◆平成19年度埼玉県一般会計補正予算(第1号)の歳出(民生費)に係る質疑
柳下礼子委員
(1)高齢者保健福祉計画推進費について伺う。介護の実態として、老人世帯や独り暮らし世帯が増えており、家庭での介護虐待や施設での虐待がある。一生懸命介護をしていたが、それに疲れて妻を虐待したという事例も聞いている。今回の補正予算は、単身や夫婦のみの家庭の住まい方を調査するというものであるが、高齢者に占める割合はどのぐらいか。厚生労働省の療養型病床削減計画のなかで、有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅などを建設し、介護が必要な方が入所するような計画もあるが、この調査は、どのような目的で行われるのか、また、サービス基盤の整備に役立てるという点での調査の意味はどうか。また、サービス基盤は不足しているようだが、どのような状況か。
(2)在宅高齢者支援事業費であるが、モデル地域を指定するとのことであるが、どのような地域を考えているのか。中心となるのは地域包括支援センターとのことだが、私が直接話しを聞いたところでも大変な仕事をしている。特に集合住宅といわれる、県営住宅や市営住宅では、毎日の相談や対応に追われている。包括支援センター全体を支援していくために、県としては実態をどのように把握しているのか。
(3)児童虐待防止対策についてである。オレンジリボンキャンペーンについては、県民意識の高揚を図るという意味でよいことだと考える。虐待に対しては、早期発見・早期対応が重要だと考える。虐待が発見されるのは、学校の養護教諭、保育園、幼稚園又は医療機関の小児科などである。そういったところで早期発見するために、保育士のトレーニングなどが必要と考えるが、県としてはどのような取組をしているか。
高齢者福祉課長
(1)平成17年度の国勢調査に基づく統計によると、高齢者の単独世帯は、143,123世帯、18.2%である。夫婦のみの世帯は、226,382世帯、28.7%である。今後特に都市部での高齢化が進行することが予想されている。県内には大規模に開発された団地や高齢者住宅があり、そのようななかで、単身か夫婦のみの世帯で、実際にどのようなサービスを受けているのかを調査する。介護保険やその他のサービスがあるが、調査の目的は、そのようなサービスを受ける上で生活の課題としてどのようなものがあるかを把握することである。サービス基盤の整備に役立てるという点では、新たな住居として有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅にどのような人が入居し、どのようなサービスを受け、医療機関との連携がどのように行われているかを調査する。特別養護老人ホームについては、平成23年度に22,500人分を確保することを目指して5か年計画のなかで進めているが、平成18年度末で16,840人分の整備が行われている。今後残りの5,660人の整備を進めながら、安心して介護ができるよう進めていきたい。
介護保険課長
(2)ノウハウの収集や、事業の効果の検証を行う必要があるので、認知症に関するノウハウや熱意がある団体が存在する地域、また、ネットワークを構築する上でコーディネーターが必要であることからコーディネーターが確保できる地域という点から選定を行っていく。地域包括支援センターの実態把握については、県では市町村実地支援ということから、福祉保健総合センター管内で13回意見交換会を実施しており、地域包括支援センター職員が出席している。その際に、業務の実態、行政に対する要望等の意見を伺っている。
こども安全課長
(3)虐待に対しては、早期発見・早期対応が重要であると認識している。そのため、子どもと普段接触がある公的機関の関係者に対しては、虐待を見抜く目と発見をした場合に直ちに通報するということを正しく理解し身に付けることが重要である。そのような観点から、県ではそのような方を対象とした研修会を実施している。具体的には、幼稚園、保育園の保育士等を対象に昨年度研修を行い、今年度はその管理者を対象に研修を行っている。管理者は研修の内容を現場の関係者に周知することとなっている。医師に対しては、医師会と共催で、小児科、産婦人科、整形外科、脳外科医を対象に専門家による虐待を発見するための研修を昨年度から行っている。
柳下委員
(1)在宅高齢者支援事業についてである。包括支援センターの要望・意見を伺っているとのことであるが、具体的にどのような要望・意見があったのか。身近なところでも、妻を看護していた方が、妻を殺して自分も死のうかと思ったような悲惨な例もある。県では、認知症のかかりつけ医のサポートをつくったり、地域医師会との連携などを行おうとしている。しかし、今後介護が必要になる人の半分が認知症と言われている。地域包括支援センターは、現在のところ3人体制で行っているが、困難なケースが多くサービスを増やす必要があることから、独自に4人体制としているような実態もある。また、様々な介護のサービスはあるが、金銭的に受けられないような場合もある。必要なサービスが受けられなければ、それだけ悪化につながる。介護保険のサービスをだれもがいつでもどこでも安定したサービスを受けられるようにするためには、基盤整備とともにマンパワーの確保が必要である。しかし、介護の専門学校で定員割れになったり、勤めたとしても労働強化で賃金も安く働けないということで辞めてしまうある。そのようなことも含めて、高齢者に対する支援事業は、介護保険は市町村だからということではなく、福祉的な観点から県としても独自の支援策を講じる必要があると考えるがいかがか。
(2)児童虐待防止対策費の関係である。県も予防に対して努力しているとのことであるが、特に保育士や養護教諭に対する研修は、一般的なものではなく、それぞれを対象としたものが必要と考えるが、どのように行われているのか。
介護保険課長
(1)地域包括支援センターの職員からの要望・意見としては、次のようなものがある。仕事が非常に繁忙なことから、仕事の内容をよく理解すること。介護予防のケアプラン作成の業務が中心となりすぎて相談業務に人員が配置できないこと。ケアプラン作成の業務はケアマネージャーの事業所に委託できるが、委託した場合の手数料の支払事務が繁雑であることなどである。最後の点については、国保連合会と協力して直接ケアマネージャーの事業所に委託できるよう調整をしている。また、職員の不足については、地域支援の中から地域包括支援センターに交付金が支払われることから、財源確保を国に対して要望している。福祉的な観点からの支援策としては、人手不足が深刻なことから、県としても報酬の引き上げが不可欠であると考え、国に対して介護報酬の引き上げについて要望している。
こども安全課長
(2)研修については、一般的なものではなく、保育士や幼稚園教諭など、対象を限定して行っており、行政側からの説明、専門家による理論、児童相談所でケースを扱っている職員による事例説明を通じた早期発見のポイントなど、内容も極めて専門的なものとなっている。医療従事者についても同様で、レントゲンを掲げて骨折の状況を説明するなど極めて専門的なものである。
柳下委員
(1)児童相談所における虐待の相談件数等も増えており、県も職員を増員していると聞いているが、早期発見・早期対応のためには、さらに職員を増員したり、専門の児童精神科医などの専門職も増やす必要があると考えるがいかがか。
(2)介護の人材の確保のためには、介護報酬の引き上げを国に対して引き続き強く要望していくこと。(要望)
こども安全課長
(1)児童相談所の業務は多忙となってきていることから、平成12年度から18年度の7か年で、直接子どもとかかわる職員を59人増員した。平成19年度については、13人の職員を増員した。今後も、虐待防止法、少年法の改正に対応する必要もあるので、どの程度の職員が必要かを見極めながら職員の確保に努めていきたい。児童精神科医については、今年度の増員分のうち1人は、中央児童相談所の常勤の児童精神科医であり、8月から勤務している。児童相談所からも心強いとの回答を得ていることから、この児童精神科医を活用し、きちんとした心のケアを行っていきたい。
(一般会計補正予算案は採決の結果、全員の賛成で可決)
◆請願「妊産婦健診の回数を増やすことについて」(議請第12号)に対する発言
柳下委員
参考意見を求める。県として、東京都や神奈川県が既に実施していると認識しているので、その点について意見を伺いたい。私は、紹介議員となっているので当然採択を求める。若い世代にとって医療費の負担は大きくなっている。経済的な理由から妊婦健康診査の回数を減らしている妊婦もいる。これが大きな事故につながることもある。当然、回数を増やすべきだということで厚生労働省も通知を出すに至っている。全ての市町村が回数を増やすと言うが、5回以上に健診の回数を増やし、経済的な理由にかかわらず健診を受けられるようにすることが県としての役割である。
よって、議請第12号については、採択を強く主張する。
健康づくり支援課長
神奈川県は、2回が29市町村、3回が1市、4回が1市、5回が2市町村である。東京都は、2回が62区市町村、それ以上の回数のところが18市区町村となっている。
(請願は、採決の結果、自民、公明、無所属議員の反対で不採択に)
委員長
議請第12号の不採択理由としては、「県は、厚生労働省の通知を既に市町村に周知しており、その結果、全市町村に周知しており、その結果、全市町村が公費負担の拡充について検討している。そのため、市町村に対して妊婦健康診査の公費負担回数を増やすことについては、十分啓発されていると考えられる。また、公費負担による拡充分については、国において市町村に対する地方財政措置がなされており、県が、これに加えて、市町村に対する財政支援を行う必要はないため」ということでよいか。
〈了承〉
◆請願「子ども医療費無料制度の助成対象の年齢拡大を求めることについて」(議請第13号)に対する発言
柳下委員
請願の趣旨にあるように、東京都では平成19年11月から区に対する助成を中学校卒業までとしている。県内でも、川越市に続いて、上尾市や草加市などでも対象年齢が拡大されている。本来なら国として子育てを応援するようにすべきであるが、市町村から始まって、県や国を動かすようになっている。アトピー性皮膚炎や小児喘息など長期に治療を要する疾病も増加している。給料目前などは特に大変だとの声も聞かれる。子育て中の親にとって医療費は大きな負担である。本県としては、特に少子化が進展しているので、東京都など他県でも行っているように対象を拡大し子育てを支援すべきだと考える。
よって、議請第13号については、採択することを求める。
(請願は採決の結果、自民、民主、公明、無所属議員の反対で不採択に
委員長
次に、不採択理由について確認する。
議請第13号の不採択理由としては、「乳幼児医療費助成制度は、これまでも、通院対象年齢の拡大や所得制限の緩和を行い、平成20年1月からは就学前の子どもまで対象を拡大するようになったばかりである。県の子育て支援策としては、医療費の助成だけでなく、様々な課題に県の少ない財源を、どのように振り分けていくかを考える必要があり、現状において乳幼児医療費助成制度を中学校卒業まで拡大することは、時期尚早であるため」ということでよいか。
〈了承〉
◆行政報告「埼玉県地域保健医療計画(第5次)案の概要について」、「埼玉県医療費適正化計画(仮称)案の概要について」、「現行の健康増進計画への新たな項目の追加について」及び「地域ケア体制の整備に関する構想(案)について」に対する質疑
柳下委員
(1)埼玉県地域保健医療計画(第5次)案の概要について伺う。周産期母子医療センターの数を6か所から8か所にするとのことだが、具体的な内容について伺いたい。
(2)埼玉県医療適正化計画(仮称)案の概要について伺う。療養型病床について、埼玉県の状況を考慮して目標を設定するのことである。しかし、介護療養病床を3,515床から廃止することについては、多くの市町村から反対の声がある。このことについてどう考えるか。
(3)また、医療療養病床を9,110床から、7,100〜9,800床に設定したのはなぜか。本県の実情を踏まえたことと、厚生労働省の試算の関係はどうか。
(4)地域ケア体制の整備に関する構想(案)について伺う。療養病床転換意向のアンケートで、転換意向が未定である理由として、転換後の経営見通しが不透明や転換先の介護施設等の基準・報酬等が明確でないとの意見が多い。介護報酬も決まらないうちに、これまでは介護療養病床に転換するように進めてきたのに、政府の政策誘導で介護療養病床の転換が求められている。国の方針にすべて従っていては、病院の経営も困難となり、患者も看護難民や医療難民となる。県の考えを伺いたい。
医療整備課長
(1)周産期母子医療センターについては、現在総合医療センター1か所、地域周産期センターが5か所ある。この双方を組み合わせて8か所に整備していく。うち1か所は、平成20年10月に、自治医科大学埼玉医療センターが新たに周産期医療センターとして開所する。
保健医療政策課長
(2)医療療養病床の設置については、介護療養病床の廃止の分も含めて考えていきたい。
(3)医療要領病床の目標値のうち、7,100床というのは、厚生労働省が示した数字であり、医療療養病床利用者を医療の必要程度によって幾つかの段階に分け、それを按分した数字として出してきたものである。9,800床は、人口10万人当たりの療養病床数が、全国平均では281.2床であるが、本県は204.2床であり、そのような本県の実情を考慮して算出した数字である。
高齢者福祉課長
(4)診療報酬・介護報酬の見直しが平成20年4月に行われるので、現在検討が行われている。そのため、転換意向が未定である医療機関が多かったものと思われる。この点については、来年度以降に改めてアンケートを行い、時期の高齢者支援計画に反映していきたい。介護療養病床転換の費用については、国から市町村への交付金として、市町村から助成される。医療療養病床については、医療提供に関しての施設整備交付金として交付されており、介護保険施設や老人保健施設の転換に使われている。現在サービスを受けている患者が今後もサービスを受けることが重要であるので、老人保健施設への転換に際しては、医療機能強化型の老人保健施設について検討するよう国の方で検討されており、支障がないよう対応したい。また、次期の高齢者支援計画を策定するなかで、介護サービスの需要を見込みながら、十分なサービスを提供できる体制整備を進めていきたい。
柳下委員
(1)埼玉県地域保健医療計画(第5次)案の概要について伺う。奈良県で病院搬送を拒否された妊婦が死産するという事件があり、埼玉県で唯一の埼玉医大総合周産期母子医療センターを視察した。そこでの話しでは、奈良県のような事件は、本県でも起こりうるとのことであった。その原因としては、最近はハイリスク出産が増えていることがある。ハイリスク出産は、ここ10年で2倍になっている。搬送の50%は、NICUが満床のため、拒否せざるを得ない実態がある。そのようなことを考えると、県内の周産期母子医療センターをもっと増やさなければならない。現在、NICUが満床で受け入れられなかった方は、東京都に搬送されている。しかし、東京都でもお産難民が生まれている。多胎児やハイリスク出産が増えている中で、NICUの病床数はどうなっているのか。NICU病床当たりの人口は、東京都と比べてどうか。周産期にかかわる担当者の会議を県が先導して実施し、実情を聞きながら対策を講じていくべきである。
(2)埼玉県医療費適正化計画(仮称)案の概要について伺う。政府が病床を減らして医療費を抑制しているが、介護士の数は不足している。急性期の患者を受け入れてすぐに在宅には戻せないので療養病床にいるのに、病床数を減らしたら行く場所がなくなる。入院日数が短縮させられて、在宅になるようなことがあれば、介護難民・医療難民が生み出されていることになる。病院自体もこの計画に二の足を踏んでいる中で、本当にこの計画を始めてよいのか。国の計画は机上の数字を押し付けている。このような数字で、埼玉の医療や介護は守れるのか。見解を伺いたい。
医療整備課長
(1)東京都には、総合周産期母子医療センターが9か所あり、NICUは105床ある。本県は、同1か所、24床である。NICUの整備は重要と考えており、平成20年10月に開所となる自治医科大学埼玉医療センターについても、当初地域周産期母子医療センターとして開所になるが、速やかに総合周産期母子医療センターとしての整備に努めたい。
保健医療政策課長
(2)療養病床の目標設定については、厚生労働省が示した数字だけでは、本県の実情を十分に反映していないことから、高齢者の進展が全国一早いという実情を考慮し、9,800床という目標値を示したところである。今後、どのような病床数がより適切かということを、様々な意見を参考に検討していきたい。
柳下委員
(1)総合周産期母子医療センターは、東京都と比較してもNICUのベッド総数も少ないし、施設数も少ない。また、1施設当たりの人口も、東京都は約60万人であるが、埼玉県は118万人である。今後ハイリスクの出産が増えていく中で、自治医科大学埼玉医療センターの周産期母子医療センターを地域から相淡河にすることはよく、一日も早くとは思うが、それだけでいいのだろうか。厚生労働省の研究でも、人口100万人に1か所必要という報告もある。埼玉医科大学の総合周産期母子医療センターでも、施設を確保することが重要と認識しているようであった。この点についてどう考えるか。
(2)ハイリスク出産が多く、多胎児が多く生まれ、NICUが満床になっている。NICUでの治療が終わっても、転院を受け入れる場所がなく、いつまでもいるようなことが、埼玉医大でも起きている。埼玉医大でも、リスクを減らす研究、すなわち多胎児を減らす研究を行い、成果もあげている。研究などに対しても支援するなど、県としても研究すべきであるし、周産期医療の集まりがあるときに、ハイリスク出産を減らす方向も県として目指すことを示すべきである。
(3)療養病床削減については、6年間で介護療養病床をゼロにすることに対しては、国に対して見直しを要望すべきだと思うが、どう考えるか。
保健医療部長
(1)(2)周産期医療センターの整備については、2つの視点で進めていきたい。一つ目は、NICUの有効利用である。病床数を増やすことや、長期療養が必要となった場合にどうするかについて診療報酬も含めて国に対して意見を言っていくべきだと考えている。
(3)療養病床については、受け皿をどうするかという問題がある。介護保険が創設され、移行期間としてこのような制度ができたわけだが、急性期後の回復期をどうするかという要望も多く、介護療養病床がそのような場面で力を発揮できればと考えている。医療療養病床については、国は7,100床ということで試算しているが、それとは別に必要な数をきちんと国に申請し設定していきたい。