平和資料館の展示・記述に関する申し入れ
2007年8月10日
県総務部長 塩川 修殿
日本共産党埼玉県議 柳下礼子
県平和資料館においては、優れた資料収集や工夫された展示など、その目的に沿った活動が意欲的に取り組まれており、その努力には深く敬意を表するものであります。
さて、7月に開催された運営協議会において、今後の展示の方針として「従軍慰安婦の『従軍』を削除する」「南京虐殺の場面といわれている写真の扱いを検討する」などが会館側から提案されました。しかも常設展を見直すとして、戦後の平和活動を紹介するコーナーを設け、その中で、政府開発援助(ODA)や国連平和維持活動(PKO)などを紹介するとの方針も提案されました。これは、昨年9月議会における、わが党の河村勝子県会議員の質問に対する上田知事の「ODAの拠出額は常に1位2位、また国連の分担金は常に2位という現況、さらに昨今の自衛隊による国際貢献、あるいは日本赤十字の活動など決して諸外国に劣るものではありません。」「そういう意味で平和資料館においても戦後日本の国際平和に対する様々な貢献について幅広くお伝えする必要があると思っています」との答弁に従ったものと思われます。
しかし、政府開発援助については、グラントエレメント(贈与比率)が低い、支援の必要性より政治的関係性が重視されているなど、多様な問題点が指摘されてきました。平和維持活動についても、ソマリアなど失敗と後に評価される活動もあり、単純に平和貢献として高く評価されているものばかりではありません。まして、自衛隊のそれへの参加は国民的な議論の中で政府が押し切って強行した歴史があります。一般質問で述べたとおり、このような各界からの複雑な評価を受けている事例を、肯定的な表現でのみ展示することは、一方的な見解を押しつけるものとなり、公的な資料館にはふさわしくないと考えます。 館側の諸提案に対して、運営協議会委員の中に強い反発があったという報道がありましたが、当然のことと思われます。
昨年7月にわが党県議団は、「従軍慰安婦」という展示記述を巡って申し入れを行っていますが、このたびの展示見直しの諸点についても、自主性・科学性を重視し、協議会など県民の声を尊重して民主的運営を貫いて判断していただきたいと強く申し入れます。全国でも貴重な平和資料館を、国内はもちろん、海外の評価および後世の評価にも耐えるものとすべく取り組んでいただきたいと求めるものです。
以上