主食用として流通してはならないものです。くず米の流通を全面的に規制するよう国に強く求めるべきと考えますが、農林部長よりお答えください。
A 関根俊雄 農林部長 米の消費量が減少している中で米の生産量が目標を上回っていることなどから、19年産米の価格は、前年産を大幅に下回ることになりました。
このため、国は、10月29日に、備蓄米を適正水準の100万トンまで積み増すために34万トンを買入れることや、10万トンを飼料用として処理することなどの米緊急対策を決定したところであります。
この結果、コメ価格センターにおける米の入札価格は下げ止まり、現在、価格は上向いている状況にあります。
米の価格を安定させるためには、需給の均衡を図ることが重要と考えておりますので、米の価格保障という面からではありませんが、生産調整に参加する農家のメリットを拡充するよう、引き続き、国に要望しているところでございます。
このような状況にありますので、生産費を賄えるコメの価格保障に係る働きかけにつきましては、御理解賜りますようお願い申し上げます。
次に、「くず米の流通を全面的に規制するよう国に強く求めるべき」でございますが、一般的にせんべいや味噌など加工用に使われている「篩下米」いわゆるくず米につきましては、米緊急対策において、全農がその集荷・販売体制を確立することとされております。
また、JAS法等に基づく取締りを徹底し、不適正な行為に対しては、厳正に対処することも示されたところでございます。
県といたしましても、これらの対策に適切に取り組むとともに、実効性が上がるよう、国に要望してまいります。
品目横断的経営安定対策の見直しについて
Q 柳下礼子議員 国は農産物の一層の輸入拡大を前提に、外国産と競争できる効率的な経営を育てるとして、大規模経営中心の農業に構造改革することを当面の最重点課題にしてきました。そして、決め手として打ち出されたのが品目横断的経営安定対策にほかなりません。
私は先日、熊谷市内で集落営農に加わっている農家と大利根町で13ヘクタールの麦を生産している大規模経営農家を訪ねてお話を伺いましたが、いずれの農家からも、昨年に比べ減収になると訴えられていました。しかも、昨年でしたら出荷から1か月後には一括して代金の支払いがあったのに、今年は8月に一時分の支払いがあっただけで、大規模経営農家の場合、農協から42万円の支払いがあったものの、カントリーエレベーターの利用料などの経費が52万円かかったために、資金繰りに苦労している様子でした。県西部で約40ヘクタールの麦を栽培している大規模農家の場合、この10年間に10ヘクタール耕作地を増やしたにもかかわらず、見込んだ700万円の増収につながらなかったというお話でした。しかも、品目横断対策の場合、助成金の7割が過去3年間の生産実績で支払われるため、規模を拡大するほど反当たりの助成金が減る仕組みで、これでは営農意欲は沸かないという怒りの声が上がっています。
そこで、農林部長に伺いますが、品目横断対策の対象となっている大規模経営農家や集落営農に参加している農家の経営状況について、県は実態調査を行い、必要な対策を国に求めるべきではないでしょうか。また、集落営農の構成員は60ないし70代の人が多く、後継者がいない農家が脱落すると、集落営農そのものが崩壊する危険性がありますが、県はどのような対策を講ずる考えですか。
今、農政が最も力を入れなければならないのは、規模に関係なく農家が安心して営農でき、後継者が希望を持って就農できる条件を整えることではないでしょうか。そのためには、何よりも農産物の価格が生産費を下回る事態を根本的に改善することです。品目横断的経営安定対策については、国に対して見直しを強く求めるべきと考えますが、知事の見解を求めます。
A 上田清司 知事 私はかねてから農業政策については、価格保障をするのではなく、価格は市場に任せ、所得を保障するためにどのような施策をとるかに力点を置くべきと考えております。
本年度から導入された国の品目横断的経営安定対策は、麦などの土地利用型農業について、経営規模の拡大により生産性の向上を図るために必要なものと考えております。
しかしながら、制度が動き始めたところ、農業者を始め各方面から、交付金の支払時期が遅いとか、作付拡大に見合った収入が必ずしも得られていないとか、制度の問題点が寄せられていますので、柳下議員と同様の認識をしております。
県としても、このような現場の声を様々な機会に国に伝えてきたところです。
現在、国では制度の見直しが検討されておりますので、引き続き国に対して必要な意見を申し入れしたいと考えております。
A 関根俊雄 農林部長 まず、「農家の経営状況について」でございますが、本年度は、品目横断的経営安定対策の初年度ということもあり、農家の方々に戸惑いや不安があったと認識しております。
このため、県としても、普及指導員の活動などを通じて現場の実態把握に努めてきたところでございます。
交付金については、支払い時期が遅い、規模拡大に際しては、交付金対象かどうかの面からやりにくいとの農家の声を受け、国に対し改善を要望しているところでございます。
さらに、県といたしましては、年内に所得目標の達成状況などの経営実態調査を国と共同して行い、必要な制度改善について国に申し入れてまいります。
次に「構成員が高齢化している集落営農への対策について」でございますが、集落営農はもとより、40年から50年かけて築き上げた個別経営を次の世代に着実につなげていくために、しっかりと支援をしていかなければならないと認識しております。
集落営農については、品目横断的経営安定対策の導入に併せ、高齢農家や小規模農家も対策の対象となれるよう、72の集落営農を育成してまいりました。
これらの組織では、寄居町の小園地区におきますように、集落内の全農家が役割・能力に応じて共同で農業生産を行っているもの、嵐山町の農業生産法人及び秩父市の大田地区におきますように、担い手や機械作業を行うオペレーターを中心に農業生産を行っているものなど、地域の実状に応じた経営が行われております。
構成員の高齢化が進む集落営農について、こうした取組事例や他県の例をよく分析し、参考にしながら農地の利用についての合意形成や、オペレーターの育成などを含めて、継続して農業生産ができるよう支援してまいります。
米軍所沢通信基地の全面返還と東西連絡道路の建設について
Q 柳下礼子議員 今、在日米軍基地の再編に伴い、岩国市や座間市など全国各地で基地の再編強化に反対する闘いが広がっています。所沢通信基地は、在日米軍の中枢基地である横田基地と航空機とをつなぐ航法無線局と説明されていますが、日本平和委員会の平山武久理事が米国防省などの文書を調査した結果、この基地が米軍の短波通信機能の近代化を図るスコープコマンド計画の対象となっており、その任務の一つである緊急行動メッセージ(EAM)は、核攻撃部隊への指揮・コントロールの通信であることが明らかになっています。この問題は、我が党の塩川衆議院議員が国会でも取り上げ、事実関係の確認を政府に求めましたが、政府は、平山氏が根拠にした米軍文書の存在は認めたものの、その位置付け、詳細について申し上げる立場にないと明言を避けています。
そこで伺いますが、所沢基地の近代化計画について、国あるいは米軍当局に対して情報の提供を求める考えはありますか。また、こうした計画が現に進められているとするならば、基地の機能強化、恒久化につながる事態であり、基地の全面返還を望む所沢市民の願いに反すると考えますが、知事の見解を求めます。
次に、所沢市民が全面返還までの当面の措置として求めている東西連絡道路の建設の問題です。
国は、所沢市の要望を受けて、2003年度から3年間にわたって現地調査を実施していますが、その後の進ちょく状況はどうなっているでしょうか。また、東西道路の建設に伴う経費については、市の基地対策協議会からも、長年にわたり市が受けた様々な障害等を考慮して、日米政府間の問題として国の責任において相応の負担をするよう要望が出されています。沖縄では、全面、一部を問わず、基地の返還に伴い、米軍基地の移転が伴うような場合には、原則国が負担していると聞いておりますが、県の考えについて総合政策部長より答弁を求めます。
A 上田清司 知事 まず、所沢基地の近代化計画について国あるいは米軍に対して情報提供を求める考えはあるのかについてでございます。
国を通して伝えられる米軍の見解は、「所沢通信施設は横田基地と米軍航空機を結ぶ情報業務を行う施設である。」というものでございます。
それ以上の内容については、軍事機密を理由に十分な情報提供がなされておりません。
この問題は国防、外交など国政の重要なテーマと密接に関わっており、非常に難しい課題であると言わざるを得ません。
正直言って、国に対しても情報提供がない状況でありますので、県が深追いしづらい課題であるというふうな認識を持っております。
次に、米軍所沢通信基地の全面返還についてでございます。
私は粘り強く働き掛けていくことが全面返還につながる唯一の道であると思っております。
現に東西連絡道路の建設について動きが出てきたことも、これまでの働きかけがあった、その成果ではないかというふうに思っております。
私としては今後も防衛省、外務省をはじめとする国の関係機関に対し、埼玉県基地対策協議会の要望活動などを通じて、所沢市とともに米軍所沢通信施設の全面返還を強く訴えていきたいと考えております。
A 加藤孝夫 総合政策部長 まず、東西連絡道路の建設に向けた進捗状況についてのお尋ねですが、国においては、平成15年度から3年間、東西連絡道路新設に係る調査費が計上され、通行車両による通信施設への影響調査などが行われました。
この調査結果などを踏まえ、所沢市とともに国と協議を重ねましたところ、ようやく平成18年4月20日に、市から国に対する返還要請書が受理されるに至りました。
現在は、日米間の防衛関係に関する協議機関である日米合同委員会のもとに設置されている施設特別委員会において、東西連絡道路用地の返還に向けた協議が行われております。
次に、東西連絡道路の設置に伴う経費についてのお尋ねですが、県としてもこの通信施設により市街地が東西に分断され、市民生活に影響を与えるとともにまちづくりに大きな支障が生じていると認識しております。
このため、県としては埼玉県基地対策協議会において、市とともに、これまでも基地内の建物等の移設費や道路設置費など、東西連絡道路の建設に伴う経費について、国が負担するよう要望してまいりました。
返還の実現を願う地元の熱意は極めて強いものでございますので、一日も早く東西連絡道路用地が返還され、地元所沢市の要望が実現できるよう、市と連携を図りながら、引き続き粘り強く国に働きかけてまいります。