知っているようで知らない国民健康保険 2018年度から保険税大幅アップ!?

日本で暮らしていれば、病気や怪我の際に病院に行くのは当然になっています。保険証さえあれば、日本ならどこでも、病院で診察を受けられます。

そんな生活に密接した医療保険制度が、平成30年から制度が変わるって・・・ご存知でしたか?

日本では、国民全員を公的医療保険で保障しています。病院や診療所、クリニックなどの医療機関を自由に選び、1~3割の自己負担で医療が受けられるこの制度ですが、全員が同じ保険に加入しているわけではありません。

医療保険制度は、大きく分けると3種類に分類できます。

①被用者保険
企業で働いている人や公務員などが加入する保険です。
「職域保険」とも呼ばれ、健康保険(組合健保、協会けんぽ)や厚生年金保険、労災保険、雇用保険、共済組合、船員保険などが挙げられます。
ちなみに、被用者とは、雇われている人のことをいいます。

②国民健康保険
被用者保険に加入していない人、つまり自営業や農業、企業を退職した人などが、住民登録のある市町村で加入する保険です。市町村が運営する「市町村国民健康保険」と医者や弁護士・美理容師などの同業種の人たちが作った組合で運営する「国民健康保険組合」があります。
今回話題になっているのは国民健康保険の「市町村国民健康保険」のことです。

③後期高齢者医療保険制度
75歳以上の人、または65歳以上75歳未満の一定の障碍者が加入する保険です。
①又は②に該当していた人も、75歳を超えると必ず後期高齢者医療制度に加入します。

 

市町村国民健康保険の制度によって、日本の国民は全員保険の恩恵に預かることを可能にし、“国民皆保険”が実現しています。

国民健康保険設立当初の加入者は、農林水産業者や自営業者が中心でしたが、少子高齢化や雇用の不安定化が進んだ現在では、非正規労働者や年金生活者などの無職者が7割を占めています。
その結果、その保険運営が非常に難しくなり、市町村の財政を圧迫してきました。
さらに、過疎の進んだ地域では、現役世代からの保険料徴収が難しい上に、医療費負担の大きい高齢者が多いという不均衡が生じています。
市町村という小さい単位で運営していると、どうしても赤字体質から抜けられない、という「国保の構造的問題」があります。

 

都道府県管轄にするメリットってなに?

こういった状況を改善するため、平成30年から国民健康保険の運営を、都道府県と市町村の共同運営とし、財政運営の責任は、都道府県が担うことになります。
政府はこれにより、市町村単位の国民健康保険負担の不均衡をなくし、財政の安定化を進めようとしています。

もともと赤字の制度なので都道府県は引き取りに消極的だったのですが、国の支援金の増額をすることで、都道府県への移管が進められることになりました。
また大企業などが保険者になっている「健康保険組合」や公務員が加入する「共済組合」(どちらも被用者保険の一種)に、今よりも高齢者医療に対して負担する金額を増やしてもらい、その分で浮いたお金を回す設計も増やしました。

 

どうなる埼玉の健康保険制度?保険料最大“2倍化”も・・・!?

では、移管後に、埼玉県の国民健康保険料はどのようになるのでしょうか。

国の計算式に基づく埼玉県の試算では、1人あたりの保険税額は年平均13~17万円へと、約2倍に引き上がる市町村も出ています。年金受給者など弱者の多い国民健康保険の被保険者にとって、負担増は重くのしかかります。
現在の一例では、さいたま市に住む「給与年収350万円、夫婦と子ども2人世帯」では、国保料が年38万円を超え、現時点においても払えない現実があります。

従来から、国民健康保険の医療費には、低所得者の保険料軽減措置のため国や都道府県・市町村からの公費が投入されてきました。
住民の健康と命を守るため、単なる赤字と切り捨てず、移管後も保険料は加入者の生活に影響がでない範囲内にするよう、国・県・市町村の財政支援が不可欠です。