計画そのものが、基本高水流量が過大で破綻
八っ場ダムはこのまま、中止せよー柳下県議
7月8日、埼玉県議会6月定例会最終日、柳下県議は国への意見書など議員提出議案に対する反対討論を行いました。
討論の内容は以下です。
日本共産党の柳下礼子です。
日本共産党県議団を代表いたしまして、議第19号議案及び議第21号議案に対する反対討論を行います。
まず、議第19号議案「離婚・別居後の親子の面会交流に関する法整備と支援を求める意見書」についてです。
請願の討論で申し上げましたとおり、面会交流を求める県民の願いの切実さは私どもも深く理解しております。しかし、面会交流を担保するための法整備や支援について、速やかに具体的な検討をすすめるよう求める意見書提出はあまりに時期尚早です。
たとえば、県が作成した平成22年版の「男女共同参画に関する年次報告」によりますと、DV被害相談が本県においても年間2,607件にのぼり、一時期に比べ減少したとはいえ依然高い水準にあります。離婚原因も妻からの申し立ての第1位が暴力と精神的虐待と報告されております。DV法制定10年を経過しても、未だ被害者が続発している現状において、強制力を持つ面会交流を法律で担保することはDV被害者とその子どもに深刻な不利益を招きかねません。我が党は、法制化にあたっては拙速を避け、DV対策の進展や十分な国民的議論を経た上で検討すべきと考えます。従って、議第19号議案には反対いたします。
次に、議第21号議案「八ッ場ダム本体工事の早期着手を求める意見書」について、わが党は以下の理由により反対します。
意見書案は、昭和22年のカスリーン台風を例に挙げ、「いつ起こるかわからない水害を防ぐために、八ッ場ダムの建設を早急に進めるべきである」と述べております。しかし、これまで何度も取り上げてきたことですが、そもそも八ッ場ダム建設計画の根拠となっている河川整備計画の基本高水流量の想定が過大だという点を指摘しなければなりません。
利根川の治水計画のモデルは、カスリーン台風でありますが、カスリーン台風の洪水では、利根川の洪水基準地点である伊勢崎市の八斗島(やったじま)での流量が毎秒1万7,000リューベとされ、これが治水計画の基本となる洪水のピーク流量とされてきました。ところが、その後の見直しによって、科学的な根拠が示されないままピーク流量が毎秒2万2,000リューベに引き上げられ、この洪水を上流のダム群で毎秒5,500リューベをカットし、残る毎秒1万6,500リューベを下流部の堤防や遊水池で防ぐという計画になっています。
しかし、利根川の八斗島(やったじま)では、1950年以降の60年間に毎秒1万リューベを超す洪水は一度も観測されていません。しかも、河川の専門家によれば「同じ総雨量でも、降雨パターンによって流量は異なる」ことが指摘されており、カスリーン台風と同じ降雨のパターンでは、八ッ場ダムの効果がほとんどないことが国会での国交省答弁でも明らかにされています。
計画のさらなる問題は、現在の上流ダム群の治水能力が八ッ場ダムが完成したとしても毎秒1,600リューベしかなく、毎秒5,500リューベの流量カットを達成するには、八ッ場ダム級の巨大ダムをさらに何か所も造らなければならないことです。しかし、現状では八ツ場ダム以外に利根川流域に新たにダムを建設する計画がありません。
意見書案は、利根川の治水対策には八ッ場ダムの建設が不可欠だという認識を示していますが、そもそも、利根川の治水計画そのものがこのように破たんしており、八ツ場ダム建設に固執するのは、『先にダム建設ありき』とのそしりをまぬがれません。
また、意見書案は、東日本大震災の発生をとらえて八ツ場ダム建設についても「必要不可欠だ」と結論づけていますが、東日本大震災から教訓をくみ取るべきはダム建設よりは、むしろ堤防の強化策ではないでしょうか。
わが党は、首都直下型地震や東海沖地震などを想定した堤防や橋梁などの強化、住宅や公共施設の耐震化、消防力の強化などにこそ、いま一番力を入れるべきと考えるものです。
以上の理由から議第21号議案には反対です。