請願に対する柳下礼子議員の討論(07年9月県議会)
日本共産党の柳下礼子です。
議請第12号ないし第14号、議請第5号及び議請第8号について審査結果に反対し、「採択」を求める討論を行います。
まず、議請第12号「妊婦健診の回数を増やすことについて」は、審査結果では「不採択」でありますが、私は「採択」を主張いたします。
奈良県で救急搬送された妊婦が多数の周産期センターに受け入れを拒否されたという問題は、この妊婦が検診未受診で、かかりつけ病院がなかったことに起因するとうかがっております。非正規雇用などが広がるなかで、1回5千円から1万円かかる妊婦健診は経済的負担が重く、受診を控える妊婦が増加しているとも報じられています。妊婦健診は妊娠初期は毎月1回、8ヶ月をすぎると2週に1回、臨月には1週間に1回受診するよう医師から指導されるものです。ですから、厚生労働省もことし1月に妊婦健診は14回まで公費負担することが望ましいという通達を出しているわけです。
埼玉県内の妊婦健診の公費負担の実施状況をみますと、ほとんどの市町村が2回となっており、5回の公費負担でさえ、実施しているのは「ときがわ村」のみで、東京都や神奈川県などと比較して大きく立ち後れております。
委員長報告では不採択の理由として、全市町村で公費負担拡充を検討していることや、交付税措置が5回分しかないことをあげ、啓発も県単独の財政措置は不必要というものですが、これでは本当に安心なお産をサポートするという立場からほど遠いものです。全国的に見ても少子化の進行が著しい本県としては、多くの市町村が厚労省の望ましいとする14回の公費負担に近づけるように、政策的にも財政的にも誘導するのが役目ではないでしょうか。以上の理由から、議請第12号については採択を強く求めるものです。
次に、議請第13号「子ども医療費無料制度の助成対象の年齢拡大を求めることについて」です。審査結果は「不採択」でありますが、「採択」を主張するものです。
来年1月から就学前まで対象年齢が拡大されたことは、多くの保護者たちに喜ばれております。しかし、アトピー性皮膚炎・ぜんそくなどなんらかのアレルギーを持つ子供が3割という数字もあるように、かつては考えられなかったような病気のために、小学生になってからも受診を続ける子どもが増加しています。また鬱状態の中学生が1割を占めるという調査が発表されたように、思春期に近づくにつれてメンタルな病をかかえる子どもも増加しています。従って、こどもに対する医療費助成制度は時代の流れに即して乳幼児にとどまらず小学生や中学生までを視野に入れた制度へと拡充をはかるべきであります。
全県的には、すでに県の対象年齢を超えて実施している自治体が多数生まれています。15歳の年度末までとしている「ときがわ村」や鴻巣市をはじめ、12歳の年度末までという自治体も12市町村にのぼっています。また29の市町村が窓口払いを独自に廃止しています。こうした制度の拡充は、それだけ子育て世帯にとって医療費負担が重く、要望も切実であり、少子化対策としても有効だと各市町村が判断しているからに他なりません。
他県に比べても少子化の進行が著しい本県にあっては、県が先頭に立って制度の拡充を誘導する役割を担っています。以上の理由から本請願の採択を求めるものであります。
次に、議請第14号は、審査結果では「継続審査」でありますが、「採択」を強く主張するものです。
この請願は、「沖縄戦の実相」を子ども達に伝えるため、沖縄戦「集団自決」に関する教科書検定意見を直ちに撤回するよう、国に対して意見書の提出を求めたものであります。
先の大戦で、唯一、住民を巻き込んでの地上戦が展開された沖縄の悲劇は、広島・長崎の被爆による惨禍などとともに世代を超えて受け継がなければならない痛切な歴史の事実であります。大戦末期の沖縄戦は、既に敗北が明らかだった日本軍による本土防衛のための「捨て石」作戦でした。日本軍は、軍人も民間人も区別なく戦場に動員し、米軍上陸前から住民に捕虜になることへの恐怖をうえつけ、「玉砕」を迫って手榴弾を「いざとなったら死ぬように」と配ったのです。「集団自決」による「軍の強制」は消し去りようのない事実であり、教科書検定において「軍による強制」を削除する書き換えが行われたことは、歴史の歪曲であり、絶対に許されることではありません。それは、沖縄戦での悲惨な「集団自決」強制を体験し、語り継いできた沖縄県民の心情を踏みにじる行為にほかなりません。だからこそ、沖縄では9月29日に11万人の県民が集い、「歴史の改ざんは絶対に許してはならない」という抗議と怒りの声をあげたのであります。県民大会で発言した高校生は、「ウソを真実と言わないで下さい」「醜くとも真実を知りたい。学びたい。そして伝えたい」と述べました。
福田首相は「沖縄の想いを重く受けとめる」としながらも、検定を押し付けた文科省の責任を認めない不誠実な態度をとり続けています。しかし、政府が誤りを認め、自らの責任で誤りを正さない限り、問題の解決はありません。渡海文部科学大臣は、「私が検定意見を『撤回せよ』というのは政治介入になる」と責任逃れをしていますが、20年間の教科書検定で一度も意見がついたことのない沖縄戦の記述に検定意見がついたそもそもの発端は、文科省の職員が作成した「調査意見書」にあります。文科省ぐるみの書き換え意見書が、教科書検定審議会に持ち込まれ、沖縄戦の専門家もいない審議会でそのまま決定されたというのが実態であり、それ自体が政治介入と言わなければなりません。
「沖縄の想いを重く受けとめる」というならば、政府は自らの言葉を行動で示すべきであります。よって、議請第14号については、継続審査ではなく、直ちに「採択」し、国に対し検定意見の取消を求める意見書を本議会として提出すべきであります。
次に、議請第5号「県議会の名において近藤善則県議の辞職を勧告する決議を行うことについて」は、審査結果は継続審査でありますが、採択を主張するものです。
近藤議員の選挙違反事件については、8月8日にさいたま地裁が「有罪」の判決を下しています。裁判長はこの判決のなかで、「現金給付はあらかじめ推薦手続きが踏まれることもなく、会計責任者の了解もないまま実行され、極めて異例でずさん。市議選の3か月前に渡し、領収書も求めなかったことから推薦料の交付でないことが裏付けられた」として、無実を唱える近藤議員の主張を退けています。また、裁判長は「捜査段階の供述を翻して、公判では不自然、不合理な弁解に終始し、県議の職にとどまり続け、真剣な反省が見られない」と断罪しております。こうした判決にも係わらず未だに近藤議員が県議会に居座り続けている限り、県議会として議員辞職を勧告することは、政治倫理の確立を求める県民に対して私たちが負っている責任ではないでしょうか。
よって議請第5号については直ちに採択し、県議会の自浄能力の発揮と政治倫理確立をめざす県議会としての断固たる決意を示すべきであります。
次に、議請第8号「県政調査費の使途の明確化について」は、審査結果はまたしても継続審査でありますが、「採択」を主張するものです。
10月9日付の朝日新聞の報道にもありますように、全国の都道府県議会のなかで「1円」以上からの領収書を添付する方針を決めたり条例化している議会は20府県にのぼっています。この他、「5万以上」といった条件付も含めれば、30道府県が領収書の添付を義務づけて使途の透明化に努めているのであります。
他の県でできることが、なぜ本県ではできないのでしょうか。請願理由でも述べられているように、「県民の税金から支払われる県政調査費の使途を全面公開することは、県民一人ひとりに対する議会の責任」であります。
よって議請第8号については、「採択」を強く主張するものです。
以上で、私の討論を終わります。