全国一斉学力テストの公開について 知事あて
2009年4月20日
埼玉県知事
上田清司殿
日本共産党埼玉県議団
団長 柳下礼子
全国一斉学力テストの公開について
4月7日上田清司知事は、県内市町村の首長宛に、全国一斉学力テストの結果を全面開示するよう促す手紙を送ったことを明らかにしました。
そもそも文科省は、序列化や過度な競争につながらないよう配慮するとして、実施要領で結果公表を禁止してきました。市町村教育委員会や学校関係者、PTAに対するこの間の県教委の聞き取りでも、同様の理由から不開示を主張する意見が大勢だったと報道されています。全教など教職員組合は学力テストへの参加そのものに反対しています。教育現場にたずさわる広範な組織が、公開に強く危惧の念を表明しているのは、結果の公開が子どもたちの教育にとって、それだけ深刻な影響を与えることを認識しているからに他なりません。
こうした教育的配慮に対して、知事が繰り返し公開すべきとの発言を繰り返すばかりか、市町村長まで促して公開の圧力をかけるなどということは、教育基本法が戒める「不当な支配」にあたるものです。
わが党県議団は、一斉学力テストが@過度に競争をあおること、A児童生徒の差別を教育現場に持ち込むこと、B現場の多忙化を加速すること等の理由から、学力テストには参加すべきではないと主張してきました。 実際学力テストの弊害は、実施回数をおうごとに目に余るものになっています。ドリル学習など、授業のテスト対策への傾斜が全国で強まり、学習の内容が浅く、子どもの意欲を失わせるものとなる傾向があります。誤答を教員が指さす「田植え」「ドーピング」と呼ばれる不正も全国に広がっています。学力テスト偏重教育は、学力向上どころか学力を減退させる元凶になりつつあります。市町村別結果公表は、この弊害をさらに加速させるものです。
学校は受験競争に備える予備校ではありません。子どもたちの成長は、個々の状態に応じた多様な働きかけにより、子どもたちの意欲が引き出されることによって実現します。その実現の仕方も多様であり、教育の成果は、わずか数十問の学力テストの結果によって測られるべきではありません。まして結果を公開して、自治体間の序列を固定化する必要は全くありません。
したがって知事におかれましては、市町村長への手紙を撤回し、今後、現場の自主性を尊重し、少人数学級、学校施設整備など教育環境の整備にこそ、全力を注いでいただくよう強く要請いたします。
以上